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『しあわせ』のオルゴール

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『しあわせ』のオルゴール
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第6章 お別れと約束

「ほら、何か言うべきことがあるでしょう?」
 塵殺寺院の男たちが連行され、落ち着きを取り戻した学校。
 目を覚ました子供たちを前に、メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)が厳しい声で言った。
「あなた達がスノさんにやってきた事は、ここにいる全員が知っています。それは、とても格好悪いことです。
「そうそう。言っちゃえ、メティスさん!」
 メティスの言葉に、ノア・セイブレムが同調する。
 レン・オズワルドは黙ったまま彼女の後ろに立っている。
 3人の視線を受け、スノをいじめていた子供たちはもじもじと居心地悪そうにしている。
「まずは、謝りなさい」
 メティスの厳しい声。
 いじめっ子たちはメティスを見て、次にスノを見る。
 スノもまた、申し訳なさそうにクラスメイトたちを見ている。
「ご……ごめんなさい」
 小さな声。
 しかし、たしかにそれは和解の第一歩。
「それから、助けてって言ってくれて……ありがとう」
「そんな、あたしこそ…… あたしの持ってきたオルゴールのせいでこんな事になって、ごめんなさい……」
 クラスメイトの言葉に、スノの目に光るものが滲む。
「お兄さんお姉さん達にも、ごめんなさい。守ってくれて、ありがとうございます」
 スノはぺこりと頭を下げる。
 そして、誰かを探すようにきょろきょろと周囲を見回す。
「どうしたの?」
 そんなスノの様子を見て、アニス・パラスが声をかける。
「大助さんが、いないの…… せっかくお友達になったのに。それに、守ってくれたのに……」
 寂しそうに四谷 大助にもらったウサギの足を取り出すスノ。
 少し離れた所には、スノの知る少年だった四谷 大助によく似た青年がスノを見守るように立っている。
「そんな顔しないで、スノ。私も、スノの友達よ」
 神崎 零がスノに笑顔を向ける。
「でも…… みんな、帰っちゃうんだよね。いなくなっちゃうんだよね……」
 寂しそうにスノが呟く。
 顔を見合わせるアニスと零。
 たしかに、まもなくボランティアの時間は終わる。
 だけど……
「いいえ」
 きっぱりと言ってのけたのは、リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)だった。
「わたくしは、いなくなったりしませんわ」
 リリィはスノの手を取る。
「こちらの都合であなたの大事なものを壊してしまい、本当に申し訳ありませんでした。償いの機会をいただけませんか?」
「つぐない?」
 リリィの言葉に、スノは首を傾げる。
「もし学校に行くのが辛ければ行かなくても大丈夫。わたくしが、数日に一度なら勉強だって見てあげられますわ」
「え……で、でも、おねえさんの住んでる所から、ここは遠いよ?」
「この世界なんて案外狭いものですわ。あなたが呼べば……ちょっとは時間がかかるかもしれませんが、すぐに来てあげられますわ」
 にっこりと、リリィは言い切った。
「いくらだって、お話を聞いてあげますよ」
「あ……ありがとう」
 戸惑っていたスノだったが、リリィの笑顔につられ、ようやくほっとした笑顔を浮かべた。
「オルゴールの件ですが」
 声をかけたのは、ロア・キープセイク。
「壊れてしまったあの装置の曲がもし好きだったのでしたら、同じ曲のオルゴールを作る事も可能ですよ」
「え?」
 スノが驚いた様子でロアの顔を見る。
「私なら、同じ曲を再現することは可能だ」
 ベルテハイト・ブルートシュタインも自信に満ちた声で断言する。
 元々は、同曲のオルゴールを作成してスノの持つ装置と交換し、事を納めるつもりでいた。
 しかしそれより前にオルゴールは破壊されてしまった。
 ならば今できる最良の事は、と二人はスノに提案したのだ。
「わあ、本当にありがとう。でも、もうオルゴールはもらったの」
 スノは小さなオルゴールを取り出して見せた。
 ルカルカ・ルーが、スノにプレゼントした海のオルゴールだ。
「あの曲も好きだったけど、それより、あたしたちを助けてくれた人たちからのプレゼントのが嬉しいの」
「そうですか」
 ロアの顔に微笑みが浮かぶ。
「それと、ええと、おねえさん……」
「リリィ、ですわ。リリィ・クロウ」
 戸惑いながら顔を覗き込むスノに、リリィは微笑む。
「リリィさん。学校は、お友達がいるから行きたいの。でも……また来てくれる?」
「もちろんですわ」
 リリィの言葉に、漸く心からほっとした笑顔を浮かべるスノ。
「お話してくれる?」
「ええ。何でしたら、今からでも」
「今から?」
「そうね。幸せについてのお話を、始めましょうか」
 リリィの口から、お話が紡ぎだされる。
 暖かな平和を取り戻した学校に、リリィのお話がゆっくりと響き渡る――

担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 初めての方ははじめまして、もしくはこんにちは。
 「『しあわせ』のオルゴール」を執筆させていただきました、こみか、と申します。
 オルゴールとスノをめぐるお話にご参加いただき、どうもありがとうございました。
 様々な心のこもったアクションで、少女と学校を救っていただきありがとうございました。
 今回は、それぞれのPCの思惑が入り乱れ、相互に影響を及ぼし、思いもよらない結果になったりPCの思惑が外れた結果になったりしました。
 オルゴール破壊のアクションが多く、敵対しているのに目的は同じという不思議な現象が起こったり……
 それもまた、面白いなぁと思いました。

 リアクション、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
 またどこかでお会いする機会がありましたら、よろしくお願いいたします。