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想いを取り戻せ!

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想いを取り戻せ!

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「まだ? 作戦とは言え、みんなを危険に晒したくないよ」
 痺れを切らしたルカルカが早く、早くと急かしてくる。
「――もう少し、待て――カウント5」
 絶え間なく上がってくる情報を的確に把握しならがダリルは機会を窺う。
 狙うのは獲物が餌に食らいついたその瞬間だ。 
「4――3――」
 ルカルカの顔が少女のそれから戦士の、戦いの職務に就く者のそれに変わる。
 カルキノスの全身から闘気が溢れ出す。牙を剥いて不敵に笑う。
 ダリルの目がすっと細められる。浮かぶのは鋭利な刃を思わせる輝き。
 敵に回せば恐ろしいが、味方にいればこれほど心強い者はない。
「――狩りの時間だ」
「おういえ!」
 次の瞬間――三人の姿は弾丸のように地上へ向って降下をはじめた。
「《我は射す光の閃刃》」
 凛とした声と共に放たれた光の刃が敵を貫いた。
 降下のスピードを落とすことなくルカルカが敵に突っ込んでいく。
 その右翼に陣取ったダリルがバイクを狙い撃てば、左翼からカルキノスが氷雪の嵐を呼んで敵の攻撃をいなす。
 と、その横合いから別の一撃が放たれ、逃げようしたヴォルケーノをルカルカたちの戦域に吹き飛ばした。
「な、ななな?」
「なんだぁぁ?!」
 何もないはずの場所。誰もいないはずの場所。
 そこからの突然の攻撃がくれば野盗でなくとも驚くだろう。
 壁かと思われたそれは――。その背後から現れたのは機械化ヒュドラと柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)だ。
 光学迷彩を使い、その身を巧みに隠していたのだ。
「――いつもとは逆に横っ面を引っ叩かれた気分はどうだ?」
 目を剥く野盗の問いにさあと恭也は首を傾げて不敵に笑う。
「おまえらが今まで、どうやって荷馬車を襲ったか。――どの辺で仕掛けてくるか。ちょっと考えてみただけだ」
 それが大当たりだっただけの話だ。何も不思議なことじゃない。
 目論見通り、野盗団の側面から攻撃することに成功した恭也はそのまま、乱戦区域に向かって走り出す。
 売られた喧嘩を買いに奴らが釣れると踏んで、だ。
「鬼さん、おいで手の鳴る方へ――だ」
 案の定、数機のヴォルケーノが追ってくる。
(野盗どもはこれでいい――あとは雅羅、か……妙な災厄引き寄せなきゃいいんだが……)
 視線の先で立ち回るその姿に過去の経験を思い出し、恭也は肩を竦めた。
(……なんか、起こるな――経験上)
 
   * * * 
 
「ちょいと、相手を甘く見すぎたかもネぇ」
 分断された仲間と合流しようとすれば、真人の魔法と久秀の的確な指示に従ったアニスの札が邪魔をする。
 そこに機動力と生かしたセルファとトーマ。そして、エヴァルト。更にルカルカたちが加わる。
 バイクの動きを止めようと縦横無尽に暴れ回るのだから、気付けばバイク部隊はおろか、ヴォルケーノ部隊も半壊寸前だ。
 少し離れた場所でそれを見ていたミランダは傍らの男を仰ぎみる。
「どうすンだい? ガレスの旦那」
「――言ったじゃねぇか。罠であれなんであれ、俺たちが勝ちゃいいんだ」
「ああ。そうだったヨ」
 部下が翻弄される様を見ても一向に動じる気配のない男を頼もしそうに見やるとミランダは右の手を高々と上げた。
「お前たち。いいかい? 味方に当たっても少々気にするンじゃないヨ」
「「「「「へい! 姐さん!!」」」」」
「一発お見舞いしてやんナ!! 突撃ぃ!!」
 ミランダの掛け声で待機していたヴォルケーノのミサイルポッドが火を噴く。
 敵も味方も巻き込むと思われたそれを――
 ずっと、このタイミングを待っていた名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)の《サンダーブラスト》が撃ち落した。
 残る弾丸も真人の展開する氷雪比翼で荷馬車に届く寸でのところで威力を殺されて、届かない。
「旦那!」
「――面白れぇ。ミランダ――動けるヤツ連れていけ」
「あ、あいよ! お前たち、しっかりおし!! 行くよ」
「突っ込め!!」
 すがるように見上げるミランダに言い放つとついにガーゴイルが動いた。