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リアクション
■幕間:機晶技術
ケヒ、ケヒヒと笑うカボチャとそれを抱きしめて幸せそうに歩く女性をセリーナ・ペクテイリス(せりーな・ぺくていりす)は笑顔で見つめていた。
広場には楽しそうに駆け回る子供の姿もある。
リース・エンデルフィア(りーす・えんでるふぃあ)と待ち合わせをしていたセリーナは大時計のある街の中央広場のベンチに腰かけていた。
ナディム・ガーランド(なでぃむ・がーらんど)がさっきまで一緒だったが、彼は最近この街で起きているという機械の暴走事故を調べるために席を外している。といっても広場にいる街の人に聞きまわっているだけなのでセリーナからも見える位置にいた。
「あら?」
セリーナはベンチの脇に止めておいた電動車椅子に視線を向ける。
気のせいか位置が変わっているように見えた。
だが特に異常は見当たらないし、近くに誰かがいるということもない。
「気のせいかしらね」
しばらく待っていると空からセリーナが姿を現した。
箒に乗っている姿は魔女か魔法使いのようである。
「セリーナさんっ! お待たせしました。大丈夫ですか!?」
セリーナの目の前で急回転し地上へと降り立つ。
彼女のことを心配しているのだろう。リースは忙しくなく口を動かした。
「どうしたのリースちゃん?」
「街の東の方で騒ぎがあったみたいだから心配になっちゃって。機械の暴走事故が多いって話も聞いちゃったし、私心配で……ふう」
深呼吸をしてから続けた。
「セリーナさん電動車椅子に乗ってたから暴走して大変なことに……ってあれ?」
リースは素朴な疑問を投げかけた。
「電動車椅子どこにあるんですか?」
「何を言ってるのリースちゃんたら。椅子ならここに――」
セリーナがベンチの脇に止めてあるはずの電動車椅子を見るが、そこにはなにもなかった。あれ、と思い広場を見渡すとカラカラと音を鳴らしながら前へ前へと勝手に進む電動車椅子の姿があった。
「ま、待ってーっ!!」
リースが声を上げて追いかけるが電動車椅子は徐々に車輪の回転を速めていく。すでにリースの足よりも速く動いていた。椅子の軌道の先、家族連れの姿があった。だが電動車椅子が彼らの元にぶつかることはなかった。
「あっぶねえな。お、リースじゃねえか。思ったより早かったな」
ナディムが電動車椅子を片手で持ち上げたのだ。
宙に浮いた車輪が空回りを続けている。
彼はセリーナの元まで歩み寄ると口を開いた。
「姫さんは大丈夫か?」
「おかげさまで。ありがとうね、ナディムちゃん」
「なら良かった。で、コイツの近くに誰かいなかったか?」
コイツというのは電動車椅子のことだろう。
すでに電源を切っているため勝手に動く様子はない。
「いなかったわ」
「いなかったと思います」
「そっか。だとすると例の暴走だろうな。見た感じ少しずつスピード上がってたようだし、エネルギー関係の異常だろう。コイツの動力ってたしか……」
ナディムの言葉に続いてリースが言った。
「機晶石ですよ」
「機晶技術を用いてるからあたりまえか」
二人はセリーナに視線を向ける。
「また暴走しないとも限らないので心配ですねえ」
「仕方ないか」
ナディムは言うとセリーナを抱きかかえた。
きゃっ、という可愛らしい悲鳴が二人の耳に届く。
リースはくすくすと笑い、ナディムは苦笑した。セリーナはされるがままである。
「まるでお姫様みたいね」
「姫さんだろ」
「違うわ。私は私だもの。ナディムちゃんは相変わらず面白い人ねぇ」
告げる彼女の表情はいつもと変わらない笑顔だった。
その後、彼らは確認のために街の人にも話を聞いた。返ってきたのは最近、騎士風の男や双子の少年を見かけるようになったというものだったが、機械の暴走事故が多発するようになってしばらくしてからということなので、事故とは無関係のようであった。
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