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リアクション
生徒たちの空気感が変わった。
「ユーノ、アリスって人知っている? それらしい能力を持った人」
フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)がユーノ・フェルクレーフ(ゆーの・ふぇるくれーふ)に小声で尋ねる。そんな女性は知らなかった。
「天御柱でそんな女性が暴れたことがあると聞いたことがあります……ただその人はもう居なくなとかの話ですが……」
なんの因果だろうか、ここにはその名前に関わっている者たちが多くいた。
もし、新興宗教をより布教するには、それにふさわしい力があるとしたら、人の心を無意識下から操れる彼女のような力が最もふさわしいように思える。
アリス・アレンスキー。
アリサ・アレンスキーの別人格にして、空京で剣の花嫁と機晶姫を多く操った人物。そして、限定的ながらも人の行動すら操る力を持った者。意思の統一性が重要な宗教において、これほどふさわしい能力はない。
だが、アリスは居ない。そして主人格たるアリサとその肉体に、そのような能力も残らなかった。事件後の彼女に残った強化人間としての能力は《精神感応》だけ。
念により会話出来るだけの《精神感応》が布教のどれだけ役に立つだろう。同じ能力を持つものにしか意味もなく、人々を救う能力にはなり得ない。
なら、アリス≒アリサという式は成り立たない。
しかし、懸念は拭い切れない……
落とし所としては、他にアリスという人物がこの列車に乗っていることだ。もしくは本当に――。
「わかった、俺が調べる。誰か、この列車の乗客名簿は持っていないか?」
乗客にダリルが問う。その中に混じった、この列車を運営する鉄道関係者に。
「おお! 協力してくれるのですか!?」
感動するキングにルカルカが言う。
「一応よ。銃声はしたんだから、乗客の安全と確認くらいしないとね。その序にってね」
(わざと時間かけなさい)
(わかっている。十分にな)
《テレパシー》でルカルカとダリルが状況の膠着化を謀る。もし、彼らアリサを求めているとしたのなら、厄介な話になりそうだからだ。
「それで、他に何か手がかりがないの? アリスについて」
リカインが尋ねる。それにノーンも言葉を重ねる。
「そうです。どんな人?」
「人相か、なにか特徴はわからないの?」
彩羽も尋ねる。すると、キングはこう答えた。
「彼女は、金色の髪に赤い制服を着ているそうです」
宗教家の行き過ぎた武装。タイミングの良すぎる銃声にトレインジャック。もしかして、今の銃声で狙われたのがアリスという人物かもしれない。ならもう死んでいるとも考えられる。武装が銃を撃った人物に対抗するために必要だったとしたら。そんな考えを持った燕馬は――
「この列車に乗っているだろう。ただ、……『生きて』乗っているのかは疑わしい」
などと呟いた。
「……いいや燕馬ちゃん、死人を入信させてどうするの。考えすぎじゃない?」
ローザが突っ込む。なんでそうなるんだと。
しかし、現状ここから動いて他の車輌の確認にいくのも危険だ。教団をここ以外に出すのも危ない気がする。実質的に硬直状態であり、別の車輌も騒がしいようだ。
「ノーン様、私の体をお願いします。
舞花、《アストラルプロジェクション》で位置状況の把握しにいった。精神が抜け脱力した彼女の体はノーンに抱きかかえられた。
そして、このCf205で起こっている多くの事件を知ることなる。
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