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イコン博覧会2

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リアクション

 

飛空艇ブース

 
 
 大型の拠点と言えば、大型飛空艇もその一つに数えられる。
 原型とも言える物は、従来の海上艦船に機晶石を利用した浮遊装置を設置して飛空艇にしたものだ。主に空賊や海賊が利用し、パラミタ内海の海戦などでも、多数が確認されている。
 本来はレトロチックな外観の帆船型大型飛空艇であるが、地球の艦船の概念が加わったそれは、最新型の艦船的なシャープなデザインの物が多くなってきていた。
 湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)の所持する雪風も、そのように現代的なフォルムを有している。
 空中戦を想定とした船体は前面面積を抑えたスリムなデザインで、舷側にも砲塔を備えた三次元的な擬装が施されていた。
「ああ、イコンじゃなければなんでも癒されるわ。でも、私には倒さなければならない敵がいるのよ。急がなければ……」
 係留されている雪風をうっとりと見つめた後、シルフィスティ・ロスヴァイセは郊外の方へと走り去っていった。
 
「ああ、やっと帰ってきましたわ。大遅刻ですわよ」
 交代時間をだいぶ過ぎて戻ってきた坂本竜馬を見て、ソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)が言った。
「いやあ、すまんのう。ちょっといろいろなところで足止めをくらっちまってなあ。すまんすまん」
「本当に。坂本さんがいない間、ぼーっと待っていたら1/10イコンの展示物と間違えられるし、さんざんだったのですから」
 ほうっと深い溜め息をついて、ソフィア・グロリアが言った。
「それは……。そのコンテナつきの飛行ユニットとか、ミサイルとかキャノンとか、武装を外したらいいんとちゃうんか?」
 まさか、完全武装の説明員やコンパニオンがいるとは誰も思わないだろうと、坂本竜馬がソフィア・グロリアに言った。
「だって、何があるか分からないじゃないですか。機晶姫として、これは最低限のたしなみです」
 頑として、ソフィア・グロリアが譲らなかった。
「やれやれ、やっと交代か。じゃあ、これを頼んだぜ」
 湊川亮一が、かかえていたパンフレットの山を坂本竜馬に渡した。そこには、雪風のスペックが、問題ない範囲で事細かに説明されている。
「みなさん揃いましたね。ちょうどいいタイミングですから、昼御飯をお渡ししますね」
 雪風内の厨房でサンドイッチを作ってきた高嶋 梓(たかしま・あずさ)が、バスケットの中から一同にお昼を配った。
「おうい、見学に来てやったぜ。おっ、ナイスタイミングだったようだな」
 そこへやってきた岡島伸宏が、高嶋梓の作ったサンドイッチを見て目を輝かせた。
「もちろん、余分はあるんだろ?」
「こんなことになるんじゃないかと思って、ちゃんと用意していましたとも。はい、どうぞ」
 そう言うと、高嶋梓が岡島伸宏に予備のサンドイッチを手渡した。
「おい、警備の方はどうしたんだ。もう終わりか?」
 確か、岡島伸宏はイコンで会場の警備をしていたはずだと思い出した湊川亮一が訊ねた。
「それが、ははは、プラヴァー、撃墜された」
「なんだって!?」
 がっくりと肩を落とす岡島伸宏を一同が注目した。
「だって仕方ないだろ、いきなりティラノサウルスがだきついてきたんだぜ……」
「いや、想像ができないんだが……。まあいい。飯でも食って妄想は忘れろ」
 そう、なんとも変な慰め方をする湊川亮一であった。
 
 
模擬演習

 
 
「はい、こちらは、空京郊外のイコン演習場となっております。本日ここで行われるイベントは二つ。まずは、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)さんの射撃演習が行われます。続いては、お待ちかねのイコンバトルロイヤルが行われる予定です。中継は、引き続き佐野和輝さんのグレイゴーストからお送りいたします。それでは、リアトリス・ブルーウォーターさん、どうぞ」
 シャレード・ムーンの中継が、演習場と博覧会会場の大型モニタに映し出されたた。安全を考えて、実弾を使った催しは、空京を少し離れた郊外のイコン演習場で行われる。その模様は、佐野和輝とアニス・パラスの乗ったグレイゴーストが上空から中継することになっていた。
 
「ターゲットですが、ファーストステージは三基だよ。水平方向に連射されるからね。スナイパーライフルの総弾数は六発だから、外しても余裕はある計算になるけど……」
「了解したよ。もちろん、無駄弾は撃たないよ。撃つ暇もないだろうからね」
 メアトリス・ウィリアムズ(めあとりす・うぃりあむず)の説明に、閃光甲冑・鳥兜のコックピットの中でリアトリス・ブルーウォーターが答えた。
「続くセカンドステージでは、五つのターゲットが固定で現れるから。こちらは、僕も手伝うからね。トリカブトの実力を見せつけてやろうよ」
「もちろんだよ。さあ行こう」
 そう答えると、リアトリス・ブルーウォーターが閃光甲冑・鳥兜を発進させた。雷火をベースとした機体だが、そのデザインはむしろジェファルコンなどに近い。アイリス色の機体は、ボリュームのあるしっかりしたものだ。背部にはグレネードランチャーを背負い、クロスした四機のスラスターを有する。両腕にはブレードを内装し、シンメトリックな武装体系となっている。これらは、操縦系にも適応され、全性能を発揮するためには二人のパイロットが一人のパイロットであるかのようにシンクロして同時操縦しなくてはならない機構になっていた。そのため、リアトリス・ブルーウォーターとメアトリス・ウィリアムズのコンビ以外では、閃光甲冑・鳥兜の性能を引き出すことはほとんど不可能であった。
 演習場に、短いホーンの音が三回鳴った。
 直後に、三つのターゲットが短い間隔で同時に発射される。
 即座に、リアトリス・ブルーウォーターが高速移動でターゲットの後を追って相対速度を合わせる。同時に、メアトリス・ウィリアムズが全てのターゲットをロックオンし終えていた。
 わずかに二度角度を変え、スナイパーライフルからペイント弾が三発発射される。直撃を受けたターゲットが、進行方向を変えて散っていった。
「次、来ますよ」
 メアトリス・ウィリアムズが操縦桿を握った。
 遠方で、五つのターゲットが起きあがる。
 二人の動きが一体化し、内装アームブレードを展開した閃光甲冑・鳥兜が、高速移動しながらターゲットを次々に切り落としていった。
『リアトリス・ブルーウォーターさんとメアトリス・ウィリアムズさんの乗る閃光甲冑・鳥兜による演習でした』
 コックピットを開放して姿を現し、手を振る二人をズームアップした画像に、シャレード・ムーンのアナウンスが重なった。