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汝、己が正義を信じるや? ~善意の在処~

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汝、己が正義を信じるや? ~善意の在処~

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■幕間:機晶姫

 事件からしばらくして久瀬の部屋を訪れる者たちがいた。
 今回の事件に関係した面々である。
「おかげでクウとの約束は守れなかったな」
 佐野が久瀬の姿を見て言った。
 彼の視線は久瀬の手に向けられている。
「クウはお礼言ってたよね」
「です〜」
 アニスとルナが佐野を励ますように言葉を続けた。
 同じ気持ちだったのだろう。クエスティーナも続いた。
「本当です。皆さんがいてくれたから良かったものの、いなかったらどうなっていたか――」
 言葉の端々には棘があるように感じられる。
 それが事実だというようにサイアスが言った。
「良心の呵責があるなら、なおさら慎重になれ」
「なんでそれを……」
「アルクラントたちから聞いた。件の幼馴染が倒れたのは久瀬のせいじゃない、が自分で自分を責めているってのは聞いていれば分かる」
 両腕を組んでいる姿から怒っているのがありありと見てとれた。
 クエスティーナに視線を送っているあたり、彼女のことを気にかけてのことなのだろう。周りの気持ちも理解しろと言いたいのかもしれない。
「あたしはそういう馬鹿も嫌いじゃないけどねー」
「情熱的よね」
 セレンフィリティに賛同するように彼女のパートナー、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が続いた。
 シルフィアが隣に立つアルクラントに耳打ちする。
「アル君はああいう無茶しちゃだめだからね」
「私がそんなことするわけないじゃないか」
(ああ、うん。迂闊なことをしようと考えてたなんて言えないなこれは)
「……ふうん」
 ジッと見つめられるのが苦しくなったのか、アルクラントが久瀬に声をかけた。
「義肢にはしないのかい?」
「悩んでるよ。『彼女と同じ腕』になるって考えると嬉しくもあるっていうのは、歪んでるかもしれないね」
 久瀬が肘から先のなくなった腕を上げて言う。
「結局、私は彼女のために何もできなかったね」
 それは誰に対しての言葉なのか。
 ライアーなのか、幼馴染なのか、その場にいる誰にも理解はできなかった。
「ところでなぜわしらは呼ばれたのかのう?」
 ジョージの疑問に久瀬は答えた。
「ここにいない人にも後日伝わる話なのですが、最近ライアーさんの住んでいた近くの町で『機械が暴走する事件』が起きているようです。もしかしたら皆さんにも関係するかもしれないと思ってお伝えしておこうかと」
 それと、と真面目な顔で久瀬は口を開いた。
「パラミタ大陸崩壊の兆しかわかりませんが、封じられていた魔物が蘇るなどといった話も耳にします。一部では不穏な動きを見せている組織もあるようです。気をつけてくださいね」
「もちろん気をつけますが、久瀬先生はこれからどうするんです?」
「そうですねえ。とりあえずはゆっくりと休むとしますよ」
 すでに失われている手を振るように肘から先のなくなった腕を左右に振った。