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全力! 海辺の大防衛線!

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全力! 海辺の大防衛線!
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第二章

 そんな、なにか壮絶な物語があっても、戦いは終わらず。ナラカのモンスター達は容赦なく進軍してくる。そして、その中には大蛇など、大型のモンスターの存在が目立つようになってきた。
「おぉー、デカイモンスターがうようよいるねー!」
 その光景を楽しそうに見る{SNM9998780#金本 ななな}。
「そうとなれば、早速宇宙船艦からの一斉掃射で……」
「待ちなさい」
「あぅ……」
 ななながどこかに通信を取ろうとしたところリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が首根っこを掴んで止める。
「もう、何するのリカー!?」
「そんな事したら私達まで巻き込まれちゃうでしょう?」
「でもでも、あれなら一発で全部倒せるから楽に終わるでしょ?」
「私達まで終わらせてどうするの!?」
 リカインの『咆哮』による突っ込み。さすがのなななも萎縮する。
「うぅ……そんなに怒らなくても……」
「せめて、結界内で完結することだけにしようね?」
「じゃあ……」
 なななはどこからともなく大型のバズーカを取り出す。
「この、核ミサイル搭載のバズーカで……」
「ダメに決まっているでしょう! 規模は確かに小さくはなったけれど私達が被害を受けるのは変わってないじゃない!」
 再び怒られるななな。
「そんなぁ……。分かったよ、これで我慢する……」
 今度取り出したのは普通のより大きく、色々とカスタマイズされた『レーザー銃』。
「それは……?」
「大丈夫! みんなには被害は行かないから!」
 なななが試し撃ちと言わんばかりにスコープを覗き込む。目標は前方にいる大蛇。
「ターゲットロックオン! 発射!」
 トリガーを引いた瞬間、レーザーが発射。そして少しして小型ミサイルが無数に射出。狙った方角目掛けて飛んで行き着弾。周囲一帯を爆撃、大蛇と周囲のスケルトン達をまとめて一掃した。
「ミサイル搭載型カスタムレーザー銃! これから良いよね、リカ……?」
 不安そうにリカインを見るななな。
「……そうね。それなら良いわ。ただし、味方がいたら撃たないようにね」
 リカインの言葉を聞いてなななの表情が喜びに変わる。
「うん! ありがとリカ! よーし! どんどんやるぞー!」
「あっ、一人じゃ危ないわよ!」
 一人嬉しそうに突撃するなななとそれを慌てて追うリカイン。
「……行ってしまいますよ?」
 そして、更に後ろで戦闘準備をしながらその光景を見ていたユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)がいじけているシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)に声をかける。
「せっかくなななに誘われて海に来たのに……海ってそういう事だったなんて……」
 ボソボソ呟きながら『ウルクの剣』を持つシャウラ。
「俺の海を返せーっ! ばっきゃろーー!!」
 そう叫びながらなななの方へ走っていくシャウラ。
「やれやれ……、返すも何も貴方の勘違いなだけですね」
 呆れつつもシャウラの後を追うユーシスだった。

「ななな! 助けに来たぜっ!」
 颯爽とななな達の元へたどり着いたシャウラ。
「あ、ゼーさん! どこに行ってたの? 先に始めちゃってるよ!」
 そう言いつつ、前方の敵に向けカスタムレーザー銃を乱射する、ななな。
「ちょうど私一人じゃなななの援護はつらいと思っていたところよ」
 リカインが『七神官の盾』で近付いてくるスケルトンを殴り飛ばす。
「遅くなってすみません。私達も協力します」
 ユーシスも『レーザー銃』を構える。
「ゼーさんも頑張って戦おうね!」
「もちろんだ!」
 シャウラの手には剣のほかに『機晶爆弾』。
「俺、戦いが終わったら、今度こそ落ち着いてなななをマリンスポーツに誘うんだ……。それにホエールアヴァタラーに乗って、泳いで、花火もするんだ……」
「待ちなさいシャウラ。それは死亡フラグ……」
「うおぉぉぉぉ!!」
 ユーシスの制止も空しく、爆弾を投げて、そのまま切り込んでいくシャウラ。
「……シャウラ君は大丈夫なのかしら……?」
「……私がしっかり見ていますから」
「おー! ゼーさんやるね! なななも頑張っちゃうよ!」
 なななの手には銃ではなく、レーザーの刃を持つ長剣。
 シャウラの元に行き、一緒に剣を振り敵を倒し始めるななな。もちろん、それでシャウラの攻撃が激しくなったのは言うまでもない。
「何事もなければ良いけど……」
「そうですね……、とりあえず、そうならないように、精一杯援護しましょう」
 ユーシスがシャウラに襲いかかろうとしていた落ち武者を撃ちぬく。
「……そうしましょうか」
 リカインも盾を構え二人の援護を始めた。

