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【ぷりかる】コンロンに潜む闇を払え

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【ぷりかる】コンロンに潜む闇を払え

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三章 攻勢

 北都たちの誘導で救出隊は屋敷の食堂に入っていく。
 薄暗く、三十人ほどが一斉に食事しても余りあるスペースを有する食堂は賑やかな雰囲気など感じさせず、不気味な静けさだけが支配していた。
「ん〜……楊霞お姉ちゃんがどこに行っちゃったんでしょうね〜……」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は不気味さに耐えきれず声を出しながら目を凝らすと、
「あ!」
 視線の先に見知った人影があり、思わず声を上げる。
 食堂の向こう側には楊霞が一人で棒立ちしていた。
 その様子に見てユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)は怪訝な顔をする。
「待ってヴァーナーさん、楊霞さんから離れて!」
 ユーリが呼び止めるが、ヴァーナーは話を聞かずに楊霞に近づき、
「楊霞お姉ちゃん!」
 楊霞にハグをした。
「今までどこ言ってたの? みんな心配してたんだよ?」
「……」
 抱きつきながら楊霞を見上げるが、楊霞に反応は無く、呆然と俯いている。
「……楊霞お姉ちゃん?」
 楊霞はヴァーナーを振り解くと、目のバイザー外してヴァーナーの目をジッと見つめる。
 赤い宝石のような瞳に魅入られてジッと見つめていると、
「あ、あれ……? 身体が……楊霞お姉ちゃ……」
 ヴァーナーは石になってしまった。
「な……楊霞さん何を!」
「どうも敵に操られてるみたいですねぇ……しかもあの目を見たら石化してしまう……でも、大丈夫ですよユーリちゃん、かーさまに良い案があるわ」
 そう言ってきたのはメアリア・ユリン(めありあ・ゆりん)だった。
「良い案とは?」
「敵に悟られるとまずいからぁ、ユーリちゃんと伽耶ちゃんで楊霞ちゃんを引きつけて!」
「だ、大丈夫ですかその作戦……」
 白鐘 伽耶(しらかね・かや)は不安そうな顔を見せる。
「大丈夫! 絶対大丈夫だから、かーさまを信じて」
「なんだか、不安しか残らないけど……行くよ伽耶さん」
「は、はい!」
 ユーリが先んじて楊霞に接近していき、伽耶が遅れてその後を追う。
「……」
 楊霞は黙ったまま正面を見つめ、スカートの裾を少し上げてシアータイツに挟んであった拳銃とナイフを取り出すと、銃口をユーリに向けて躊躇なく発砲した。
 発砲音と共にテーブルにあったワイングラスが砕け、辺りに四散する。
「あぶなっ!? 楊霞さん、目を覚まして!」
「しっかりしてください楊霞さん!」
 二人は拳銃が使えない懐まで飛び込むと、楊霞はナイフを振るいながら数歩後ずさる。
「母様! 早く作戦を実行してください! 目を見れない相手との戦闘なんてそんなに時間稼げないよ!」
「まさか……僕たちをただ石化させたかっただけなんて言わないですよね……?」
「……ぜ、ぜんぜんそんなことないですぅ! これでまた石化の書のページが増えるとか全然思ってないですぅ!」
 伽耶の追求にメアリアはそっぽを向いてしまう。
「うわああああ! やっぱりそうだったんだぁ!」
 ユーリが叫んでいると、楊霞は地面を蹴ってユーリの懐に飛び込み、
「しまっ……!」
 ユーリは咄嗟に楊霞の目を見てしまい、楊霞は白い歯を見せて獲物を捕らえた獣のような表情を見せ──ユーリは足下から石化していくのを感じた。
「ユーリさん!」
 伽耶が叫ぶのに反応するように楊霞は伽耶の目を見つめる。
「うあ……ああ……」
 伽耶は自分の足が動かなくなったのを感じると、徐々に足下から石になっていき、石像になってしまった。
「ユーリちゃんと伽耶ちゃんの石化が見れるなんて……メアリアちゃんすごい!」
