シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

リアクション公開中!

危険な香りを退け、汚部屋住人を救出しろ!

リアクション

「……すごい音がするな」
 ドア越しから中の様子を推測する裕樹。物が割れたり落ちたりする音が派手に聞こえてくる。
「ルカがちょっと様子を見て来るよ」
 ルカルカが『壁抜けの術』で偵察に行った。
 その間、他の者達は中の様子を想像しながら待つ。

「……ただいま」
 ルカルカはすぐに戻って来た。
「どうでしたか?」
 舞花が訊ねた。

「……大変な事になってたよ。熊のぬいぐるみが暴れ回ってて部屋の窓も全部割られてた。それだけじゃなくて薬品を混ぜ合わせたりしてたよ」

 ルカルカは偵察内容を話した。部屋が汚いだけなら問題は無いのだが、熊のぬいぐるみが悪さをしているとなると大問題。
「……薬品か」
 ダリルは事態が思ったより深刻な事を知り、言葉を吐いた。実験室というぐらいなので確実に危険な薬品はある。それを混ぜ合わせたりしていたら結果は火を見るより明らか。
「いよいよ危なくなってきたな」
 凄まじい爆発音に嫌な予感を抱くベルク。
「実験室からぬいぐるみを追い出すよ。追いかけて何とか外に出るよう誘導してみる」
 ルカルカが作戦を提案。
「入り口まで来たら合図を出して下さい。ドアを開けます」
 と舞花。ドアを開けたままにすると匂いが城中に充満して換気の意味が無くなる。それだけではなく、掃除を始めている者達にも迷惑が掛かる。
「その時、捕まえるんですね。頑張ります!」
 フレンディスはぐっと力拳を作りながら言った。
「ぬいぐるみが出た瞬間、俺達が室内に入るようにした方がいいな」
 ダリルがぬいぐるみを追い出した後の事を話し始めた。
「……匂いが漏れないようにか」
 裕樹はダリルの意図を察し、言葉にした。匂いが漏れないようにドアの開閉は最小限にする必要がある。
「あぁ、換気が無意味になるからな」
 ダリルは裕樹に頷いた。
「何かと混ざってそうだから快眠香は処分だな」
 ここで裕樹は快眠香の処置について発言した。
「それはだめだよ。オルナが一生懸命ササカのために作ったんだから依頼を果たせてあげたい」
 ルカルカが言葉を挟み、ダリルに意見を求めようとちらりと見た。
「確認してみない事には分からないが、もしかしたら無事かもしれない。無事でなくとも何とか出来る可能性はある」
 ダリルはそうルカルカに答えた。

「と言う事は薬品はそっちに回したんでいいか? 俺は門外漢で無理だから」
 裕樹は再び侵入後の話を再開。
「あぁ、それで問題無い。薬品の破壊は原因物質の飛散防止のため禁止だ」
 ダリルは薬品の取り扱いについて念を押した。すでにぬいぐるみによって酷い有様だろうが。
「分かった。処分可能なごみはラウズにごみ袋を持たせているからそっちに捨ててくれ」
 裕樹はごみ袋を持たせているラウズの方に顎をしゃくった。
「入り口付近で待機している」
 ごみ袋を持ったラウズは言葉通り入り口に待機。
「……トゥマス、侵入後、入り口付近から掃除をしていくぞ」
 今度はトゥマスと打ち合わせをする裕樹。
「それはいいんだけど、やっぱ先頭は俺?」
 少し嫌な顔をしながら裕樹に訊ねた。
「それが一番安全だろう」
 裕樹の返事はあっさり。
「まぁ、裕樹の言いたい事は分かるけど、聞くと中は予想以上じゃねぇか」
 自分が先行するのが妥当というのは分かるが、どうにも嫌な予感しかないトゥマス。
「青夜の料理のカオスさと良い勝負だろうな」
 裕樹も同じように嫌な予感しかない。ぬいぐるみによってどれだけ酷くなっているかは分からないが。
「そんな中、俺が先頭で行けと。匂いヤバイぞ。裕樹も感覚鍛えてるから分かるだろう」
「もしもの時は大丈夫だ」
 トゥマスは最後にもう一度だけ訴えてみるが、だめだった。
「ええい、泣き言言ってもしゃーない! やったるぜ!!」
 トゥマスはようやく先頭を受け入れ、腰にザイルを結んで侵入準備を整えた。

「行って来るね」
 打ち合わせが終わったのを見計らってルカルカが再び『壁抜けの術』で室内に潜入した。

 入り口に追い詰めようとしながらも捕獲しようと狙うが思いのほか俊敏で当初の予定通りとなった。

「開けて!!」
 ルカルカは、ドアの外に向かって大声で合図。

「よし」
 合図を聞いて裕樹がドアを開けた。他のみんなも気を引き締める。
 熊のぬいぐるみと共にナイフや鉱物がいくつも飛んで来た。ぬいぐるみの背後では紫色の煙が漂っている。

「あっ!」
 舞花は怪力の籠手で増加している力で鉱物を打ち砕いた。
「うむ」
 ラウズはランスでナイフを叩き落とした。
 この間に熊のぬいぐるみは素早く逃げ去った。

「マスター、追いかけましょう!」
 『追跡』を持つフレンディスが一番に動いた。
「あぁ」
 ベルクとポチの助を乗せた猛き霊獣も一緒だ。
「私も行きます!」
 舞花もすぐに追跡に参加した。
「ルカも追いかけて来るね」
 部屋から出たルカルカは残ったみんなに一言残して追いかけた。
 残された掃除組は入れ違いに室内に入って行った。

 廊下に残ったのは吹雪とコルセア。そして部屋に入れないラウズ。
「開かれたであります!! 熊が熊のぬいぐるみが出て来ましたであります!! 予想外、予想外! 漂う煙! 危険な予感! 最大の脅威であります!」
 吹雪は飛び出した熊のぬいぐるみとちらりと見えた室内について解説。今はすっかりドアが閉められているが。
「今、この奥では激しい戦いが行われているであります! 我々葛城探検隊は戦いに勝利する事を願うであります!」
 閉められたドアを睨みながら吹雪は解説を続ける。
「……戦いというか掃除」
 記録担当のコルセアのツッコミ。
「探検隊とは何だ?」
 ラウズが吹雪に訊ねた。
「我々の事であります。この城内を探検心だけを持って進む者であります!」
 吹雪はどんと胸を叩いて説明した。
「……探検。面白そうだな。私も後でするぞ」
 ラウズは探検に興味を覚えた。掃除を終えた後、探検冒険しようと心に決めた。
「では、同志、武運を祈るであります!」
 吹雪は理解を示したラウズに挨拶をしてからどこかに行った。
「吹雪!」
 コルセアは急いでついて行った。
 二人はしばらく城内を探検してから外に出た。