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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

リアクション

9.捨て台詞選手権 打ち上げ

 結果的に対ダークサイズを救うハメになった椎名。
 彼女は向日葵たちにかこまれて、わけもわからず褒められている。
 まだ包帯だらけのクマチャンは、よっぽど重傷だったようで、ルーツだけでなくノーンにも回復魔法をかけてもらいながら、エニグマのご飯を食べている。
 3階の応募が多かったハッチャンは、これまた応募者たちに囲まれながら、満面の笑みで会食。
 モモはレティシアのさらなる責めをズズを盾にしようとして、雫がズズを取り返そうとする。
 ダイダル卿はラルクとげらげら笑いながら杯を酌み交わしている。ネネは……まだ温泉から戻らない。
 ラルクはダイダル卿に、先ほどのアルテミスについて疑問をぶつける。

「ところでじいさん。アルテミスの空腹オチ、あれ一体何だったんだ?」
「やつの魔力は甚大じゃが、肉体のままあれだけの魔法力を解放するのはひどくエネルギーを使うようでの。四方八方に発散すると、すぐにカロリーが尽きてしまうんじゃ。ま、あんな見境なしの解放なぞ、めったにせんだろうがの。まったく燃費の悪い選定神じゃわい」
「カロリーの問題かよ。じゃさっきのは、魔力を垂れ流しただけってことか……でも何でそんな疲れることしたんだ? 普通にやりゃあ勝てんだろ」
「さあ? ちょいと驚かしてやりたかったんじゃないかの」
「あー、なるほどね」

 一方、選手権には参加せず、ずっとカリペロニアの北にある魔術研究所である研究にいそしんでいた夜薙 綾香(やなぎ・あやか)

「くだらん選手権もいいかげん終わったであろう。どれ、ダイソウトウの顔でも見に行くか」

 と、研究所を抜けてダイソウトウの間へやってきたのだが、善悪入り混じった食事会の様子を見て、

「……なんじゃこりゃ」

 と、思わず間の抜けた独り言。
 彼女はダイソウの姿を見つけ、彼の元へ向かっていく。
 そのころダイソウは、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)から何やらビデオを見せられながら授業を受け、その脇では同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)がパソコンを打っており、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が祥子の言うことを頷いて同意している。彼の後ろには相変わらずステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)が控えている。
 祥子は捨て台詞選手権などとお遊びをやっているダイソウをちょっと叱る意味も込めて、

「……というわけで、次はニルヴァーナよ。ニルヴァーナに行きましょ!」

 と、語気を強めてダイソウに迫る。
 静かな秘め事が、パソコンを見ながら、ダイソウの知識を確かめる。

「ダイソウトウさん、ニルヴァーナのこと、ちゃんと知っておられます?」
「うむ、もちろんだ。カート・コバーンは良いボーカリストだな」
「それはバンドですわ。あらいやだ。こんな反応、世代が知れてしまいますわね」

 と、静かな秘め事がくすくす笑う。
 祥子はまた声を高めて、

「そんなこと言ってる場合? 今話題の中心はニルヴァーナよ! このままじゃ、ダークサイズは流行に乗り遅れてしまうわ。アルテミスさまも何とか言ってやってください」

 と、今度はアルテミスに説得の矛先を向ける。
 アルテミスは口いっぱいに食べ物をほおばって、

「ふむ。わえはかわわぬお(我は構わぬぞ)」
「もう! そういうかわいいのはいいですから! シャンバラとエリュシオンが同盟を組んでいる今、あなたたち二人が組んでいるのはうってつけでしょう? 目立つチャンスよ」

 祥子がさらにプレゼンを進めるのに、ブルタがさらに言葉を加える。

「その通りだよ。空京には危機が迫っているからね。カリペロニアにも影響がないとは思えないんだな。ニルヴァーナへの進出と、パラミタ大陸征服。そのためにはダイソウトウがもっとパワーアップしなきゃダメだね」
「パワーアップか。確かにそれは、エリュシオンへの旅でも痛感したな」

 ダイソウは、浮遊要塞獲得の旅を思い出す。
 ブルタは人差し指を立て、

「手っ取り早いのはアルテミスとの契約じゃないかな。二人は契約はまだだろう? 彼女の力が加われば、御人 良雄(おひと・よしお)横山 ミツエ(よこやま・みつえ)のように、世界への影響力を持つことも可能だと、ボクは思うね」

