リアクション
蒼空学園ブース 蒼空学園のイコンは長らくイーグリット・アサルトだけであった。 天御柱学院のイーグリットをOEM供給された機体だが、全体的にマイナーダウンしている感は否めない。フローター部分が機動性に劣る形状の分、二刀流を基本とした武装へと換装して近接戦闘にさらに特化させて補っていた。 「蒼空学園は、天御柱学院の発展型? か。おや?」 キスクール・ドット・エクゼを探してブラブラと訪れた斎賀昌毅が、イーグリット・アサルトの隣に展示されている機体を見て、おやと思った。 プラヴァー・ステルス。一般機であるプラヴァーのもう一つのタイプ、遮蔽装置搭載型だ。 高機動パックに似たバックパックを搭載し、そちらへほとんどのエネルギーを回すことによって高効率の遮蔽フィールドを発生させて機体を隠す。 遮蔽中破ほとんどの基本性能が低下するが、隠密行動によって奇襲などには最適のイコンだと言えるだろう。 「既存のイコンをうまく改良したものだな。イコンは天学発祥などと言ってもいられない時代が来るのだろうか」 思いがけない発展をするイコンの系統を目の前にして、シリウス・バイナリスタがつぶやいた。 パラ実ブース パラ実のイコンは、種籾の塔で生産された二タイプがずっと基本であった。 共に、巨大な顔に直接手足がついているような姿をしている。 喪悲漢は機動力に優れ、離偉漸屠はパワーに優れている。とはいえ、それは両者を比べたらという話で、イーグリットなどと比べてはおよぶべくもない。だいたいにして、サイズ自体がイーグリットなどと比べたら、頭部の装飾を入れても肩ほどまでしかない小型サイズである。 出虎斗羅もただの大型トラックなので、イコンと戦うのは無謀だと言えたが、パラ実生としてはこれでぶちかませば吹っ飛ばせない物はないと信じている。ちなみに、今日は、空京市内で出虎斗羅レースが開催予定だ。 いずれにしても、イコンとしては役者不足であった。 だが、そこに現れたのが量産型饕餮である。 完全な人形のこのイコンは、イリア分校地下にあった饕餮の量産型として作られている。他校と比べても巨大なその機体には、パイロットが三人まで乗れるのだが、メイン操縦者は搭乗せず、外部からリモコンで操作するという特殊なコントロール方法をとっている。敵に渡すな大事なリモコンである。 「にしても、癖がありすぎて、使いやすいんだかどうだか……。説明員はと……」 斎賀昌毅が説明員を探したが、今回のパラ実のブースには説明員もキャンギャルもいない。 いずれにしても、パラ実らしく、細かいことはどうでもよかった。 薔薇の学舎ブース 薔薇の学舎で有するイコンは、現在でもシパーヒーだけである。 スリムな甲冑騎士を思わせるイコンは、今日あることを思ってタシガンの一貴族が秘蔵していた太古のイコンというふれこみであるが、詳細は公表されてはいない。 見た目と違い、基本は飛行移動である。第一世代機としては、高性能の部類に属する。 「うーん。次世代機は存在しないのか」 意外そうな顔をして、斎賀昌毅が通りすぎていく。 新しい情報がなくて人が少ない中、土方歳三がもの凄い速さでスケッチをしていく。 「この均整のとれたイコン。どのような背景にも溶け込む……」 そのスケッチの背景は、咲き乱れる薔薇の園だったり、荒波砕け散る断崖だったり、様々であった。 「ここは異常なし。次に行くか」 樹月刀真が、展示が一機だけでちょっと淋しい薔薇の学舎ブースを通りすぎていった。 明倫館ブース 「さあさあ、皆の衆。ゆっくりと我が校の鬼鎧を堪能するのだよ」 ひらひらと扇を振りながらエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が呼び込みをしている。 ここは、葦原明倫館のブースだ。 「じゃあ、始めますか」 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、三体の異なるシルエットのイコンの前に立って解説を始めた。 「我が校のイコンは、他校のイコンとは、かなーり違います。もともとは鬼の力を人の手によって再現しようとしたところから始まっているんですよ。そのため、俺たちは鬼鎧と呼んでいます。その昔からあった鬼鎧を現代の技術で甦らせた物が、雷火です。これは、俺が最初に乗っていた鬼鎧でもあります」 雷火は、人形をした近接戦闘用の鬼鎧で、その外部装甲は鎧武者を彷彿とさせる。地上戦に特化しているため、基本装備での飛行能力は有してはいない。 玉霞は、忍者タイプの鬼鎧で、長らく極秘とされていた物である。第一世代機でありながら、第二世代に迫る高機能を有している。特に際立っているのが移動能力であった。地上型のために飛行はできないが、高い跳躍力を生かして遮蔽物を飛び越えての移動が可能となっている。その移動能力は、まさにワープしたのではないかと錯覚するほどである。また水中活動も可能なため、まさに敵を翻弄できる高性能機体となっている。 流星は、第二世代機相当として登場した大型鬼鎧である。より鬼に近いとされ、強大なパワーを誇る。そのため、接近戦でも脅威ではあるが、その豊富なペイロードを生かし、大型火器による支援攻撃が基本となる。 紫月唯斗は、雷火、絶影、魂剛とイコンを乗り換えてきたため、その全ての特徴を体験していた。 「そこのおぬしも見学していってはどうかな」 エクス・シュペルティアが、ひらひらと坂本 竜馬(さかもと・りょうま)を扇であおいで誘った。 「ほう。これはまた精悍な眺めじゃのう。面白か。まだ時間は……。まあいいか。楽しませてもらうけん」 交代時間までと勝手に抜け出してブラブラしていた坂本竜馬だったが、そのまま明倫館ブースでくつろいでしまうようだ。 「それにしても、本当に他校とは別系統のイコンだな」 斎賀昌毅も、興味深そうに坂本竜馬の後ろで、紫月唯斗の説明に耳をかたむけていた。明倫館のイコンは明確に第一世代、第二世代という分け方はされてはいないが、現実的にはそれぞれが、第一世代、1.5世代、第二世代に相当する高性能機だ。 「うーん、強そうでいいですねえ」 異なるタイプのイコンにちょっと刺激されて、ベネティア・ヴィルトコーゲルもほれぼれと流星などを見渡していった。 百合園女学院ブース 百合園女学院のイコンは、未だキラー・ラビットだけであった。 東西シャンバラに分裂していた時代に、エリュシオン帝国から供与された大型の動物型四足歩行イコンである。 大型の機体ゆえに移動力は劣るが、瞬発力は高く、瞬間の機動性能は侮れない。また、その高いペイロードを生かしての重火器の搭載能力が特徴でもある。 「ここも次世代機は……ないか。次行こう。おーい、キスクール。どこだー」 ちょっとがっかりしながら、斎賀昌毅が通りすぎていった。 |
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