校長室
【ぷりかる】祖国の危機
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第六章 「ソフィアの父親が領民に慕われていたのなら反旗を翻した龍騎士の中にも味方に引きこめそうな者がいるだろうな」 「クーデターの経緯もわかるかもしれませんわね」 ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)とサルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)はペルムに入るなり、ペルム城を目指した。 「何処へ行くつもりだ!」 城へ通じる道に差し掛かったところで、見張りの兵から誰何の声がかかる。 「アントニヌス帝に話がある」 「今は重要な会議の期間だ。ここから先へは入れないぞ」 「あら、困りましたわね」 「急用なんだが」 「無理なものは無理だ」 武器を構える見張り兵たちにため息をつくと、二人はいったん街へ戻ることにする。 「警備に立っているのはすでにクーデター側の兵、ということか?」 「その可能性はありますわ」 サルガタナスは不可思議な籠を使い「ペルム地方でクーデーターが起きて一番得をするのは誰?」という紙を入れてヒントを待つことにした。 「失礼します」 森に入ったところで、突然兵士二人組が声をかけてきた。 「なんだ?」 身構えるジャジラッドに兵士が続ける。 「もしや、ソフィア様の……」 その言葉にジャジラッドとサルガタナスは顔を見合わせた。 「そうだ。ソフィアから簡単に話は聞いている」 「どうか、ご伝言を。今ペルム城はクーデターの勢力が強く外から入ることはできません。ですがアントニヌス帝は、オリカ様が無事に戻られれば立て直せるとお考えです」 「ほぅ」 「どうか、ソフィア様に伝えてください」 「分かった」 ジャジラッドの言葉を聞くと、兵は再び森の暗がりへと消えた。 「ペルム地方は皇帝直轄領のすぐ南ね……」 「次期皇帝が未定で各領に手が回らない事情を見越した謀反だろうな」 集まって来た情報を元に、ソフィアたちが本格的な打開案の検討を始める。 地図を広げながら呟いたルカルカにダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が頷く。 「チャンス到来って事か。もしかしたら、アントニヌス帝はテミストクレスの動きに気付いていて、ソフィアを百合園に入れたのかもね」 「たしかに、急な話ではあったな。おかげで皆と出会うことができたから良かったが」 ソフィアが考え込むようにしながら頷く。 「アントニヌス帝がペルムを離れた隙にテミストクレスが反旗を翻し、ソフィアの母親を石にして捕らえ、幽閉したということだな」 「クーデターを予測はしていたけれど、ティル・ナ・ノーグの魔女が想定外だった、ってとこかしら」 「なぜモルゴースがテミストクレスに付いたのかは、現時点では不明、か……」 ルカルカとダリルと共にソフィアは状況を整理する。 「ソフィア、アントニヌス帝はどんな方なんだ?」 「父上か? そうだな……厳しいところもあるが、冷静で優しい方だ。あまり派手なことは好まれない。昔から父上の周りには自然と兵士たちが集まっていたように思う」 「カリスマ性があるってことね。クーデターを仕掛けたものの、アントニヌス帝の力とそちらに付く龍騎士たちとのバランスでいったん膠着状態に陥ってるってところか」 「とはいえこの状態は長くは続かないだろう。なんとかソフィアの母親を助け出すしかないな」 「しかし、これ以上皆を巻き込むわけには……」 ダリルの言葉にソフィアは唇を噛む。 「大丈夫、皆結構強いのよ」 「作戦には俺達も参加しよう。とはいえ今回の情報から考えると幽霊城にも相当な数の兵がいる。援軍は必要だろうな」 「……そうだな」 意を決したソフィアは、強く頷くと顔を上げた。
▼担当マスター
花井詠巳
▼マスターコメント
こんにちは。花井です。 この度は「【ぷりかる】祖国の危機」にご参加いただきありがとうございました。 一部の方には称号を付けさせていただきました。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。