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「ヴァアアアアッ」
「うっとおしいですぅ!」
 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の周りにはローゾンビが集まってきていた。
 今のエリザベートは目の前の穴をふさぐことに集中していたため、ゾンビに構う暇はなかった。

「エリザベートちゃん、大丈夫です〜?」
「大丈夫ですぅ」
 エリザベートのそばで、エリザベートと同じくらいの年齢に見える神代 明日香(かみしろ・あすか)は一人で守っていた。
「いまです〜」
 明日香は出来る限り、エリザベートに近づいてくるゾンビを自分へと引きつけた。
 そして明日香は、天の炎で引きつけらたゾンビ達は炎で包んだ。
「指一本エリザベートちゃんにはふれさせませんよ〜」
 真剣な目つきで、明日香は次々にゾンビ達を火だるまにしていった。
「なんか、前後左右、全方向から湧き出て着始めてる気がします〜」
 順調にゾンビ達を燃やしながら、明日香が違和感を感じていた。

「ゾンビがゾンビを呼んでる気がするであります」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は【要塞化】でベンチを使ってバリケードを作りながら答えた。
 同時に【殺気看破】で周りにゾンビがどんどん集まってきているのは分かっていた。
「前方に100を超えるローゾンビを確認……」
 エリザベートの前方を戦闘型ロボットが立って守っていた。
 ロボット、鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)は【ニルヴァーナライフル】でローゾンビを少しずつ倒す。
 しかし、増えていく数から、ライフルでは間に合わなくなってきていた。
「100!? 多いよ!」
「あれ出せる?」
「あ、うん。いけるよ」
 大声を上げて驚愕しているセイレム・ホーネット(せいれむ・ほーねっと)に吹雪は聞いた。
 答えるとセイレムは【光条兵器】でロケットランチャーを作り出し、吹雪に渡した。
「ゾンビ退治と言えばこれでしょう! 明日香さん離れて!」
 吹雪は声を上げて、周りから一般人達を離れさせた。
 前方のゾンビ達はその間もじわりと近づいてくる。
 その間、二十二号がニルヴァーナライフルで倒し続ける。
「いくであります!」
 ロケットランチャーを構え、ローゾンビ達をとらえると吹雪は声を上げた。
 吹雪が声を上げると同時に、二十二号は横に下がった。
 吹雪はロケットランチャーのトリガーを思いっきり引いた。
「きゃっ」
 強い爆風と音に思わず近くに居たセイレムは声を上げた。
 ロケットランチャーの弾は見事に命中し、ゾンビ達を消し炭にした。
「これで大丈夫?」
「……前方にハイゾンビを確認」
「ハイゾンビまできたですう〜!」
 目を「><」にさせて、明日香は叫んだ。
 ローゾンビが居なくなった通路の天井から今度は、ハイゾンビが飛び降りてきた。
「敵を確認、ミサイル発射」
 二十二号が六連ミサイルポッドで対応する。
 だが、足の速いハイゾンビには効果が今ひとつのようだった。
「くっ……喉が……」
「あ、血!」
 座り込む吹雪に慌ててセイレムは腕を差し出した。
 それを飲むと、吹雪はロケットランチャーの弾を確認する。
「弾は一発まで……でありますか」
 ロケットランチャーの弾を追加するにも、セイレムのSPはあまり無かった。

 その直後、プラスチック製である天窓が大きな音と共に突き破られた。
 同時に、地面に軍服を着た女性と男性の二人が飛び降りてきた。
「エリザベート、無事?」
 女性の方、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がエリザベートに聞くと、エリザベートは軽く頷いた。
 あらかじめエリザベートは、ロイヤルガードに救援を頼んでいた。
「おい、あっちの人が……」
 一緒に降りてきたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)がゾンビに囲まれている明日香と吹雪を指さした。
「そこの人、目をふさいで−!!」
 ルカルカはそれを見つけると、ルカルカは閃光弾を投げた。
 刹那に白い光があたりを包む。
「今よ」
 ルカルカのかけ声と共に、ダリルは刈り取りの蜀台をゾンビに向けた。
 するとゾンビ達は次々と、粉のようになり消滅していく。
「間に合ったようだな。怪我はしてないか?」
「ありがとうです〜」
 ダリルが明日香に駆け寄り、怪我をしてないことを確認する。

「きゃーっ!!」
 少し離れたところで、女性の叫び声がした。
 そちらを見れば、若い女性がハイゾンビ三匹に襲われ掛けていた。
「まだ、問題は山積みみたいね」
「グルルッ……ガァアアアッ」
 ハイゾンビが女性に向かって一斉に襲いかかった。
 その間一髪のところで、ルカルカはブライドオブブレイドを構え守りに入った。
 ハイゾンビ達の牙が、剣をかみついたまま止まる。
「ええいっ」
 そのまま剣を振り払うとハイゾンビは転げた。
 だが余裕はない。すぐにゾンビ達は襲いかかる準備を始める。
 しかし攻撃をさせる暇は与えなかった。
 ルカルカの光魔法による、ハイゾンビは三匹とも塵へと消えてしまった。
「無事? ダリル!」
 ルカルカは女性の怪我を手当てするようにダリルに言うと拡声器を手に持った。
「怪我を負った人、1階のホールへ! 治療および避難まで誘導します!」