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サクラサク?

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サクラサク?
サクラサク? サクラサク?

リアクション

「水風呂……でっか?」
「そう、水風呂。でっかい氷を浮かせて、キンキンに冷やしてくれ」
 おそるおそる聞き返した女将の音々に、人気番組「温泉へGO!」の敏腕プロデューサー、マーガレット・スワンが、さらに恐ろしい注文をつける。
「そんなもんに入ったら、風邪引いてまうやあらしまへんか?」
「そうだな、熱湯風呂も用意しておいてくれ。そっちは、火傷しそうなくらいガンガン湧かして熱くしてな!」
「火傷しそうなくらい……て、そんな……」
 マーガレットの無茶な要求に戸惑う音々だったが、どこか上の空に見える彼女の心の大部分を占めているのは、中庭の桜の木のことだった。
 ガイドブックにも載せてもろたあの木に、まだひとつも花が咲いていないことがバレたら、どないなってしまうのやろ……?
「ところで、この宿には、名物の桜があると聞いている。案内してもらおうか?」
「え、ええ?」
 いきなり核心に迫られ、息を呑む。
「どうした? 五月に見頃を迎える桜の老木は、風船屋の春のセールスポイントだろうから、バッチリ宣伝してやろうというのに」
「そ、それはその……今、中庭は、宴会準備中で、立ち入り禁止になっとりまして……えろうすんまへんが、もうしばらく、待っていただけんかと……」
「ふむ……宴会か。なるほど、考えたな。番組のラストシーンは、賑わう宴を見下ろす満開の桜で決まりだな!」
「は……はい……」
 意気上がるマーガレットの前で、身を縮ませた音々は、ただ、ひたすら祈るしかなかった。
 どうか、収録が終わる前に、桜の花が咲きますように。
 満開なんて贅沢は、もう、言いまへん。一輪でも二輪でもええんや。この風船屋を救うため、どうか、きれいな花を開いてください……。