 二人の惨状を目の当たりにしてフユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)は空気の読めない発言をし、
「はうぅ……素晴らし石化ですぅ……さ、真面目に仕事しますよぅ。ガーゴイル!」
 メアリアはしばし恍惚とした表情を浮かべるとガーゴイルを呼び寄せた。
「楊霞ちゃんを拘束しなさいですぅ! スコリアちゃんは石化で楊霞ちゃんを動けなくしてください!」
「うん、スコリア頑張るよ!」
 ガーゴイルの突撃に合わせてスコリアも楊霞に接近していく。
「……」
 楊霞はガーゴイルに向けて発砲するが石で出来ているガーゴイルはその身を砕きながらも真っ直ぐに突神し、楊霞は床を転がるように回避してガーゴイルは壁に激突した。
「もらったー!」
 瓦礫が飛び散り、楊霞が瓦礫を手で払っているとスコリアが飛び込むようにさざれ石の短刀を振るう。
「っ!」
 叫び声に反応して楊霞は身体を捻るが、切っ先が楊霞の腕をかすめてほのかに血が滲んだ。
「ふっふっふ、この短刀で切られた人はもれなく石になるんだよ! これで楊霞ちゃんも暴れられなく……」
 スコリアのセリフを中断するように楊霞の拳銃が発砲音を響かせ、スコリア足下に穴が空いた。
「わっ!? ちょ……なんで!? なんで石にならないの?」
「石化させる能力を持っている楊霞に石化の耐性があっても不思議ではないでしょう?」
 スコリアの疑問に答えたのは、大勢の忍を従えてやってきた紅玉だった。
「本当は楊霞一人でも問題なさそうだけど……このまま一気に潰させてもらうわ……楊霞」
「……はい」
「これから貴方は相手の攻撃を回避しちゃダメよ? むしろ攻撃されたなら自ら当たりにいきなさい。でも自分からの攻撃は忘れないようにね?」
「……了解です」
 この返事に紅玉はニイッと口角を吊り上げる。
「さあ、これで捨て身の肉人形の出来上がり。あなた達に楊霞を殺せるかしら?」
「殺す必要なんて無いわ。動きを止めて、あんただけ攻撃すればいいだけなんだから」
 そう言って前に出たのは宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)だった。
「あらあら、そんなこと私たちが黙って見てると思うのかしら?」
 紅玉が手で合図を送ると、忍たち数人が一斉に祥子に向かって刃を振り下ろす。が、その刃は銃声と共にへし折れて、祥子に届くことはなかった。
「サポートは任せて欲しいアル。祥子ちゃん、早く動きを止めに言って欲しいアル」
 食堂のどこからかチムチム・リー(ちむちむ・りー)の声が聞こえた。
「感謝するわ!」
 祥子は叫ぶなり疾風迅雷の速さで楊霞に近づいていき、
「オレ達も続くぞサビク!」
「分かってる!」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)が後に続いた。
「狙撃してる奴とあの女を殺しなさい!」
 紅玉が命令を飛ばすと、忍たちは弾丸が飛んできた方向からチムチムがいた方向を割り出し、一斉に襲いかかる。
「さすがに見つかっちゃうアルね……でも、ただでやられるわけにはいかないアル」
 チムチムは光学迷彩を解除すると、被っていたキノコハットを深く被りキノコの胞子を頭上に舞い上がらせた。
「く……!」
 忍たちはその胞子から逃れるように後ろに飛び退り、その隙にチムチムは再び光学迷彩で姿を隠してしまう。
「何をやっているのあなた達は! 楊霞! その女を迎撃しなさい」
「了解……」
 楊霞はシリウスの目を見つめる。
「くそ! 厄介だなあの目は!」
 すぐさま目を逸らすがシリウスの右手は徐々に石化していき、動かなくなっていく。
「サビク、治してくれ」
「まったく、すぐに治るからといって敵の攻撃に注意しないのは問題があると」
「分かったから早くしろって!」
 サビクの小言を打ち切りると、サビクはレプリカコーラルリーフをシリウスの前に出すと、シリウスの右手から侵攻していた石化はまるで水で流すように消えて無くなってしまう。
 忍たちはチムチムの相手をするのをやめて、シリウスたちに向かって刀を振り下ろす。
「邪魔だどけぇ!」
 シリウスは剣で刀を受け止めると、力任せに剣を振るって忍を吹き飛ばし、
「そんな攻撃でボクたちは止められないよ!」
