シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

再建、デスティニーランド!

リアクション公開中!

再建、デスティニーランド!

リアクション


第五章

 開園から少し経つと、ランド内は多くの人でごったがえしていた。
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)も、今回デスティニーランド再建の話を聞き、遊びにきた一人だ。
 とはいえアトラクションに興味があったわけではない。
 なかなか関係の発展しないフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)をデートとして誘い、今日この場所にやってきた。
「遊園地の集客目的による同行任務、ですか? 噂のからくり沢山の娯楽場……普通の人が楽しむ場所……本当にマスターとご一緒に遊ぶだけでよいのですか!? 是非お供します!」
 と、なぜか任務だと勘違いされるがそれもいつものこと。今更くじけたりはしない。
「実際見てみないと分からないし、とりあえずランド内適当に回ってみるか」
「はい!」
 早速ランド内に繰り出す二人。
「もー! ベルクちゃんってば抜け駆けでおねーさまとデートは許せないんだもんね!」
 そんな二人に、上空からアリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)が迫っていた。

 入口では、孫にせがまれて一緒に来たであろう老婦人が、杖で身体を支えながら、必死に地図とにらめっこをしていた。
「アトラクションまでご案内しましょうか?」
 遊園地の空を飛んでいた終夏が声をかける。
「助かります、地図がよく見えなくて」
「わー! 空飛ぶ箒だー!!」
「どこに行きたいのかな?」
「えっとね、しろくまさんがいるアトラクションー!」
「わかった。じゃあ、ここに乗ってちゃんと掴まってるんだよ」
「はーい!」
 貨物席を付けた空飛ぶ箒シーニュに二人を乗せると、終夏は再び空へと飛び上がった。
 貨物席とはいえ園内の土産店で買ったクッションとぬいぐるみで飾り付けられており、ファンシーでとても乗り心地が良い。
 二人は終始楽しそうにランドを見下ろしている。見どころを通過するたびに終夏も簡単に紹介していった。
「本当にありがとうございました」
「ありがとうー!」
「どうしたしまして。良い思い出を」
 目的地に到着すると、また案内に戻るため空へと飛び上がった。

「いらっしゃいませー。デスティニーランド名物のマジカルワッフル、こちらが列の最後尾となっておりますー」
 アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)の土産店の前では、ウィアが呼び込みをしていた。
 土産物店という特性上、混みはじめるのは昼過ぎからだと予測していたが、マジカルワッフルの口コミが開園直後からすさまじい勢いで流れたため、呼び込みをしようと外に出ていたウィアは列整理に忙しくなってしまった。
 店内ではアゾートが驚くべきスピードでレジを打っていた。
「あかん! 間に合わんわ、ウィア、中手伝ってくれへん?」
「わかりました。すみません、あの……あ、ありがとうございます!」
 優奈に呼ばれ中に戻ろうとするも、最後尾の札を持ったままでおろおろとするウィアを見た最後尾の客が、札を預かってくれたのだ。
 急いで戻るとワッフルを作る手伝いを始める。
 準備ができたものから、優奈が魔法をかけていく。
 ようやく客足がひと段落したときには、3人ともへとへとになっていた。
「びっくりしたなあ。いきなりこんなに混むんだもん」
「確かに、土産っちゅーよりはランド内で楽しめるのがコンセプトではあったんやけど……」
「みんなそそくさと袋開けて食べてたもん。本当に楽しみだったんだろうね」
「みなさんに喜んでいただけて良かったです」
「さっきボクもちょっと食べてみたけど美味しかったもん。それで色んな効果が楽しめるなら、そりゃまあ欲しいよね」
 アゾートは店内の商品を整えながら言った。
 優奈とウィアはお互いの顔を見合わせると嬉しそうに笑いあった。 

