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我が子と!

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我が子と!

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 「いちる。なんだかこころの友達が遊びに来たようなのだが……?」
 「あら、どうしましょう……これから魔法の勉強の続きをしようと思っていたんですけど」

来客の報を受けギルベルト・アークウェイ(ぎるべると・あーくうぇい)が部屋にいる妻に呼びかける
彼の言葉を受け東雲 いちる(しののめ・いちる)はどうしようかと日記を書いていた娘のこころを見た

 「行ってもいい?お母様。【召喚】の基礎はもう復讐したわ。
  聞きたい事はもう整理してあるから、帰ったら続きを教えて」
 「基礎って……まだほんのひと触りしか教えてないはずだけど……」
 「知りたい所はお父様に聞いたの。だって早く覚えて次の魔法も知りたいもの」
 「こころったら……いつも思うけど、私の予想の先を行くのよね……」

出来過ぎた子に軽く溜息をつきながら、いちるは娘の外出の手伝いをしてやる事にした
母親の様子にエヘヘといたずらっぽく微笑みながら、こころは書いていた日記を置きに部屋に戻る
そんな娘の姿を見てギルベルトが満足そうに壁にもたれかかった

 「……やはりこころは可愛いな、いちるに良く似ている」
 「ちゃんとギルさんに似ている所もありますよ、しっかりしている所とか、ね?」

いちるの言葉にギルベルトは首を振る

 「俺に似たらあのように可愛い子供になると思えんよ。それに俺になど似なくていいさ
  いちるのように優しい子であってくれればいい」
 「……ホント、ギルさんがこんなに子煩悩になるとは思いませんでした」

最初に出会った時からは想像ができない彼の姿に、いちるは今までを思い返すように目を細める

 「いろいろあったけど……結局、私の望んでいたのはこういう生活だったのかな」
 「……そうかもしれないな。君は今とても幸せそうな顔をしている」
 「それはギルさんも一緒ですよ?」

傍らのギルベルトの言葉に一言加え、いちるは彼の肩に頭を預ける
そんな彼女の頭に手を置き、ギルベルトは穏やかに同意する

 「そうだな……一度死んだ身としても身に余る程だと思うよ、本当にな」
 「?……何をそんなに嬉しそうなんですか?お父様もお母様も」

出かける準備を終え、戻ってきたこころが両親の姿を見て不思議そうに質問をした

 「いや、お父さんもお母さんも、こころがいてとっても幸せだって話だよ」

恐らく娘としては良く聞く言葉なのだろう
ギルベルトの言葉にこころは困ったような、そして瞳に少し悲しそうな色を浮かべる
……実は、最近浮かべるようになった娘のこの憂いの瞳がギルベルトもいちるも気にはなっていた
そこに何か大切な事を置いてきたような、何ともいえない不安を一瞬覚えるのだが
すぐに娘愛しさでかき消されてしまう

 「ほら笑っていてくれ。お父さん達はこころの笑ってる顔が好きなんだから」
 「……うん!それじゃ、行って参ります!」

その言葉に、こころの顔も先程と同じ笑顔に戻る
そして、いちるに着せてもらった外套の襟を押さえながら元気に友達の待つ玄関へ急ぎ
そんな娘の姿を親二人は見送るのだった


それはとても幸せな光景………誰もが望む家族の姿

だが、そんな彼らの影に見え隠れするほんの僅かな不安を呼び覚ますように……
窓から吹き付けた一陣の風が、こころの日記のページをめくる
そして誰ともなく書きかけの中身を世界に曝け出す


  『私はお母様とお父様の子供で『こころ』と言います。

   二人の様に魔法を使いたくていっぱい勉強しています。
   お母様のお婆様。私のひいお婆様の話をお母様は沢山してくれます。
   私にとってはお母様もお父様もとっても素敵なのに…。
 
   ここで暮らすのは幸せなの。
   お父様もお母様も幸せだっていってくれる。

   でも、私は…。
   幸せだけど、これが本当にしあわせなのか私にはわからないの。

   お父様もお母様も大好きよ。大好きなのだから。でも…………』