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【第一章】7

「私、三月ちゃんを探してきます」
 パニックの中、二階で階段で待っていてくれるはずのパートナーを探しに行った杜守柚と別れて、雅羅達は一階へと降りた。
「これからどうする?」
「そうですね、まず外に出たいですけどこの格好じゃそう言う訳にもいきませんし」
 雅羅と火村加夜が話している間、ジゼルは自分達のグループを見つめている一つの視線に気づいた。
 瀬乃 和深(せの・かずみ)が彼女達を真剣な眼差しで見つめている。

「女の子達が……沢山の女の子達が下着姿で……
 あれは地上に舞い降りた……痴女……」
 周囲を見渡せば、強盗団から我先にと逃げだした女性達――それも試着室に居た為にやや逃げ遅れてしまった下着姿の――だらけだ。
 その中でも一際目を引いた矢張り下着姿の美少女グループ。
 長身で大きなバストの雅羅は古い言い方で言えば和深の好みに”ドンピシャ”だったし、白い下着を身に付けたシェスティンや
 藍色をベースに細かい柄やレース等ついた大人っぽいデザインのセットの加夜も素敵だ。  

 理想郷がそこにあった。

 だがしかしそれで取り乱せば男として、いや人としての人生オワタである。
「いやいや冷静になれ俺。何上手い事言っちゃった気でいるんだ」
 和深は、胸に手を当ててスーハーとわざとらしい位の深呼吸を繰り返す。
 そして、スラックスのポケットから
「取り敢えず写真撮るか」
 と携帯電話を取り出した。

「何しとんじゃー!!!!」
 勢いよく宙を舞って現れたのはルーシッド・オルフェール(るーしっど・おるふぇーる)。和深のパートナーだ。
 着地地点はここまで来たらお察し頂けるでしょう、な和深の顔面である。
 和深は首からグキッという嫌な……というよりも危険な音を立ててそのまま後ろへ倒れた。
「ルーシー……酷いじゃないか、首の骨折れたよこれ。
 確実にグキッて音したからね今。人体から一番聞いちゃいけない音聞いたからね俺」
「そう言う事は自分がまともな行動とってから言ってよね」
 ルーシッドはそう言いながらさも当然のように和深の服をてきぱき脱がしていくと、最終的にトランクス一枚になった和深を気にも止めないまま
 彼の服を着こんでいく。
「はぁ、これでよしっと」
「いや全然よくないよ。俺首折れてるからね」
「だって和深はボクを助けに来てくれたんだよねありがとうこの服有りがたく着させて貰うから和深はパンツで頑張ってね」
「ルーシー、台詞が棒読みだぞ、いかにも心にもない事を言ってる言い方はやめてくれ」
「さっき上から逃げてくる間に見た感じだと、理由は何だか知らないけど強盗達は女の子を狙ってる」
「おおっと無視だ。
 パートナーの発言と致命傷を無視して話しを続ける気だ」
「けどボク達の服、下着売り場に置きっぱなしだし、もし高価なものを持ってる人が居たら強盗に金品とか盗られる可能性もあるんだよね」
「金品よりもまずは俺の惨状を気にして欲し」
「危ないからそれを守らなきゃ」
 ルーシッドは和深の首根っこを掴んでずるずる引っ張って進むと、先程大助がやっていたのと同じようにエスカレーターを逆走していく。
 何度も言うけど良い子は真似しないでね。 
「ルーシーさん痛い。頭が! 頭が階段の角に当たって!!」
「皆の荷物を強盗から守るよ! 和深!!」
「おかしいよ? 目の前が赤いよ? これ血? 俺の血ですか?」



 嵐のように去って行った二人を見ていたジゼルは雅羅に振り返る。 
「凄いわね雅羅! 人間って首が折れても生きていられるのね!!」
「…………」
 向けられた純粋な眼差しに、雅羅は何と答えたら良いのか見当もつかなかった。