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「ぴぃきゅう〜」
 低いうなり声で、体長11cm程度の綿毛うさぎである天禰 ピカ(あまね・ぴか)は、威嚇していた。
 体長1メートルくらいの丸っこい熊とである。
「だ、大丈夫なのかなあ」
 天禰 薫(あまね・かおる)は手に弓を強く握りしめながらその姿を見守っていた。
「こんなところで何をしてるのであります?」
 大きな機晶スナイパーライフルを構え、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が歩いてきた。
「あ、その。この子が熊と――」
「む、これは危ないですね!」
 吹雪はスナイパーライフルをスコープものぞかずに、熊へと向ける。
 だが、薫はそれをあわてて止めた。
「まっ、待ってください。この子やる気なのだ! ちょっとだけ見守ろうと思う」
「ふむ、それはしつれいしました。自分も見守らせてもらいます!」
 一匹の熊と一匹のウサギは、じりじりとその間を埋めるように近づいていく。
「ぴきゅう!」
「……がおーっ!!」
 熊が一方的に、ピカに向かって襲いかかった。
 ピカはそれを間一髪でよける。
「早いです!?」
「これなら、いけそうなのだ! がんばるのだピカ!」
 その素早さに思わず吹雪は、声をあげた。
 ピカの素早さは、吹雪ですら見逃すくらいの身の軽さだった。
 そんなピカを強く薫は応援する。
「ぴっきゅう!!」
 応援を聞くとピカは薫とそっくりな人型の姿になった。
 すかさず熊を両手で抱え込むように抱きあげ、ぐるりと振り回し始める。
「がおー!?」
 熊は目を回し始める。それと同時に、熊は床へと放り投げられた。
「ぴきゅうー!」
 全体重をかけ、ピカは倒れた熊の上にまたがった。その手には手斧がなぜかつかまれていた。
 その姿はさながら、金太郎のワンシーンをみているようだった。
「そこまでなのだ!」
 薫はあわてて、ピカを熊から離す。
「ふう……はらはらだったのだ」
「しかし、圧勝でありました」
 薫はピカの頭を軽くなでて、安堵のため息をついた。
 吹雪は気がつけば手を叩き賞賛の拍手を送っていた。
「そういえば、吹雪さんはなぜこんなところに来たのだ?」
 薫は不思議そうに聞くと、吹雪は大きなスナイパーライフルを抱えた。
「スナイプポイントを探しに来ました」

 激戦が各地で広げられる中で、同じようにいろんなほんの登場人物達に襲われている生徒の姿があった。
「あれは……もしかして、時計ウサギかな? てことはどこないアリスがいる?」
 玖珂 美鈴(くが・みれい)は、飛び回るウサギや犬、猫などの絵本の登場キャラ達に心を躍らせていた。
「青い鳥に、小鹿に、白い馬に……わわっ、どれも懐かしい――きゃあ!?」
 だが、楽しそうな声は突然悲鳴へと変わった。
 その悲鳴を聞きつけて、カイ・フリートベルク(かい・ふりーとべるく)が駆けつけた。
 美鈴に向かって子鹿や白い馬が勢いよく襲いかかってきていた。
「危ねえっ!!」
 カイは慌てて、奪魂のカーマインを構えると、クロスファイアーで美鈴に襲いかかるキャラ達を打ち倒していった。
「あ、ありがとう。私もしっかりしないといけないよねっ」
 美鈴は握り拳を作り、眉毛をつり上げながら言った。
 そんな美鈴にカイは指先で顔をかく。
「いや……まあ、自分の身は守れないとだめだけどな」
「お嬢ちゃん、楽しいところに行かないかい」
「えっ?」
 カイの言葉なんて聞こえないかのように、時計ウサギと話をしていた。
 まさに、おとぎの世界へ連れて行かれるところだった。
「それは地獄行きの切符だぞ!」
 カイは強く言い切りながら、カーマインをウサギに向けて放った。
「あわわっ、助けられてばっかりだから。わ、私もスキルで……あれ、シノかな」
 美鈴はカイの話を聞いていないかのように、突然走り出した。