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二人の魔女と機晶姫 第2話~揺れる心と要塞遺跡~

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二人の魔女と機晶姫 第2話~揺れる心と要塞遺跡~

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■空京クエストパーク?
 ――紆余曲折色々とあったものの、何とかクレープを食べきった一行。甘ったるい匂いにダウン寸前だったナディムの表情も、幾ばくか和らいでいる。
(ふむ、小娘たちの邪魔をする者は現れなかったか。よほど警戒をしているのか、それか目の前に出れない理由があるのだろうな……)
 隆元は食後の緑茶をすすりながら、『殺気看破』で感じ取れなかった敵襲を冷静に考えているようだ。
「よーし、次はあっちのほうにあるチョコパフェの美味しいお店にいってみよう! あ、それとももう少し先のほうになっちゃうんだけど、モンブランの美味しいお店もあるよ?」
 フローラが自分のおすすめスポットを提案していくものの……さすがにクレープを食べたばかりでお腹が厳しいということもあり、全員が首を横に振っていく。
 と、そこへ早乙女 蘭丸(さおとめ・らんまる)が、全員へある提案をしていった。
「だったら、そろそろ私とみことのデート――じゃなくて、観光も大詰めだし、最後にふさわしい場所へエスコートしちゃうわ!」
 ちゃっかりと姫宮 みこと(ひめみや・みこと)の手を握ったまま、その場所へと案内し始める蘭丸。それに続く一行であったが、テテが何か気づいたようだ。
「あ、もしかしてこの先にある“クエストパーク?”へ向かうんでしょ!? あそこ楽しいんだよ、クルス!」
 ……げに恐ろしきは子供の無邪気さ。クルスを驚かせようとあえて行先を黙っていた皆の考えは通じなかったようだ。
「クエストパーク?……ですか。そこはどういうところなのでしょうか?」
「というより、どうして?なのよ? 別な所に?とか?とかあるの?」
 クルスとミリアリアから問いかけが飛んでくる。もはや隠す必要はないか、と判断した蘭丸が説明していくことになった。
「クエストパーク?は、平たく言っちゃえば遊園地ね。中世ファンタジーRPGをモチーフにしてて、最近人気急上昇中なホットスポットなのよ。特に人気なのは――っと、さすがにそれは着いてからのお楽しみってことで。ちなみに、なぜ?なのかというと……オーナーが『伝説は?から始まる』ってことで?ってついてるみたい。だからあんまり気にしなくてもいいわ」
 蘭丸の説明を聞いて、なるほどと納得するミリアリアとクルス。そこへさらにテテたちも加わり、どんなアトラクションがあるのかで盛り上がり始める。
 その少し後ろでは、アルクラントとシルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)の二人が並んで歩いていた。
「シルフィア、機嫌が良さそうだな」
「ええ。二人がとてもうまくやっているから嬉しくなってくるわね」
 シルフィアの機嫌のよさに、アルクラントも自然と笑みがこぼれていく。そして……賑やかな一団や街の様子を見ながら、二人はあることを思っていた。
 それはお互いが出会った頃のこと。二人が出会ったのはこの空京であり、この街はアルクラントとシルフィアにとっては特別な思い入れがある。たった数か月前のこととはいえ、二人の出会いはそれぞれにこの世界を素敵なものに変えていったのは確実であろう。
「――ミリアリアとクルスの二人にもぜひ、私たちのようになってほしいものだ」
「そうね、幸せな日々が送れるといいわね」
 とても楽しそうにしているミリアリアとクルスの二人を見て、アルクラントたちはそう願っていくのであった。


 ――空京に最近できたというテーマパーク、クエストパーク?。蘭丸の説明通り、中世ファンタジーRPGをモチーフにされた遊園地であり、入園するなりマスコットキャラクターであるスラゴン(スライムとドラゴンが合わさったような魔物らしい)の着ぐるみが出迎えてくれた。
「うわー! すごーい! ね、ね、クルス! あっちのゴーカートを乗りに――んぐっ!?」
 クルスをゴーカートへ誘おうとするテテであったが、そこを御剣 紫音(みつるぎ・しおん)に口をふさがれる形で止められてしまう。すぐに美影が来てテテを向こうに連れて行ってしまった。
「まったく……ここはなるべく二人でいさせてやるべきだろうに」
「お、紫音も気が利くわね♪ さすが女の子!」
「……俺は男だ!」
 蘭丸からの女の子発言にキレかける紫音。しかし蘭丸はどこ吹く風、みことの手をぐっと掴むと、ある場所を指差した。
「私たちがこれから目指すは――あの超人気ジェットコースター『神風ドラゴン』よ! ……あら、どうしたのみこと?」
「あ、あの……なんかあのジェットコースター、物凄い高低差で落ちてるんですけど……それに、宙返りしたりきりもみしたり、尋常とは思えない動きが満載……」
「高低差約150メートル、宙返りやコークスクリューを駆使してドラゴンの吐く炎の息をイメージしたものか。なかなかすごそうだな」
 パンフレットを読んでいた紫音が説明をする。それを聞いてか、みことは身体をぶるりと震わせた。
「そ、それは楽しそうですね……でも、ボクたちはモニカさんを警戒している身。あっちの天空クリスタル展望台で上空から警戒したほうg」
「大丈夫大丈夫! ジェットコースターからでも警戒はできるし、あのスリルと恐怖を経験すれば絆もより深まるわ! さぁ、れっつごー☆」
「え、い、いやーっ!! ボクこういうのはちょっと――いやー、ゆーるーしーてぇーーっ!!」
 恐怖に震えるみことの腕をがっしと掴み、ミリアリアとクルスも引き連れて神風ドラゴンに向かう蘭丸。……結果、しばらく神風ドラゴンから断末魔にも似た叫び声が響き渡ったという。

