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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

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第二章 シェヘラザードの目的

「しっかりね、アディ……大丈夫よ、私もそばにいるし」
「……問題ないわ。ここに、トラップはないわ」

 前方を慎重に観察するアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)を、綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が勇気づける。
 慎重すぎる程慎重なアデリーヌの態度は、遺跡を探索する者としては正しい姿だ。
 しかし、アデリーヌを知る者……さゆみからして見れば、その行動が慎重すぎる程である事は、良く分かった。

 皆で、地上に戻れるように。

 そんな願いが、アデリーヌの慎重さを生み出している。
 だからこそ、さゆみはアデリーヌにそっと手を差し出す。

「大丈夫よ。私がこうして一緒にいてるから……手をつなぎましょ」

 アデリーヌに指を絡めて手をつなぎ、微笑んで見せる。
 静かに頷くアデリーヌに、さゆみはまた微笑んで見せて。

「気を付けて……何か来る!」
「隠れているのもおるな……じゃが!」

 黄昏の星輝銃を構えたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が前方を見据え、ミア・マハ(みあ・まは)の神の目が隠れている敵を暴き出す。
 そこにいたのは、全身にトゲの生えたような人型の怪物の姿と……四つん這いで壁を這うように歩く人型の怪物。

「また人型……!」

 レキは、小さく呟く。
 そう、此処にいる怪物は人型のみ。
 正しくは人型……というよりは、元人間、なのだろう。

「人間の改造……犠牲者、ですか」

 此処に来るまでに見たものを思い出しながら、レイカも呟く。
 人間の改造設計図。
 新しい改造素案。
 実験体番号と生体データの記されたリスト。
 あまりにも邪悪な事実を淡々と記した記録は、それ自体が呪いを発するかのようで。

「悩んじゃ駄目よ。こうなったら、眠らせてあげるのも優しさよ」

 姫月は、そう言ってグレートソードを構える。
 初陣である姫月としては、辛いものがあるはずだが……それでも姫月は、強く意思を持って怪物達に相対する。

「あの方達は……地上には戻れないのですね」
「アディ……」

 アデリーヌの言葉に、さゆみはそっと手を握る力を強める。
 そう、この元人間である怪物達は、もう地上には戻れない。
 ただ、この薄暗い研究所の中で、生ある者を呪い続けるだけのものなのだ。

「眠らせてあげるのが……優しさ、なのですね」

 そのアデリーヌの芯の強さに、さゆみは小さく微笑む。
 支えているし、支えられている。
 それが分かるからだ。

「大変だ、子供が迷い込んでいる」
「こら偽ロリ……ではなくアーシア先生に失礼なこと言うのでは無いであります」

 その怪物の背後から聞こえてきた、素っ頓狂な声。
 ここまでの雰囲気を明るくぶち壊す声の主はイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)と、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)の二人だ。
 何やら大きなカバンを抱えているところを見ると、トレジャーハントの真っ最中であったようだ。
 こんなところまでトレジャーハンティングに来ているのは、中々見上げたものではある。

「この人は度重なる減給も貧乳も不祥事にも耐えるタフな人なのであります」
「それはタフである。我ならば耐えられん」

 何やら好き放題言っている二人に、怪物達までもが動きを止めている。
 その様子を見ていたシェヘラザードは、深く溜息をついているアーシアの肩をバシバシと叩いて笑う。

「アーシア、あいつ等面白いわ!」
「そう、そりゃ良かったわね……」

 そんなアーシアとシェヘラザード、そしてレキや怪物達を見回しながら、吹雪は疑問符を浮かべる。

「しかしこんな所で会うとはまた何かやらかしたのでありますか?」
「やらかしてないし。つーか手伝いなさいな」
「それはかまわないでありますが」

 この切り替えの早さは流石というべきだろうか。
 早速戦闘態勢に入った吹雪に、どことなくポカンとしていた怪物達も再び戦闘態勢をとる。

「ふむ。奴等を倒すのを手伝って貰える……ということでよさそうじゃな」
「よし、ボク達もやろう!」

 ミアが、そしてレキが挟み込む形となった怪物達と再び向き合う。
 倒すことが救うことならば……やるしか、ない。