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■ある夫婦の一夜

暖かい部屋で。
【キャンドル】の優しい光が、若い夫婦を照らす。
博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)
リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)は、
ひとつのベッドで枕を並べていた。

「今日は雪が降ってるけど、博季くんと一緒だと、すごくあったかいよ」
リンネが、博季を抱きしめる。
「僕もですよ、リンネさん」
博季は、リンネの身体を抱きしめ返し、リンネの頭をくしゃりとなでる。
リンネの【アホ毛】のような髪が、博季の指先を通っていく。
そして、ふと、博季は、笑顔を向ける。

「改めて、ですけど。
僕、リンネさんのこと尊敬してるんですよ」
「え? どうしたの、博季くん」
照れくさそうに笑うリンネに、博季はゆっくりと続ける。
「僕は本気ですよ、リンネさん。
たとえば、いつも元気一杯な所」
リンネの青い瞳を間近で見つめつつ。
「……皆の先頭に立って、率先して頑張れる所。そんな頑張り屋さんな所」
「そんな、博季くんだって……」
「……誰よりも純粋で天真爛漫な所」
「もう、恥ずかしいよ」
「……優しい所」
順番に長所を挙げる博季に、リンネはくすぐったそうにする。
「……そして、それでいて飾らない所。驕らない所」
「褒めすぎ。そんな風に言われたら、照れちゃうよ」
リンネは、博季のおでこを軽く指でピンとはじいた。

「全部、本当のことですよ」
博季は、優しい笑みを返す。
「ピンと来なくてもいいんです。そこがリンネさんのいい所だから」
リンネの耳元に、そっと近づき、博季はささやく。
「これからも、リンネさんには、リンネさんでいてほしいんです。
僕が、世界で一番愛してるリンネさんでいてほしい。
前も言ったけど、リンネさんと結婚出来た事は僕の一番の誇りなんです。
リンネさんのおかげで僕は僕で居られるんです」
再び、目を合わせ、博季は笑みを浮かべる。

「この気持ちは、言葉だけじゃ伝えられないですね」
「うん、私も、博季くんへの想い、言葉だけじゃ伝えきれないよ」
リンネは優しく笑みを浮かべて、博季に優しく口づける。

お互いの心臓の音がごく近くに聞こえる。

共にいられる喜び、お互いの暖かさ。

(こうしている喜び。
こうしている時間。
これからもずっと過ごしていく時をかけて、
リンネさんへの愛を伝えたいな)
博季は、改めて、そう、決意した。

窓の外で、雪が、しんしんと、
2人の愛情のように、降り積もるのだった。