 ……このデートで色々と決めてしまおうと思っていた蘭丸だったが、肝心のみことが気絶してしまったため救護室へ運ぶ流れになってしまった。二人っきりなら襲おう、とも考えてたようだが、あいにくと紫音が付いていくことになったためそこまではいけなかったという。


 ――ジェットコースターを堪能した一行は、続く人気アトラクションである『運命輪の観覧車』に乗ることとなった。この観覧車は最高高度までいくと空京全体を見渡せるほど、と言われているらしい。
「テレサと勇刃君、観覧車に乗っちゃったねぇ。中がどうなってるのか、気になる〜!」
 観覧車近くのフードコートにて、勇刃と咲夜の尾行を続けていた美空とコルフィス。さすがに観覧車の中がどうなってるかまでは確認できず、美空はやきもきしているようだ。ちなみに、テレサとは咲夜の本名であるテレサ・ファリンクスから来ている。
「美空ちゃん、観覧車の中が気になるのかい? だったら……任せてくれ!」
「ふぇ? え、えええええっ!?」
 ここで願いを叶えなければ男がすたる。そう考えたコルフィスは美空をお姫様抱っこをすると、観覧車近くにある高い建物(何かのアトラクションらしい)の壁を『軽身功』を使って一気に駆け上り始めた! コルフィスの突然の行動に驚く美空であったが、不思議と嫌な思いはしていないようであった。
「――あらあら、あっちのほうもずいぶん燃え上がってますわねぇ」
 ……佑也+ラグナ一家の面々もここまで尾行しており、フードコートにてコルフィスの男っぷりを見てオーランドは感心していたとか。

「……わぁ、すごい! これがこの街のほぼ全部なんですね、ミリアリアさん」
 観覧車のゴンドラの一つ。ミリアリアとクルスはその中におり、初めて見る空京のほぼ全景にクルスは驚愕と感動をしていた。もうすぐ黄昏時に入る空京の街は、紅く燃え上がっている。
「ええ、そうね……ねぇ、クルス。もうすぐ観光も終わりだけど、楽しかった?」
 意識した状態で二人っきりのためか、やや緊張気味のミリアリアであったが、そのそぶりを気づかれないよう心掛けつつ、クルスへそう話しかける。クルスは少し考えていたようであったが、力強い頷きを見せてくれた。
「もちろんです。僕の目覚めたこの世界は、本当に楽しくて、皆が幸せでいる世界なんですね。この世界に目覚めさせてもらって、本当に感謝してます!」
 純粋な言葉。何も知らないクルスの言葉に、ミリアリアも微笑みで応えると、クルスがクエストパーク?のメインシンボルでもある『クエストキャッスル』のほうを見ていた。
「どうしたの、クルス?」
「……最後に、あの城の中を見てみたいんです。パンフレットには古王国時代の城を参考にして作られた、と書かれていますけど……なんか、古王国時代っていうのが気になって」
 ……クルスの失われた記憶に関係するのだろうか。ミリアリアは一瞬戸惑うものの……クルスからのお願いに了承するほかなかった。


 ――観覧車を後にしたミリアリアたちは、クルスたっての希望でクエストパーク?のメインシンボルともいえる大きな城『クエストキャッスル』を見学していくことにした。閉園時間が近いということもあり、本来ならもう入れないものの、ベルクの『根回し』のおかげで特別に見学を許されることとなる。
 中は古王国時代当時の城を再現しており、さながら博物館といったところだろうか。物珍しげに見て回る一行であったが、クルスはじっと何かを思い出そうとしているかのように場内を見て回ったが……やはり、思い出したことは何もなかったようだ。
 もうすぐ完全に閉園時間を迎えることもあり、見学もそこそこにクエストキャッスルを後にしようとするミリアリア一行。城のエントランスホールまでやってきたその時……。
「……!? 気を付けろ、こちらに害意を持つ者が近くにいる!」
 ミリアリアの荷物持ちとして近くで護衛していた氷室 カイ(ひむろ・かい)が『殺気看破』で何者かの気配を感じ取る。現在、この城の中には遠くからの護衛組を含め、ミリアリアとクルスの護衛をする者たちのみ――!
「あの甲冑……動きましたっけ!?」
 リースが前方にある一体の甲冑がこちらに近づいているのに気づく。この甲冑は城の中にあったもので、実戦でも使用に耐えうる一級品。それが音を立てながら歩き、ミリアリアたちへ近づいてくる……!
「――前回は後れを取ったが、今度こそ……奪わせてもらう!」
 そして甲冑が立ち止ると、その中から響いたのは――まぎれもない、モニカの声であった。