 と、ダイソウとアルテミスの契約を勧める。
 さらにステンノーラが、凛とした姿勢のまま、

「加えて言うならば、現在シャンバラとエリュシオンは同盟関係を結んでいるものの、それは長くは続かないという見方もありますわ。もし同盟解消に陥った時、第三勢力となれるのは、双方の力を取り込んだ、わたくしたちダークサイズしかないでしょう。それにもし、アルテミスさまがエリュシオンに召喚される時が来たとしても、契約さえしていれば、たとえ二人の間が引き裂かれようとも、合流に時間はかからないでしょうし」
「引き裂かれ……」

 ステンノーラの表現に、アルテミスの手が止まり、ダイソウを見る。

「契約……いたしましょう!」

 アルテミスの結論は早い。
 そこに酔ったダイダル卿もやって来る。

「おーう。何の話じゃ。わしも入れてくれい」
「おぬしは関係ないのじゃ、ダイダリオン」
「アルテミス。ダークサイズに来てから、昔よりわしに冷たくなったのう……」

 寂しそうなダイダル卿に、ブルタが、

「心配ないよ、ダイダル卿。ニルヴァーナには、浮遊要塞ラピュマルも絶対必要だからね。あんたもダイソウトウと契約しとけばいいんじゃないかな」
「そうそう。だから、カリペロニアや浮遊要塞も改造しなきゃいけないわ」

 と、祥子も同意する。

「そうかそうか!」

 と、ダイダル卿は嬉しそうに、ブルタの魔鎧の身体をバンバン叩く。
 それを見たダイソウが、

「ところでブルタよ」
「なあに」
「おまえ、会うたびに見た目が全く違うな……」
「もう、ほっといてよ!」
「となると、私の究極イコンも早速活躍できそうだのう」

 と、後ろで話を聞いていた綾香が割り込んでくる。
 ダイソウは綾香の顔を見て、

「マジカル★ナハト。来ておったのか」
「よく覚えておったな、私の二つ名を。ところでだ、ダイソウトウ。偉大な魔術研究者である私は、今回も素晴らしく面白いものを開発してしまったのだなぁ」

 綾香は持って回った言い方で、ニヤニヤしながらダイソウをチラチラ見る。

「私の魔術研究所の地下に新たな研究施設を作ってな。そこでついに開発したのだ! ダイソウトウ用の究極……」
「イコンか」
「うん、あ、そうだイコンだ。何でわかった?」
「さっき言っていたであろう」
「ああ、まあそうだな……」

 せっかくダイソウを驚かせてやろうと思ったのに、自分でネタをばらしてしまっていた綾香。
 しかし彼女は気を取り直し、

「こほん。これは第二世代イコンをベースに、アルマイン、鬼鎧を組み込み、さらにここがポイントだ。精霊を憑依させ……」
「イコンと言えば、ブルタよ」
「って聞かんかーい!」

 突然ダイソウが話を変えてしまい、怒り心頭の綾香。

「ブルタは以前、我々にイコンを提供したことがあったな」
「あー、そういえば。ネネのために作ったんだよねー。あれちゃんと使ってる?」
「ああ、うむ……どこへやったかな……」
「ええー! あんなでかいものなくさないでよー!」

 せっかく話を振っておいて、ブルタを泣かせるだけの結果に。

「とにかくだ!」

 綾香はブルタを押しのけ、ダイソウに迫る。

「神をも越えた、何でもアリの究極イコンなのだ!」
「何だかすごすぎてピンとこないな」
「ふっふっふー。わかるまい。見たいか? 見たいよなー? でも今はだめだぞ。今は魔力安定中だから、うかつに近寄れば全てが台無しに……」
「選定神に古代神に神を越えたイコンか。神だらけになってしまったな」
「無視かーい!」

 綾香は涙目になりながら、何故かワイングラスでダイダル卿と乾杯する。
 しかし、綾香の話はちゃんと聞いていたダイソウ。

「綾香よ。ではそのイコンにも名前をつけねばな」
「おお、そうだな。好きに付けて良いぞ。その代わりカッコいいものをだな……」
「ダークサイズ用イコン!」
「普通かーい!」

 と、綾香はまたダイダル卿と乾杯する。
 ダイソウは綾香に気を使って、

「大丈夫だ。ちゃんと話は聞いたいたのだ。落ち込むでない」
「な、なんだと! 別に、かまって欲しくて来たわけじゃないんだからなっ!」

 と捨て台詞を残して、綾香はまた研究室へと走り去っていく。

(かまって欲しかったのか……)

 ダイソウが綾香を見送っていると、祥子が総括する。

「どう、ダイソウトウ! これっていけると思わない?」
「うむ。我々が積み重ねてきたものは無駄ではなかった。今までの活動はニルヴァーナへと通じておったのだ」
「そうはさせないわ!!」