 ランド内の大きな花時計の近くでは、此花 憂弟謂(このはな・うでい)がやたら他のゲストに囲まれ写真攻撃にあっていた。
「なんなのさ、この状況……」
「結果的に盛り上がっているようだ。良いのではないか」
「そうだけどさあ」
 行く先行く先で「遊園地の神様」と言われ、囲まれるのだ。もう訳が分からない。
「昔来てたときはこんな事なかったのにな〜」
 腑に落ちないながらも、結果的にランド内が盛り上がっていることは事実だろうと大阪 譲治(おおさか・じょうじ)に諭されると、憂弟謂は頷いてみせた。
「さっきから遊園地の神様がここにも、って言われてるんだけど、他にもいるってことだよね」
「アトラクションでもないのに人だかりができているポイントがあるようだな。行ってみるか」
「そうだね」
 二人は人だかりに向かってみることにした。
 その人だかりの中心では三鬼と三二一が昼ごはんに何を食べるかで壮絶なじゃんけん大会を繰り広げていた。
「あら、三鬼じゃない。元気にしていた?」
 そんな人だかりの外から多摩 黄帝(たま・きてい)が声をかけると、ずざっと人だかりに道ができる。
「黄帝に美々衣か。ま、こっちは相変わらずだぜ」
「そう、なら、いいんだけど……それにしてもすごい人ね?」
「デスティニーさん元気づけようと思って宣伝してたら、勢いづいちゃったんだよ」
「必死に宣伝しないとゲストが集まらない遊園地なんて、落ち目もいいところね」
 三二一の言葉をせせら笑うように穿蛇亜 美々衣(せんたあ・みみい)が言い捨てる。
「なんだよ。あんただって一時期落ち目だったじゃん」
「何ですって!?」
「そんなに自信あるならステージで勝負してやろーじゃん」
「別に、あなたに勝ったところでなんの得もないんだけれど」
「まあまあ、せっかくだからステージっていうのも面白いんじゃない?」
「正々堂々正面からやりあえばいいじゃねーか」
 見かねた黄帝と三鬼がフォローに入る。
「なんだ、三鬼たちか」
 そんな様子を遠巻きに見ていたゲストたちの輪を抜けて、憂弟謂と譲治が合流した。
「ちょうど良かった。これからステージに行こうと思ってたのよ」
「それは面白いな。この状況ならばうまく人を集め盛況に一役買えそうだ。憂弟謂、頑張るのだよ」
 黄帝の言葉に譲治がすぐさま頷いた。
「まあ? 落ち目のデスティニーランドなんて敵にもなりませんから? いずれぶっ潰すためにも、手を貸してあげないこともないわよ」
「ちょっとー、三鬼もなんとか言ってやってよ!」
「なんで僕がステージなんていかないといけないんだろう」
 三者三様の反応を見せる美々衣と三二一、憂弟謂の姿に黄帝と譲治、三鬼は苦笑いで顔を見合わせた。
「ま、とりあえずさっさと行こうぜ」
 三鬼の一言で一同はぞろぞろとステージに向かっていく。
 その後ろをゲストがカメラを片手にぞろぞろとついていく様は、なかなか不思議な光景だった。
 ステージに到着すると、譲治はすぐさま泉 美緒(いずみ・みお)に事情を説明し、少しの時間ステージを貸してほしいと打診した。
 美緒は6人を見回すとすぐに頷き、ステージプログラムを調整、すぐにステージを空けてくれた。
 黄帝たち5人をステージに上げると、譲治が裏方作業を一手に引き受け、ステージが始まった。
 ゲストが参加できる形での歌とダンスを交えたステージは即興とは思えないほど盛り上がる。この時ばかりは美々衣と三二一もとても仲が良さそうに手を取り合ってダンスを披露する。
「プロ根性って怖ぇな」
「さすがだよね」
 隣でステップを踏みながら、三鬼と憂弟謂がこそこそを話す。
 黄帝が積極的に客席から子供たちをステージに誘い、大盛り上がりで即興のステージは幕となった。
 一仕事終えた6人が軽く挨拶を交わしているとそこにもゲストが集まってきた。
 さすがに次のステージに響いてしまうため、その場で解散すると再びそれぞれでランド内を回り始めるのだった。