 サビクは刀が届く前にレプリカコーラルリーフで忍の胴を突き刺した。
「祥子、オレ達は雑魚を潰してから行くからお前は楊霞を頼む」
 祥子は無言で頷いて、シリウスとサビクは足を止めて周りを囲む忍び達の相手をする。
 忍たちは一斉に飛びかかるが、その横っ腹をチムチムの狙撃で阻害される。
「オラァ!」
 その隙を狙ってシリウスとサビクは剣と槍を振るって忍たちを吹き飛ばす。
「来るなら全力で来い! こっちはあんな楊霞見せられてイライラしてるんだからよぉ!」
 叫んだ瞬間、シリウス・ヴァンガードCが発動しシリウスの服装が魔法少女を連想させるような姿へと変わり、
「っしゃあ! 一気にいくぞ!」
 叫ぶなり、シリウスは床を踏み壊す勢いで忍たちに接近し、一太刀浴びせる。
「……!」
 忍達は何をされたのかも分からぬまま、崩れ落ちてしまう。
「……」
 それを見た楊霞は銃を構えるが、
「させないよ!」
 突然、何者かに銃を弾かれるとチムチムと同じく光学迷彩で姿を隠していたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が楊霞の正面から抱きついてみせる。
「な……! さっきのゆる族は囮か!」
「そういうこと。……わわっ! よ、楊霞さん暴れないでよ!」
 楊霞はレキの拘束から逃れようと、全力で身体を振り回す。
「しょ、祥子さん! 早く来てください! このままじゃ……」
「分かってる!」
 祥子は素早く楊霞の背中に回りこむと金剛力を発揮して、楊霞の腕ごとホールドした。
 怪力を発揮している祥子の力には楊霞も抵抗できなくなり、動きが小さくなっていく。
「なら、僕も協力するよ!」
 そう言って飛びだしてきたのは遠藤平吉に扮した二十面相だった。
 二十面相は楊霞の足下にしがみつき、いよいよ楊霞は身体を動かせる部分を全て拘束されてしまう。
「僕だよ……平吉だよ……店のみんなもお客さんも楊霞君の事を待ってる……君の居場所はこんな高飛車で高慢ちきな屋敷じゃない! メイド喫茶『バーボンハウス』だ!」
「そうよ! あなたはこんなことをする子じゃないはずよ、目を覚ましなさい楊霞!」
「そうですよ! こんなの楊霞さんらしくないです! 戻って来てください!」
「つまらねえ催眠に負けるんじゃねえ! オレたちにはお前がついてるだろうが!」
「楊霞さん!」
「う……うう……」
 楊霞は初めて表情を歪めて、苦しそうに呻き、下を向き二十面相は自分から楊霞に目を合わせる。
「な、なにしてるの君!? 目を合わせたら石になっちゃうんだよ!?」
 レキが声を荒げるが、二十面相はそれでも楊霞の目を見つめ続ける。
「大丈夫……これで僕が石になれば……楊霞君の動きは止められるんだから……」
 二十面相は楊霞の足をガッチリとホールドしたまま石になった。
 膝から下が動かなくなり、楊霞は困惑したように眉間にシワを寄せる。
 その姿を見て紅玉が小さく舌打ちをした。
「もういい、直接私があいつらを殺せば済む話。拘束に専念している相手を殺すなど造作もない事よ」
「紅玉様、恐れながら申し上げます」
 忍者装束を着こんで、敵に紛れ込んでいた利家が跪いて紅玉に声をかける。
「なにかしら?」
「あの小僧、得体の知れない術を使うとの事です、地下にいる女どもがしきりに話題にしておりました。その名前が確か平吉……うかつに手を出せば面倒な事になるかも知れません……ここは我々が」
「そう……それは困ったわね……それと、訊いていいかしら?」
「なんでしょう?」
 利家は跪いている体勢から顔を上げると、紅玉は短刀の切っ先を利家に向ける。
「貴方はだぁれ?」
「っ!?」
 紅玉は短刀を振り下ろし、利家は咄嗟に避ける。
「……どこで気付いた?」
 利家は変装を解くと、身構えて紅玉と対峙する。
「忍は私に進言したりしないわ。仕える者は主の命令に従えばいいのだから」
「なるほど……それは失敗だったな……楊霞さんはどうすれば戻る?」
「さあ? 私を倒せば何かヒントが出るかもしれないわよ?」
「そうかい、それならてめえをぶちのめしてヒント聞き出してやるよ!」
 二人の間に割って入り、朝霧 垂(あさぎり・しづり)は紅玉に向けて百獣の剣を振り下ろす!