「あちらも楽しんでいるようですね」
「せっかく全力で戦えるんだもん! 楽しまなきゃ損だよ!」
 ななな達とは少し離れた場所で戦っていた緋柱 透乃(ひばしら・とうの)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)。その二人の周囲にはすでに敵の屍の山が出来上がっていた。
「では、少し実験といきましょう……」
 陽子が『フールパペット』を発動する。周囲に倒れていたスケルトンや武者がゆっくりと立ち上がり始め、陽子の前に歩いてくる。
「まだ、余裕がありますね……」
 その数が少しずつ増えていく。その数が二十まで増えたところで止める。
「今は、ここまでですね」
「陽子ちゃん、準備出来た? 敵がまた来たよ」
 二人の元に再びスケルトン達が集まってくる。
「こちらはいつでもいけます」
「じゃあ、いくよ!」
 透乃が瞬時に『烈火の戦気』、『紅の透気』、『戦闘狂の烈気』、『不動の護気』、『ヴァンダリズム』を発動。
「一瞬で終わらせてあげるよ!」
 透乃が敵の軍勢に突撃する。
「せいっ!」
 元々の力に『金剛力』、『自動車殴り』により強化された怪力による、力任せに振られた拳。スケルトンに当たると、吹き飛ぶのではなく、その場で粉々に粉砕した。
「邪魔だよ!」
 落ち武者の顔面を掴み、そのまま思い切り投げつける。それだけで飛んでいった落ち武者のところに道が出来上がる。殴る、投げる、振り回す、引き千切る、その荒々しい攻撃はまさに鬼神のごとき戦い方だった。
「私もいきましょうか」
 陽子は『フールパペット』で従えたスケルトン達をけしかけつつ、自身も『刃手の鎖』と『凶刃の鎖【計韻】』による、暗殺術。『呪鎖【氷葬】』で敵を倒し、倒した敵を『フールパペット』で更に支配下に置き、数を増やしていく。
「そんなんじゃ、私は倒せないよ!」
 そして、あっという間に掃討を完了してしまう二人。
「この程度じゃ、準備運動にしかならないよ」
「そうですね……ん? この音は……」
 陽子が何かが近付いてくる足音を聞き、その方向を見る。そこには、馬に乗ったデュラハンの部隊が迫ってきていた。
「へぇ……。これは楽しくなってきた!」
 透乃は楽しそうにその騎馬部隊に突撃。『蹂躙飛行ブーツ』で一瞬にして先頭のデュラハンの前へ。
「砕けちゃえ!」
 繰り出された拳をデュラハンは素早く交わす。そのまま突き出された槍。透乃は避けようとせず、防御態勢を取って防御。
「この程度!」
 ヒットしたのにもかかわらず、『龍燐化』、『肉体の完成』などが相まって、透乃自体にはほとんどダメージが入っていなかった。そのまま、反撃のパンチで、一体のデュラハンを馬から叩き落した。
「行きなさい!」
 陽子も今では四十に増えた使役したモンスター達をけしかけるが、知能が高いのかデュラハン達は冷静に対処していき、全て撃破されてしまう。
「このデュラハン達、なかなかやりますね」
 デュラハン達は二人を中心に円を描くように走り始め二人を包囲する。
「でも、この方が楽しめる……っ!」
「透乃ちゃん!?」
 直後、透乃の身体が、一瞬揺らぐ。デュラハン達の向こう側にいたのはローブを纏い杖を持ったスケルトンメイジ。いくら心身共に耐性ができているとはいえ、少しばかり効いた能力低下の魔法。デュラハン達はその隙を逃さず、二人に向けて全方位から槍を突き出す。
「させないよ!」
 なななの声と共に飛来した小型ミサイルがデュラハン達に直撃。その、衝撃で槍の方向がずれ、二人には当たらない。
「このやろうがっ!」
 そして、シャウラが魔法を使っていたスケルトンメイジを撃破。
「もう魔法は撃たせませんよ」
 詠唱を始めていたほかのスケルトンメイジをユーシスが、銃で撃ちぬいていく。その隙に陽子と回復した透乃がデュラハン達の間を通り包囲網から脱出を図る。
「…………!」
 デュラハンはつかさず槍で二人の背中を狙うが……。
「させない!」
 リカインが盾で槍を防ぐ。
「二人とも大丈夫でしたか?」
「ありがとうございます」
「無事ならよかったぜ。ななながすぐに気づいてくれたから間に合ったが、もう少し遅かったら危なかったぜ……」
「ありがとね。さすがにちょっと危なかったよ。でも、もう大丈夫! さぁ、反撃するよ!」
 完全に回復した、透乃がデュラハン達のほうへきびすを返す。
「さっきはやられそうになったけど、もう負けないから!」
 透乃は再び真正面からデュラハン目掛けパンチを繰り出す。先ほどよりも早い拳はデュラハンに直撃すると、鎧がへこむどころか貫通する。
「落ちなさい」
 陽子が『刃手の鎖』で馬を攻撃し、デュラハンを振り落とす。
「バイバイ!」
 そこにつかさず透乃が迎撃し、粉々に粉砕する。残っていたデュラハンが透乃の背後から槍で攻撃。
「無駄よ!」
 リカインが盾でガード。
「ありがと!」
 透乃がリカインを飛び越え、デュラハンを掴み、引きずり落とすと同時にバラバラに分解する。
「ラスト!」
「行くよ! ゼーさん!」
「おうっ!」
 最後の一体をなななとシャウラがダブルジャンプ斬りで盛大に仰け反るデュラハン。
「一撃必殺!」
 トドメに透乃のパンチで胴体を吹き飛ばした。
「これで、終わりですね」
「ここら辺はこれで大丈夫そうね」
 周囲を確認しながら武器を下ろすユーシスとリカイン。
「ふぅ……楽しかった!」
「うんうん!」
 すっきりした顔で言う、透乃に頷くななな。
「私達は一度休憩しましょ、さすがに疲れたわ」
「そうだ、ユーシス!」
 シャウラがユーシスのほうを向く。ユーシスが頷くと、花火を取り出した。
「幸い花火は無事のようです。せっかくですし、少しやっていきませんか?」
「おー! やるやるー!」
 目をキラキラさせつつ真っ先に食いついたななな。
「そうね。ちょっとした息抜きにはなりそう」
「どうしますか? 透乃ちゃん」
「たまにはそういうのも良いかな」
「では、私達も参加させていただきます」
 こうして、少しばかり綺麗になった浜辺でささやかながら花火を楽しんだメンバーだった。