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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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第八章 魔法少女と悪の科学者 1

 さて。
 こうして事態がただでさえ混沌としているところに、さらに事態を引っかき回しに来た四人の人影があった。

「むむむむ……この展開は読めなかった、この天才科学者ドクター・ハデスの目をもってしても」
 どこかの「天才軍師(笑)」みたいなセリフを口にしているのは……まぁ、セリフにもあった通りドクター・ハデス(どくたー・はです)
 言わずと知れた「悪の秘密結社オリュンポス」の大幹部である。

 そのハデスにつき従うのは、人見知り騎士のアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)、ミス・フレンドリーファイアのヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)、そしてアジト警備員な悪魔のデメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)
 もうこの紹介の時点でいろいろものすごい顔ぶれなのは一目瞭然だが、今回はそれに輪をかけていろんな意味ですごかった。

 イルミンスールの制服を着たアルテミス。
 魔法使いのマントを羽織ったヘスティアとデメテール。

 髪型と髪の色くらいしか共通点がないため非常にわかりにくいのだが、一応、この三人はディオニウス三姉妹に変装している「つもり」なのである。
 
 ……が。
 陽気で明るいパフュームの真似は、内気で真面目な性格のアルテミスには無理があり。
 ヘスティアがシェリエに扮するには、外見年齢やら胸の大きさやらウェポンコンテナやらといろいろと無理がある……というか、ウェポンコンテナは置いてこいって。
 そしてデメテールに至っては、髪型と髪の色以外は何もかもが違うため、変装というより単なるコスプレになり下がっている始末である。

 ……どうしてこうなった?

 そのそもそもの原因は、ハデスがストラトス・チェロの噂を聞きつけたことだった。

「魔物を呼び寄せるチェロか……それは世界征服の役に立つに違いない!
 何としても我らで手に入れ、その音色で魔物を操って世界征服の尖兵としてくれるわ!」

 すでに、この時点でそうとう誤解が入っているのはもちろんご承知の通りである。
 実際にはチェロが魔物を呼び寄せていたわけではないし、そもそもチェロに魔物を操る能力があるなどという話は元の噂にもない。
 百歩譲って本当にチェロが魔物を呼び寄せていたとしても、これでは制御できないまま自分たちが魔物に襲われるだけだった気がするのは気のせいだろうか。

 ともあれ、ストラトス・チェロの奪取を目論んだハデスだったが、さすがに真っ向からチェロを奪いに行くほど無謀ではない。
 考えた末、彼が思いついた作戦が……この「偽ディオニウス三姉妹」作戦だったのである。
「これなら、真正面からチェロを奪いに行った方がまだ可能性があったんじゃないか?」というのは、もちろんわかっていても言ってはいけない。

「あの三姉妹が事件を解決するのを待って、三姉妹に変装して先にチェロを受け取って帰る予定だったのだが……まさかその三姉妹が犯人にされてしまっているとはな」
 ……いや、そのおかげで無謀な作戦を実行せずに済んだのだから、むしろ幸運だったというべきなのだが、当然ハデスはそんなことには気づかない。
 
「私は、あの三人に限って、そんなことはないと思いますけど……」
「デメテールもそう思うなー。コーヒーもデザートもおいしかったし」
 一応「カフェ・ディオニウス」にも言ったことがあり、三姉妹とも顔見知りの二人がそう言うが……アルテミスはともかく、デメテールのそれはどういう根拠なのか。
 何はともあれ、作戦の前提が見事に覆ってしまった以上、彼らの作戦も大幅な方向転換をせざるをえない。

「なんだかいろいろと混乱していて警備どころではないようだし、三姉妹が犯人という方向になっているのなら、もうこのまま三姉妹を装って邸宅に侵入してチェロを奪った方が早いのではないか?」
 あっさりと実力行使に舵を切ろうとするハデスだったが、その前に三人の人影が現れた。