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リアクション
中央広場。
「クレープも、箱に入れて貰ったし、見晴らしの良いところで食べようか」
桐生 円(きりゅう・まどか)は恋人であるパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)に訊ねた。
「そうね」
パッフェルはクレープの入った箱をしっかり抱えながら言った。
二人は人混みを避けるために移動手段として借りた特別製の空飛ぶ箒に跨った。
「……パッフェル、用意は良い? 飛ぶよ?」
「大丈夫よ」
先頭の円は準備が出来たかどうか後ろのパッフェルに声をかけた。
パッフェルはクレープが入った箱の取っ手を左手でしっかりと掴み、右手を円の体に回し、しっかり準備完了。
「それじゃ、展望台まで行くよ!」
円は勢いよく飛び上がり、展望台に向かった。
展望台。
到着するなり二人仲良くベンチに座り、景色を楽しみながらクレープを食べる。
「パッフェル、どう?」
「美味しいわ。これ食べやすいし色んな味があって楽しい。可愛いベルも貰ったし」
パッフェルはクレープ屋『天使の羽』で円に買って貰ったプチロールクレープ詰めを食べていた。もちろん『天使の羽』オリジナルベルも気に入っている。
「でしょう。今日、新発売の商品なんだよ! 大勢の人に食べて貰いたいって事で一口サイズに作ったそうだよ。ちなみにこれも新商品でね、甘い味以外もあった方が良いだろうってメニューに加えられたみたいだよ」
ガレット片手に円はパッフェルの反応に大喜び。待ち合わせ時間よりも早く来てあらゆる情報を入手していたのだ。もちろんパッフェルのために。
クレープを食べ終わった所で
「よし、次はどんな物食べたいかな? せっかくだから限定物とか新商品がいいよね」
「……そうね」
円はパッフェルに訊ねる。やはり食べるのなら限定物や新商品が一番。
「となると」
良い場所を思いついた円はパッフェルと一緒に特別製の空飛ぶ箒に跨り、人混みを通過して目的の場所へ向かった。
それは
「次はここ!」
「……猫カフェ」
猫カフェ『にゃあカフェ』だ。
「そうだよ。ここのカップルケーキが対のベルの形でとても可愛いんだよ。飲み物も色々あるし。ハーブティーはここのオリジナルブレンドですっきりと癒しのある味わいなんだよ。みけねこと可愛い双子猫もいるよ」
円はまた予め入手した情報を披露する。
「……楽しそうね」
「じゃ、入ろう」
期待しているパッフェルを連れて円は入店した。
「……美味しいわ。円の言う通りこのハーブティー、すっきりしているけど癒される味わいね」
パッフェルはカップルケーキを食べながらハーブティーを飲んだ。
「ふふ、満足してくれてボクも嬉しいよ」
円はカップルケーキを食べながら満足そうにパッフェルを見ていた。
たっぷりと楽しんでから店を出た。
店を出てすぐ、
「そう言えば、同時に鳴らすと共鳴するんだよね。やってみようか」
円は銀のベルをおもむろに取り出した。
「……そうね」
パッフェルも金のベルを取り出した。
二人はベルを同時に鳴らし共鳴させた。
「んー、不思議で素敵な音だね。お互いの想いを生み深めるかぁ」
「……そうね」
目を閉じ、素敵な音に感動する円とパッフェル。
音が収まるなり円は目を開け、
「パッフェル、愛してるよ。来年もよろしくね」
改めて告白する。もう恋人ではあるけれど恥ずかしくて顔は真っ赤。
「こちらこそよろしく」
パッフェルは嬉しそうな笑顔で円の告白を受け取った。
商店街。
「……はぁ、カップルばっかだな」
瀬乃 和深(せの・かずみ)はイチャラブカップルに羨望の眼差しを向けていた。本日仲間に誘われ来た者の自分は隣が寂しい。
「……そうですね」
上守 流(かみもり・ながれ)も同じようにうなずいた。流は二人だけで来たかったのだが、本日は団体である。
「和深よ、我は祭り限定の菓子を共に食べたいぞ」
セドナ・アウレーリエ(せどな・あうれーりえ)は和深の腕にすがり付きおねだり。カップル限定の物をねだる辺り、関係の進展を狙っているが、他の仲間に邪魔されたため皆を振り回してやろうと考えていたり。
「兄さん、せっかくだから何か買ってよ!」
瀬乃 月琥(せの・つきこ)は妹の特権とばかりに和深の腕にすがり付きおねだりをする。月琥はセドナと流の水面下の争いを楽しんでいた。
「分かった分かった。何か買ってやるから。近くの店にでも入るか」
和深は騒がしい両腕にため息をついた。
「……そうですね。お店に入ってゆっくりどこを見て回るか考えてもいいですね」
流は和深のフォローをした。胸の内では、二人っきりになれなかった事にため息を吐いて。
「だな」
和深は流にうなずいた。ちなみに月琥は妹で見た目子供のセドナは保護者気分のため和深との関係に発展は無い。ただ、セドナはそれが不満。となるとカップル候補は流なのだが、記憶を取り戻す約束を果たすまで恋愛対象にしないと決めていて今のところ独り身の和深。
『にゃあカフェ』。
和深達は四人仲良く入店した。
