シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

夏の終わりのフェスティバル

リアクション公開中!

夏の終わりのフェスティバル
夏の終わりのフェスティバル 夏の終わりのフェスティバル

リアクション

 謎料理の後片付けもそろそろ終わる頃、いくつかの麻袋を肩に担いだ林田 樹(はやしだ・いつき)が厨房に現れた。
「すまん、遅くなった! ジーナ、バカ息子、状況を説明しろ!」
 ジーナと太壱が樹に先ほどまでに起きた出来事を報告する。
 その傍らには、すばると瑞樹がしょぼんと立っていた。
「……と言うわけで、樹様に届けてもらった紫イモの粉末をパンケーキの粉に混ぜて、カサを稼ごうと思ったのでございます」
「了解した、その作戦で行こう。手の空いている者は、パンケーキを焼いてあら熱を取りラップにくるむ作業を手伝ってくれ!」
 樹の的確な指示によって、少しずつ止まっていた厨房が動き出す。
「俺は生地を練る方と、焼けたのを凍らせる作業をするっス! ツェツェ、お前パンケーキ焼けるだろ? 何とかしてくれ!」
「片っ端からこの生地焼けばいいのかしら?」
 太壱とセシリアによって、再びパンケーキが作られ始めた。
「焼きそばは、どうやって状況を打開する?」
「まずは、ボクとレナさんで普通の焼きそばを作り直そうと思います!」
 樹の言葉に輝は応えて、レナと目を合わせる。
「緑色の焼きそばも、あの鍋に入れられていない分は案外まともな味だったわ。
 フェスティバル限定で、二色の焼きそばを出してもいいんじゃないかしら」
 鉄板でパンケーキを焼き始めたセシリアが、樹に申告する。
「なるほど、ならば焼きそばは任せた。これでひとまず問題は解決したようだな」
「遅くなったけど業者に確認してきたわ! 搬入にミスがあったみたいで、ごめんなさいね。今日のところは、今ある食材でどうにかなる?」
 戻ってきたセラに、皆が頷いた。
「さ、太壱さん、皆さん、挽回いたしましょう!!」
 ジーナが仕切り直して、厨房は再び回り始めた。


「私は騒ぎを起こした輩を連れて、カフェイベントのビラ撒きに行ってくる! 服装は……」
「樹様用のメイド服も用意してあるのです!」
 ジーナが、シロップのレモン汁に水溶きマーマレードを手際良く溶きながら口を挟む。
「……わかった、メイド服で行く。蒼学の機晶姫と天学の黒髪!」
 樹がすばると瑞樹の前にずいと立つ。
「「私(ワタクシ)ですか?!」」
 瑞樹とすばるの声が重なる。
「貴様等も騒ぎを起こした罰として着替えろ」
「「着替え、ですか?!」」
 二丁拳銃を突きつけ、有無を言わさぬような樹の迫力に押され、すばると瑞樹はすごすごと控え室に消えていった。

 そして、数分後。
 控え室から、ブーツとタイツの上に、胸元の開いたフリルいっぱいのミニ丈メイド服を着た樹が現れた。
 首と手首に、付け襟とカフスのついたデザインのメイド服だ。
 後からすごすごと出てきたすばると瑞樹も同じデザインのメイド服を着ているが、こちらの二人はニーソ着用である。
「行って来る。ビラはどこにある?」
「それなら控え室にありましたよ!」
 樹は野々に案内され、控え室の中へと入っていった。
「瑞樹、ビラ配り頑張れー!」
「ビラ配りすると、何か美味しい海産物食べられるんだよね? 瑞樹ちゃんいいなー」
 輝とレナは焼きそばを焼きながら、瑞樹とワイワイ話をしている。
 すばるは、そんな樹と瑞樹の胸をちらりと盗み見た。
 そして、そっとすばる自身の胸に手を当てる。
「……ぐぬぬ」
「何が不満だ」
 素早く戻ってきた樹に拳銃を突きつけられて凄まれ、
「ふ、不満とかではないです!!」
 と激しく首を横に振って否定するすばる。
 メイド服姿の三人は、そのまま騒がしく出て行った。


 * * *


「皆さん、お疲れ様です」
 一通り仕込みが終わり、皆が控え室で雑談をしている頃。
 セラと野々が大皿を持って控え室に現れた。大皿に乗っていたのは、緑色の焼きそばだ。
「試食を兼ねて、と言うことでですね! 実験料理レシピを元に、作ってみました!」
 そう言いながら、野々は控え室のテーブルに大皿を置いた。
「まかないだー!」
 レナが嬉しそうに声を上げる。他の皆も、レナに続いて次々と大皿を覗き込んだ。
「祭りで出すなら、これくらいの奇抜さがあってもいいかもしれないですね」
「奇抜……。もっと奇抜なメイド服を作ってみるのも良いかもしれないでございます!」
「ジナママ、どんなの作る気っスか? 想像がつかないんスけど」
「メイド服自体が奇抜ってことよね? 着る人が、じゃなくて」
 皆、思い思いの言葉を述べながら大皿の焼きそばに手を伸ばす。

 そこに、ちょうどビラ配りに出ていた三人も帰って来た。
「お帰りなさい! ビラはたくさん貰ってくれた?」
「勿論だ。この通り、一枚も余っていない」
「二丁拳銃メイドというのが奇抜だったみたいです! いっぱい配ってきましたよ」
「へとへとになりましたが、まだまだ明日からが本番ですね!」
「そう、明日こそが本番です!! 明日こそは、本職メイドの給仕術でホールを掌握しますよ!!」
 そんな一人一人の顔を見て、セラは微笑んで口を開いた。
「みんな、今日は本当にお疲れ様! 明日も来てくれる人は、頑張ろうね!!」