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第4章 食べてキノコ

「……あ、ぃうぇえー……」
「え?」
「おー…… か、きくぅ……」
「柿、食う?」
「くぅ、けぇ、こ……」
 キノコを食べていたかと思ったら、突如口を開いたエメリヤンに結和は首を傾げる。
 しかしすぐ、それが何なのかに思い至る。
「もしかして……発声練習?」
 結和の言葉にこくこくと頷こうとするが、はっと動きを止めると口を開けるエメリヤン。
「ぉ、そぉう、だ、よ……」
「何か言いたい事があるなら私もがっ」
 口を塞がれた。
 その真剣なエメリヤンの表情に、結和もつられて真顔になる。
「そうなの? じゃあ、私も協力するから頑張ろうねっ」
「ぁ……い」

 異変はエメリヤンだけではなかった。
(あ、れ……?)
 歌菜は、体の奥から湧き上がる衝動と戦っていた。
 甘えたい。羽純くんに。
 でもダメ! そんなの子供っぽい!
 ああ、でもでも……くやしいっ!
「……あのね」
「ん?」
「もっと、寄り添ってもいい?」
「え?」
「手、握っていい?」
「か、歌菜?」
 キノコを食べた途端いつもと違う彼女の様子に違和感を感じる羽純。
 慌ててキノコについて調べてみると……
(まさか……パラミタクヤシイタケ!?)
「……ん、幸せ……」
 驚いた羽純だが、ぎゅっと手を握り寄り添う歌菜を見ていると、別の感慨が浮かんでくる。
(歌菜は、俺に甘えたかったのか……)
「いいんだよ」
「んー?」
「もっと、俺に甘えても」
「……えへ」
 ゆっくりと、歌菜の背中を撫でる。
 二人の、落ち着いた時間が流れる……

「フハハハハ! それだけで済むと思うなよ!」
「もしゅーっ!」

 どこからか聞こえる高笑い。
 それと共に、ピンク色の煙が流れこむ。
 煙はバーベキュー会場を、歌菜たちを包む。

「あ、ン……っ。羽純くん、もっと、もう少し、近づいてもいい……?」
「こ、これ以上どうやって……」
「こ・れ、邪魔……」
「ちょ、歌菜……っ!」
 突然、歌菜が羽純の服のボタンを外し始めた。
 自分と羽純との間を妨げる邪魔者とでもいうように。
「いや、ここじゃ人目が……っ」
「あっ……羽純くん、そこ駄目っ……」
 そう言う羽純の手も気が付けば背中でない所に回っている。

 突然エスカレートし始めた歌菜と羽純に、周囲の人間は茫然と立ち尽くす。
「……サニーさん」
「なあに?」
 それに触発されたのか、三月がサニーに声をかける。
「抱き締めてもいい?」
「はーい」
 がばあっ!
「えっ……」
「ちょ、姉さん何やってるんだよ!」
 抱き着いた。
 サニーが、三月に。
「……んー? あはは、ごめん間違えちゃったー」
 ころころと笑って三月から離れるサニー。
 三月はというと、意外な展開に硬直している。
「じゃあ改めて……せーの」
「……ってさせるかー!」
 再び抱き着こうとするサニーから引き離すように、レインが三月にタックルする。
「わっ」
 がばあっ!
「え……わっ、サニーちゃんっ!?」
 勢い余ったサニーに抱き着かれたのは詩穂。
「んー……あれ、三月さんが詩穂さんになったー?」
 どこかとろんとした瞳で詩穂を見るサニー。
「おっかしいなぁ。いつの間に…… ここも、詩穂さん?」
「え?」
 サニーの手が詩穂の頬をぷにぷにとつつく。
「ここも……?」
「え、あ、きゃあっ」
 サニーの手が、次第に危険な所の確認に動き出す。
「こっちはー?」
「あっ……」

(す、すごい光景だ……上手くすれば僕も混じることができるんじゃ……っていやいやいや!)
 眼前で繰り広げられるものすごい光景に、赤面しつつも目が離せない人物がいた。
 風馬 弾。16歳の青い春真っ盛り。
「うわああ駄目だ駄目だ駄目だ! 思うだけでも駄目なんだってばー!」
 がんがんがん。
 地面に頭を打ち付ける。
「うふふ、そんなに思い詰めないで……はい、キノコを食べて落ち着きましょう」
「あ、ありがとう」
「うふふふふ」
 そんな弾に、ノエルがキノコの串を差し出す。
 当然、パラミタクヤシイタケ。
(うふふふふ…… 皆様、可哀想…… この様子はきっちり記録させていただきますわね)
 もう片方の手にあるのは、カメラ。
 既にキノコを食べてしまっていた彼女は、いけないことをやりたくて仕方なくなっていたのだ!

 バーベキュー会場は、次第に混乱に包まれていく……

「フハハハハ! さあ、キノコの時間の始まりだ!」
「もしゅしゅしゅー!」