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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

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【ぷりかる】蘇る古代呪術研究所

リアクション

「これで、扉が開くのね」

 丹念に石片を調べて扉にはめ込もうとする甚五郎達を見ながら、シェヘラザードは呟く。
 間違いなく、この先が最奥だ。
 この古代呪術研究所の奥に何があるのかは分からないが……ここが、終着点だ。

「おめでとう、いよいよね」
「そうね……ところでお前、さっきから居たかしら?」
「あの暗さだったしね」

 話しかけてくる少女に、それもそうね……と納得するシェヘラザード。
 しかし、勿論そんなことはない。
 先ほどまでは居なかった。戦闘のタイミングで、紛れ込んできた。
 それが正解である。
 少女は、ナターリア・フルエアーズ(なたーりあ・ふるえあーず)
 シェヘラザードの油断をさそい、注意をそらす為の仕込みである。
 依頼の成功を目前にした、このタイミング。
 誰もが油断するこの瞬間に、その油断につけこもうとする者達がいた。

 そう、シェヘラザードがナタ―リアから再び視線を外した、その時。
 白い仮面をつけた黒装束の男達が物陰から現れる。
 そして、タイミングを伺っていたローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)のタイミングを更にずらしての奇襲。
 適当な理想をでっちあげてのネバーランドからの支援。
 そして、それを囮にしてのローグによる二段構えの襲撃。
 タイミングも、もっとも油断する時を選んだ。
 依頼が終わるタイミングを狙うつもりだったが、こんな絶好のタイミングを逃す手はなかった。
 そう思える程、最高の瞬間だった。

「油断しすぎだな……!」

 殺すつもりはない。
 ローグの依頼主の目的は、それではないからだ。
 だが、意識は刈り取らせてもらう。
 ナタ―リアが動き、ローグのヒプノシスが発動しようとした、その時。

「残念だけど」
「そうはいかない」

 北都が、涼介が、シリウスが……シェヘラザードに意識を傾けていた全員がシェヘラザードを助ける為に動き仮面の男達に、そしてナタ―リアやローグに向けて攻撃を放つ。
 そう、どのタイミングでも関係などない。
 狙われているのが分かりきっている状況で、シェヘラザードを一人で放置しておくわけがないのだから。

「くっ……失敗か!」

 タイミングを当初の計画通りにするべきだった……とはローグは思わない。
 今のタイミングはおそらくそれよりもずっと、最高のタイミングだった。
 これで失敗したのであれば、どのタイミングでも無理だったのだろう。

「引くぞ!」

 ナタ―リアに声をかけ、ローグは素早く撤退を選択する。
 失敗した以上、長く留まる理由は一つもない。

「今のが刺客、だったのか?」

 涼介は小さく呟き、ローグの消えた方向を見る。
 どうやら、撤退したようだ。
 そして、それと同時……重たげな音が響いていく。
 それは、古代呪術研究所の最奥の扉が開く音。
 強い光の漏れる最奥の部屋にあったのは、複数の人影。
 その中央に立つ姿を見て、シェヘラザードはぐっと拳を握りしめる。

「……会いたかった、わ。シェヘラ」
「久しぶり、ドニア。こんな形では会いたくなかったわ」

 そこに居た少女の名はドニアザード・アズラーン。
 シェヘラザードの幼馴染であり……今は、敵対する仲である。