 そこに、秘密会議がダダ漏れで聞こえていた向日葵たちが、ダイソウの前に立ちふさがる。

「空京放送局にカリペロニアに浮遊要塞に、おまけにイコンとニルヴァーナだって? これ以上ダークサイズの好きにさせてたまるかっ。さあ! お腹もいっぱいになったことだし、勝負再開だよ!」

 と、向日葵たちがダイソウを取り囲みかけたところで、パソコンを見ていた静かな秘め事が、祥子に顔を上げる。

「あらいけない。母様」
「どうしたの静香」
「政府系機関にハッキングをかけていたのが、ばれてしまいましたわ。アクセスポイントの偽装が逆探知されてしまったようですの」
「まあ大変。じゃあ今日はとっとと逃げましょ。というわけで、
『次はニルヴァーナだ!!』

 と、二人も捨て台詞を残して逃げていく。
 一方でホッとしているのはアキラとアリス。

「いやー、このまま終わっちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしたぜー」
「ふっふふ。最後の最後でワタシたちの大活躍ネ」

 体力も万全の向日葵たち対ダークサイズと、ダイソウとアキラとアリス、そしてアルテミスも立っている。
 向日葵は腰に手を当てる。
 その両脇には対ダークサイズが同じようにずらりと並び、まるで戦隊ヒーローのようだ。

「あんたたちの計画を聞いたからには、黙っていられないわ」
「ああ。遊びは終わりだ。このブリッツフォーゲルが、ダークサイズの野望を打ち砕く!」
「イコン計画となると話は別だ。大量破壊兵器は許さない」
「おとなしくそっちの神おっぱいを揉ませな!」
「本物の侍に、俺はなるっ!」
「おとなしくスタンプ押して、降参しなさい!」
「あなたたちが向かう先はニルヴァーナではない。恐怖のズンドコでしゅ!」
「えーと、えと、そうだ」

 締めにノーンが向日葵の腕を掴み、

『正義は勝つのよ!!』

 ダイソウは全員言い終わるのを静かに待ち、そして口を開き、アリスの応募した台詞。

「そこまでして我が道を阻むか、正義の味方たちよ。そしてその背負いたる運命よ……よかろう! ならばどちらかが滅びるまで、とことんやり合おうではないか!」

 彼の覚悟を決めたような台詞に、全員身構える。
 さらにアリス応募の台詞は続く。

「……と、言いたいところだが、残念ながらページ数が足りぬ。今日はここまでだ」
『……えっ……?』

 キョトンとした顔の向日葵たち。
 ダイソウ達はマントを翻し、天井高くジャンプ。
 向日葵たちを飛び越え、扉の前にダークサイズが全員揃う。

『今回がノーマルシナリオであったことを感謝するがよい! いつかスペシャルシナリオが来た時が、貴様たちの最後だ! その時を怯えながら待っているがいいわ!』

 以上の壮絶な捨て台詞を残し、ダークサイズはダイソウトウの間から去っていく。

『な、な、な、なにいいいいいいいいいい!!!』

 慌てて追いかける対ダークサイズ。

「待て―っ! そんなのありかー!?」
「さっきのアルテミス並みにずるいぞ!」
「いや、それ以上だ!! 卑怯すぎるうううう!!」

 彼らは館の外まで追いかけて出ていくが、

「だ、誰もいない!」
「これも『ページの都合』なのか!?」
「おのれーっ!」
『だ、ダークサイズのばかあー!!』

 カリペロニアの空に、対ダークサイズの声がこだまするのであった。




おしまい




担当マスターより

▼担当マスター

大熊 誠一郎

▼マスターコメント

最後までありがとうございました。大熊誠一郎です。

お待たせいたしました。
久しぶりのダークサイズ、いかがでしたでしょうか?
いつも通りのダークサイズをお送りできたかなーと、勘が鈍ってないのを祈るばかりですが(笑)

沢山のアクションありがとうございました。
基本的に採用できたかと思いますが、お話の進行の都合で、少し改変させていただいたり、予定のない行動が加わった方もいると思います。
その辺はまあ、ダークサイズの仕様ということで、すみません……

というわけで、
・ダイソウトウとアルテミス、ダイダル卿の契約
・次回はニルヴァーナ
アクション提案で戴いたのを採用させていただこうかと。

今までと同じように、私の提案とみなさんのアクションの絡まりで産まれたものから次のお話が続いていく、という形で進めて参りたいと思います。

ではまた次回お会いしましょう。