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学生たちの休日9

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学生たちの休日9
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「こ、これはあ!!」
 宿り樹に果実のテーブルに着いたノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が、目の前に運ばれてきた今日のスペシャルかき氷を前にして感動に瞳を輝かせていた。
 夏休みの限定メニューを調査するために、世界樹中の学生食堂を渡り歩いてきたノルニル『運命の書』であったが、宿り樹に果実のかき氷は衝撃的であった。
「夏には、かき氷が似合うとは思っていました。でも、アイスにはかないません。でも、でも、まさか、このようなコラボが存在していたとは!!」
 ノルニル『運命の書』の前におかれていたのは、巨大なアイスフラッペであった。イチゴのシロップをたっぷりとかけたフラッペの上に、シャンバラ山羊のミルクアイスがこんもりと載っている。その他にも、様々なフルーツが氷に混ぜられて宝石のように輝いていた。
「これは、発明です! 革命です! 美味しそうです! これは、ぜひ私に食べてもらいたいと思っているに違いありません」
 携帯でパシャパシャと写真を撮りながら、ノルニル『運命の書』が感動に打ち震えていた。初アイスフラッペである。
「あらあら。まだまだ、いろいろありますよ」
 ノルニル『運命の書』の感動っぷりに、ミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)がちょっと喜んでカウンターから声をかけてきた。そのカウンターの上には、他の客が頼んだまったく違う形のフラッペがならんでいる。
「そ、それは!!」
 そのとき、ノルニル『運命の書』に使命が発せられた。全フラッペを制覇すべしと。
「順番に、全部ください! あっ、もちろん明日香さんのつけで」
 きっぱりと言う、ノルニル『運命の書』であった。
「あら、ノルンちゃん、ここで何しているのですか?」
 ちょうどそこへ、神代 夕菜(かみしろ・ゆうな)アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)と連れだってやってきた。
「明日香さんの大盤振る舞いなのです」
「そ、それは……」
 いいのだろうかと、神代夕菜がちょっと顔を引きつらせた。
「あれえ、奢ってくれるとは聞いてたけど、あなたのパートナーも太っ腹なんだね」
「もちろんでわ」
 ちょっと勘違いしたアゾート・ワルプルギスに、神代夕菜がすかさず答えた。ここは、ノルニル『運命の書』に乗っかって豪遊するしかない!
「さあ、どうぞ、お好きなかき氷を食べてくださいませ。冷たくなりすぎたら、クッキーもありますわ」
 ミリア・フォレストが運んできたかき氷をアゾート・ワルプルギスに勧めると、神代夕菜が手作りクッキーもテーブルの上に広げた。
「大したこともしていないのに、いいの?」
「もちろんですとも。肝試しでは、ずいぶん助けてもらいましたから、これはそのお礼です」
 ちょっと遠慮がちに聞き返すアゾート・ワルプルギスに、神代夕菜がきっぱりと答えた。夏合宿での肝試し大会で、余っていたのをアゾート・ワルプルギスにペアになってもらったので、そのお礼というわけだ。
 どのみち、支払いの請求はノルニル『運命の書』を通じて神代明日香に行くのである。ここは勢いで食べてしまうしかない。
「そう。じゃあ、遠慮なくいただくんだもん」
 アゾート・ワルプルギスがそう言うと、三人は堰を切ったようにかき氷をぱくついた。
「う〜ん!」
 ちょっと急ぎすぎて、一斉にキーンとなった頭をかかえる三人であった。
 
    ★    ★    ★
 
「さあ、シャンバラ美味しい物食べ歩きツアー、その皮切りがここだよ!」
 宿り樹に果実のテラス席で、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に言った。二人の目の前には、綺麗にクリームで飾られた、ロールケーキやシュートケーキがならんでいた。どれも、ミリア・フォレストお手製の逸品である。
「うーん、最高だよ!」
 絶品のケーキをつついて、小鳥遊美羽は御機嫌であった。
「うん、このイチゴショートなんか絶品……」
 ケーキの上にたくさんのっかったイチゴ……。
「ううっ」
 何かの模様を思い出して、コハク・ソーロッドがあわてて鼻を押さえた。
「食べ過ぎ? もうしょうがないなあ」
 あっさりと自分の分のケーキをたいらげてしまった小鳥遊美羽が、コハク・ソーロッドの分まで食べ始める。
「いや、あの、ごめん」
「ああ、あれも美味しそうだよね」
 ノルニル『運命の書』たちの食べているフラッペに目をつけた小鳥遊美羽が、ミリア・フォレストに自分たちの分も注文した。