「くっ!?」
 風を巻きこむような強引な太刀筋は屋敷の床を叩き割り、欠片が紅玉の頬をかすめて血が滲む。
「残念、もう不意打ちは失敗。もう、そんな大振りが当たることは無いわ」
「そうかい? でもな剣てのは腕だけ振り回せばスピードが上がるってわけじゃないんだぜ?」
 垂はニヤリと笑みを浮かべるとゴッドスピードを使って、紅玉に接近するとたたらを踏んで、剣を斜めに切り下ろす。紅玉は咄嗟に短刀で剣の機動を流しながら転がるように後退する。
「ちっ……! あなたたち、何をしているの! 早くこいつを始末しなさい!」
 紅玉の命令で忍たちは飛び込むように垂に接近し、クナイを投げ、刀を振り下ろしてくる。
 だが、垂は忍たちを無視して紅玉に再び接近を試みる。飛んで来るクナイは垂の顔に直撃するというその瞬間、発砲音とともに叩き落ちてしまう。
「させないよ! 楊霞さんは返してもらうんだから!」
 レキは叫びながら黄昏の星輝銃を構えながら忍たちの刀に向かって引き金を引く。何度も銃声が響き渡り忍者たちの刀は弾き飛ばされてしまう。
「やれやれ……まさか、忍者たちが人形のように喋らないとは……利家の様子を見ていなければ、我も同じ失敗をするところだった……まあ、今は正攻法で臨むとしよう」
 テレジアはかぎ爪を構えて垂とは反対側から紅玉を挟撃するようにして、攻撃を始める。
「くぅっ! まさか……まだ鼠が隠れてるとは……!」
 垂の一撃必殺の太刀筋にテレジアの細かい連撃が加わり、紅玉はジリジリと後退し逃げ場を失っていく。
「……」
 忍の集団はその数を半分に割いて、紅玉の援護に向かうが、
「邪魔を」
「するなぁっ!」
 テレジアと垂の牽制で身動きが取れなくなる。
「いよいよ王手という感じですねぇ……それなら、こちらもダメ押しと行きましょうかねぇ」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は忍に囲まれながら不敵な笑みを浮かべる。
 武器を失った忍たちは体術でレティシアに数人がかりで襲いかかるが、
「無駄ですねぇ」
 レティシアは影縫いのクナイを投げ込む。
 クナイは忍の影に命中すると、忍は身体の異変から動きを一瞬止めると、レティシアは
魔障覆滅を使って忍たちの視界から消えて見せ、背後に回りこみさざれ石の短刀で忍たちの背中に素早く傷をつける。
「……!」
 忍たちは自分の身体の異変に気づき、手の平を見つめると徐々に石になっていることに気付いた。が、時すでに遅く身体はあっという間に石化してしまった。
「よし……これで一丁あがりですねぇ。ミスティさん、そっちはどうですかねぇ?」
 レティシアはミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)に声をかける。
「こっちは問題無いわ。魔眼なんて言われてるから心配してたけど、症状は普通の石化と同じみたい」
 そう言いながらミスティは石にされたユーリたちの石化を解消していく。
 ユーリたちはしばらくぼおっと中空を見ながら、その場で立ち尽くしていた。
「これは……大丈夫なんですかねぇ?」
「石化の後遺症です。しばらくすれば元に戻るから、問題ないわ……他に異常な症状も無いみたいだし」
「それならいいんですけどねぇ。ほら、もうすぐ決着がつきますねぇ」
 言いながらレティシアは垂たちの戦いに目を向ける。
「隙有りだ!」
「くぅ……!」
 二人の猛攻に疲弊しきった紅玉はテレジアの攻撃で体勢を崩し、
「もらったああああああああああああああ!」
 垂は剣を薙ぎ払い紅玉は短刀で受け止めるが衝撃を殺し切れず、壁に背中を叩きつけてしまう。
「う……玄白様……逃げ、て……」
 紅玉は何かを掴むように手を伸ばすと、その手を下ろして気を失ってしまう。
「……ここは? 僕はいったい……?」
 それと代わるように楊霞は頭を押さえながら喋り始め、ハッと顔を青ざめさせて顔を覆う。
「ば、バイザーはどこですか? なんで僕はバイザーを外して……こんな……」
「お、落ち着いて楊霞さん、バイザーならほら……」
 ユーリはバイザーを拾い、楊霞は慌てて目を隠す。
「もう隠しちゃうの? 楊霞お姉ちゃんの目、綺麗なのに勿体ないよ」
 ヴァーナーは残念そうな声を漏らす。
「見てしまったんですか?」
「うん! 凄く綺麗だったよ!」
 ヴァーナーがニコニコと答えると、楊霞は頭を下げる。
「申し訳ありません! 皆さん、私のせいで迷惑をかけてしまって……」
「そんな……いいんだよ、別に誰も気にしてないから」
「そうだよ、困った時はお互いさまだよ?」
 ユーリとヴァーナーは笑顔を向けるが楊霞は申し訳なさそうに俯いたままだ。
「おまえらなぁ……それじゃあ楊霞が納得出来ないって言ってるんだよ」
 垂は前に出て来て、
「はぅ!」
 楊霞の頭にゲンコツを見舞った。
「お前、メイドを目指しているならもっと自分の事を大切にしろ! 命を粗末にする行動をとられて俺達が喜ぶと思ってんのか!?」
「申し訳ありません……故郷の問題に皆様を巻き込むのは気が退けて……」
 その言葉にユーリはため息をつく。
「それにな、お前には一緒に働いている仲間。共に戦った仲間が居るだろ! もっと仲間を信じろ!! 人一人の力は、お前が思っているほど強くは無いんだからな……」
「そうですね……本当にそうです。今回のことで本当に痛感しました……でも、まだ私にはやることがあるんです……皆さん、今度は一緒に来てくれますか?」
 楊霞の問いに皆は揃って首肯し、
「……皆さん、本当にありがとうございました。玄白の場所までご案内します。……もう僕は一人じゃないんですね」
 楊霞は静かに笑みを浮かべて玄白のいる地下へと向かった。