和深はカップルケーキを二つ注文する事になった。和深と食べたがるセドナの分と見た目の可愛さと美味しそうな感じに興味を持った月琥の分だ。和深はカップルに提供しているケーキなのでエース達に事情を話し、何とかセドナと月琥のおねだりを通して貰った。
「うむ、これがカップルケーキか」
「へぇ〜、美味しそう」
セドナと月琥は一通りケーキを見た後、食した。
「……はぁ」
ため息をつく和深の前には二つのケーキ。セドナは和深と食べたがり月琥はあげると渡されたのだ。一人でカップルケーキの片方を二つ食べるのは少ししんどい。
「……一つ食べましょうか?」
和深の気持ちを察した流が手を差しのべた。
「いや、いい。せっかくの祭りだ、流は好きな物を食べろよ」
和深は笑いながら断った。自分はともかく仲間達には祭りを楽しんで貰いたいから。
「それでしたら、私はこれを。ちょうど食べてみたかったので」
流はそう言うなり和深の前にあるケーキを一つ取った。同じ片割れではあるがカップルケーキである事は同じだから。少しでもカップルを味わいたかったのだ。
「……ありがとう」
和深は片付ける量が減った事に礼を言った。
何やかんやでケーキを楽しんだ後、店を出た。すると月琥の新商品クレープが食べたい、セドナの空飛ぶ箒に乗りたいなどの我が儘に振り回されるも和深は二人の楽しそうな雰囲気にたまには付きやってやるかとしっかりと付き合った。流はそんな和深を何とかフォローしていた。
『にゃあカフェ』。
「二人共、デートは楽しんでいるかい?」
エースは一休みに来たメシエとリリアにデートの案配を訊ねた。
「えぇ。じゃがバターを食べて、メシエにこれを買って貰ったの。それに……」
リリアは遠足帰りの子供のように買って貰ったペンダントを見せたりと楽しそうにあれこれ話した。
リリアの話が終わったところで
「……こういうのはどうですか? 絆が深まればとカップルさんに提供しているんですが」
エオリアがカップルケーキをリリアの前に置いた。
「あら、可愛いじゃない! しかもこれって……メシエ!」
リリアはカップルケーキに猛烈に反応し、一緒に食べようとメシエに声をかけた。
「……本当に君は」
メシエは子供のようにはしゃぐリリアに呆れながらも可愛いと思いながら付き合った。
「飲み物はどうします?」
「任せるわ」
飲み物を訊ねるエオリアにリリアは適当に答えた。興味はすっかりカップルケーキに注がれ、飲み物どころではない。
「……紅茶でも用意しますね」
エオリアは笑みながら紅茶を用意しに行った。
「楽しんでいるようで良かったよ」
エースも仕事に戻った。
リリアとメシエはしばらく店で過ごしてからまた散策を始めた。途中、ロンリー者に会うも『野生の蹂躙』で“人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死ね”を実行していた。もちろん死なすような事はしてはいないが。
中華料理店。
「……それを食べるのか」
鋭峰はお茶で喉を潤した後、蓮華に訊ねた。ちなみに鋭峰が食事に選んだのは餃子一皿だけだった。
「はい、美味しいですよ。この辛さが堪らないんです!」
蓮華はにこにこと辛みたっぷりの真っ赤なチャーハンを目の前に明るく言い、食べ始めた。
食事中。
「……(はぁ、今こうしてプライベートで団長と二人だけで食事をしているなんて、あぁ、目の前に団長が)」
蓮華は赤色のチャーハンを口に運びながらチラリと鋭峰を見ては幸せを感じていた。歩き回るだけで終わると思っていただけに向き合って食事が出来るとは思いがけない幸せ。
食事が終わってもしばらく店で茶を飲んで過ごしてから店を出て夕方まで歩き回っていた。
「マイトさん、本日はお誘いありがとうございます」
イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)は隣に立つマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)に礼を言った。実は今年最後の腕試しにとキマク近辺に向かう予定だった所をマイトに恋活祭に誘われたのだ。
「いや、君とは戦闘ばかりだからこういう落ち着いた交流をするのもいいかと思ってね」
マイトは肩をすくめながら言った。
「確かに戦闘ばかりですわ。それにしても人が多いですわね」
イングリットはクスリと笑った後、あまりに多い客に眉を寄せた。
「それは心配無い。今日は英国紳士として最大限エスコートさせて頂くよ……宜しく頼む、レディ」
マイトは少々大げさに言うなりイングリットの手を取り、笑みを浮かべた。
「……こちらこそ宜しくお願いしますわ」
イングリットも笑みで答えた。マイトはイングリットが人混みでもみくちゃにならないようにエスコートをし、ベルを手に入れた後、マイトはイングリットが興味を示す場所へ案内した。その中には『にゃあカフェ』やクレープ屋『天使の羽』も含まれていた。
マイトは名目とはいえカップルという体裁である以上イングリットに釣り合うように頑張らなければと気を引き締めた。
二人にとって一番のイベントが舞い込む時まで存分に楽しんだ。
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