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全力! 海辺の大防衛線!

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全力! 海辺の大防衛線!
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リアクション

「綾耶! 待ってくれ!」
 後を追って綾耶へ追いついた某。立ち止まった綾耶の先にいたのはもう一人の綾耶。
「……これは私……?」
「そう、私は私自身。それは私がよく理解していることでしょう?」
 綾耶の呟きに答えたもう一人の綾耶。
「どうして綾耶が二人……? まさか、結界に入った時、調子が悪かったのは……。なら、これは結界が原因なのか……?」
「二人ともどうした……って、これは一体どういうことだ?」
 追いついたシリウスが、二人の綾耶を前にして、困惑する。
「分からない……でも、多分結界が原因かと……」
「『対ナラカの怪物用に、意思の力がそのまま具現化・実現する』それがもう一人の綾耶を生み出してしまったという事かな?」
 困惑する二人にサビクがやってきた。
「大丈夫かい? キミ達が走っていくのが見えたから、敵を倒して来たんだが」
「大丈夫……とは言えないか。その話の通りなら、あれは『ドッペルゴースト』が変質したものということか……」
「ふふ、どうしました? そんなに固まってしまって」
 『ドッペルゴースト』の綾耶が挑発するように、笑いながら綾耶へと話しかける。
「……結界に入った時の嫌な感覚……。もしそれがあなたなら……。ごめんなさい、皆さん。あの子は私に任せてはいただけませんか?」
「綾耶。それはあいつと一騎打ちさせて欲しいってことか?」
「はい。多分、私が戦わなければいけないと思うんです……」
 某は少し考えた後、シリウスとサビクを見る。
「俺からもお願いできないか? 無茶なこと言っている事は分かっている。だけど、綾耶に一騎打ちをさせてほしい」
「……何か訳ありってことか。そういうことならオレは構わないが」
「ボクも構わないよ。その間……」
 少しずつ集まってくるスケルトン達。
「周りの敵はどうにかするよ」
「皆さん……、ありがとうございます」
「綾耶……気をつけろよ」
「はい!」
「よし、やってやるか! せっかく使える力だ、味方がいない方を消し飛ばすぐらいしたってばちはあたらねぇだろ!」
 シリウスに集まる光。
「制御できねぇから……気をつけろよ!」
 その光を放出すると同時にシリウスの正面に巨大なクレーターが出来上がる。
「ボクも行こうか」
 サビクも再び星剣を手に敵へと突っ込む。
「いけっ!」
 某も『ウルフアヴァターラ・ソード』を狼形態にして、戦わせつつ自分も後ろから『真空波』を放ちモンスター達を倒していく。
「皆さん、ありがとうございます……」
 綾耶は再びみんなにお礼を言うと、ゴーストのほうへと向き直る。それを待ちかねていたとばかりにゴーストが微笑む。
「……覚悟は出来ましたか? 歪で欠陥品な守護天使さん?」
「それは……」
 ゴーストの言葉に綾耶が一瞬驚くが、すぐに何かを理解したかのようにゴーストを見据える。
「……あなたは、私の不安や恐怖を具現化したモノ……ですね?」
「そうですよ。私はあなた。いつも痛い痛いと泣きじゃくる役立たず。あなたのせいで、彼は自分を責め悩む。あなたのせいで、彼の心は休まらない」
 ゴーストが『恐れの歌』、『嫌悪の歌』に言葉を乗せて綾耶に投げかける。
「そんなこと……」
 綾耶が喋ろうとするもゴーストがそれをさえぎる。
「あるわけがない? でも、現にあなたはそう思っている。だから私が生まれた。そして、軋みをあげるその身体はいつか砕けて彼や大切な人達を傷つける。そんな、あなたが幸福を? 失笑も出来ない冗談です」
「…………」
 綾耶の精神へと直接攻撃するゴーストの言葉。綾耶は黙り込んでうつむいてしまう。
「綾耶! その偽者の言葉を抱え込むことは無い!」
 そんな綾耶へと声をかけたのは戦闘中の某。綾耶は、はっとして顔を上げる。
「前に言っただろ! 綾耶の身体の事や抱えているものを一人で抱え込むなって! 俺が……いや、みんなで考えて解決していこうって!」
「あなたにそんな資格なんてありはない。あなたが感じた仮初の未来絵図も、幻想も、全ては夢の出来事。現実になんてならない所詮、泡沫の夢で終わる」
「私は……」
 何かを考える綾耶にゴーストが追い討ちをかける。
「そんな事はない! 夢でなんて終わらせてたまるか!」
「その通りぜ!」
 敵を蹴散らしたシリウスも綾耶へ声をかける。
「話はある程度聞いたぜ。もし、あれが綾耶の不安や恐怖そのものだっていうなら、アイツの言葉なんか信じちゃいけねぇよ。信じたらそれこそ、本当になっちまう。綾耶はそれでいいのか?」
「良くなんて……ありません」
「だったら、打ち勝たないとダメだよ」
 サビクも敵を一掃し、綾耶の元へ来て声をかける。
「それに、せっかく仲間がいるんだ。そんな不安を溜め込むなら周りに打ち明ければ良い。みんな、助けになってくれる。何も一人でそんな不安や恐怖と戦う必要なんかないんだよ」
「そうだ、綾耶! だから、綾耶が体験した事も、感じた幻想も、全部本物にするためにも……あいつに打ち勝つんだ! そして、みんなで頑張っていこう!」
「皆さん……」
 みんなの言葉を聞いて綾耶が決意したように顔を上げ、正面からゴーストを見据える。
「もし、それが本当の事だとしても、私は某さんの……皆さんの言葉を信じたい。私が感じた幸福を偽物にしたくない! だから……あなたを倒します!」
 綾耶がゴースト目掛けて『レジェンドレイ』を放つ。
「この一撃で、私は自分の恐怖に打ち勝ちます!」
「それがあなた……私自身の答え……」
 その一撃はゴーストを一瞬で消し去った。シリウス達の奮闘で周辺にもすでに敵の存在はない。
「これで……」
「どうやら終わったようやな」
 そこでどこからともなくやってきた裕輝。
「裕輝……。お前いままでどこに……」
「さすがに人連れたまま戦えへんから、隠れとったよ。しかし、無事終わったようでなによりや」
 裕輝が綾耶の顔を覗き込む。
「あの……?」
「だいぶ顔色がようなったな。何があったかはようわからへんけど、良かったやないか」
「はい。まだまだ色々と大変なことはありますけど……。それでも私は夢見た幸福のために諦めませんよ」
 裕輝が綾耶に言うと綾耶は笑顔でそう答えたのだった。