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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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「なんだか騒がしいねぇ。もっと、どこか静かに落ち着ける風呂はないものかなぁ〜」
 流れるお風呂沿いに観葉植物をかき分けて進みながら清泉 北都(いずみ・ほくと)がつぶやきました。ハーフパンツ一丁ですので、ちょっと葉っぱが痛いです。まるで探検ですね。ジャングル風呂の醍醐味です。
 それにしても、正月早々のんびりとお風呂に浸かれると聞いてやってきたのに、なんだか予想に反して騒がしいです。
 そんな騒ぎから離れるように、清泉北都は流れるお風呂沿いの遊歩道から離れていったのでした。
「こっち……?」
「ええっ!? そんな所へ……いいの?」
「ふふっ、誰も来はしないわよ」
 なんだか、茂みのむこうから女の子同士の艶っぽい会話が聞こえてきます。
「ええっと、むこうかなぁ〜」
 あわてて、進む方向をちょっと変えます。
 再び流れるお風呂が見えました。けれども、ちょっと細いです。支流でしょうか。
 ふと気づくと、黄色いピヨ隊長のお風呂に浮かべる玩具がスーッとお風呂を流れていきます。それに先導されるように、清泉北都は後をついていきました。
 すると、流れの先に、こぢんまりとした浴槽が見えてきました。そこには、たくさんの黄色いピヨの玩具が浮かんでいて水面を埋め尽くしていました。ピヨ風呂です。
「まさにぃ、秘湯!?」
 ピヨ風呂に浸かると、清泉北都はふうっと大きく息をつきました。くつろぎます。
「探して見るもんだねぇ〜。これはちょっと誰にも邪魔されたくないなぁ〜」
 禁猟区をかけて周囲を警戒すると、清泉北都はピヨ風呂を堪能しました。
 ときどき、茂みの奥から何やら艶めかしい吐息が聞こえてくるような気もしますが、なかったことにしましょう。今日は、お風呂を堪能しに来たのです。それにしても、ピヨ、可愛いよ、ピヨ。
 清泉北都がのんびりしていると、突然観葉植物がざわめきました。禁猟区が、危険を知らせます。
「うおぉぉぉぉ!?」
 バシャンという大きな水飛沫とピヨ飛沫を上げて、コア・ハーティオンが落ちてきました。身構えていたために清泉北都はうまく避けられましたが、ピヨたちは吹っ飛んで周囲に散らばってしまいました。
「なんてことぉ〜。邪魔するなら……消すよ?
「えっ、うおおおおぉぉ……」
 怒った清泉北都が、コア・ハーティオンを飛んできた方向へと投げ返しました。どうも、コア・ハーティオン、今日はなぜか動きが鈍いです。どこか錆び始めてでもいるのでしょうか。
 
    ★    ★    ★
 
「うふふふふ、ここなら、誰にも見つからないよね」
「えっ、でも……」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)に軽く手をとられてにじり寄られ、アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が頬を少し染めました。
 綾原さゆみは青いプリント柄のビキニを着ています。下は、横で紐で結ぶタイプです。いかにも、引っぱってくれという結び方をされています。
 アデリーヌ・シャントルイユの方は、そのはにかんだ表情とは対照的に、白のホルターネックのブラと、ハイレグのショーツが繋がった水着を着ています。左右が大きく切れ上がっているために、すらりとした足がよけいに長く見えていました。そこへ、綾原さゆみが自分の足を絡めます。
「んっ、こんな所に隠れてやがったか。黄色い鳥が盛大に吹っ飛んできたから、茂みにたくさん隠れていると思ったら、やっぱりだぜ。さあ、隠れてないで、このパンツーハットを被りな」
 現れたP級四天王が、そう言って二人にパンツーハットを差し出します。とんだお邪魔虫の登場でした。
「私とさゆみの大切な時間を邪魔するのでしたら、それ相応の代価を払っていただきますわ」
 有無をも言わせず、アデリーヌ・シャントルイユが天のいかづちをP級四天王の頭上に落としました。
「あかぐがは……」
 P級四天王の頭と手の中で、パンツーハットが灰になって崩れ落ちました。
「見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ!)」
 モヒカンがアフロになったP級四天王に、綾原さゆみが等活地獄を叩き込みました。
「みごとだ、P級四天王パンピカ番長にP級四天王パンツいちゃいちゃ番長よ……」
 あっけなく、P級四天王が吹っ飛んでいきました。
「さあ、もっと静かな場所に行きましょう」
 アデリーヌ・シャントルイユの腰に手を回すと、綾原さゆみが茂みのさらに奥へとむかって歩きだしました。
 
    ★    ★    ★
 
「最近さあ、ハーティオンったら、あたしとあんまり遊んでくれないのよ」
「そんなことはないと思いますよ」
 林檎風呂で、浮かんでいる林檎をツンツンとつつきながら言うラブ・リトルに、夢宮未来がフォローっぽいことを言いました。
「えー、未来はこの間ずっと一緒だったからそう思うだけだよー」
 えっと、軽く林檎を投げつけながら、ラブ・リトルが言いました。
「錯覚ですったらあ」
 ひょいと、飛んできた林檎を避けながら、夢宮未来が言いました。
 ぽっちゃんと、ラブ・リトルが投げた林檎が、お湯に落ちて水飛沫を上げます。
「危ねえ。なんて無防備なんだ。ほら、これを被っておけ。これさえ被っていれば、林檎が飛んできても頭を守れる優れもんだ」
 いつの間に林檎風呂に入っていたのか、Pモヒカン族が夢宮未来にパンツーハットを差し出しました。
「えっ、これって、頭に被って守る物なんですか?」
 素直に信じた夢宮未来が、ありがたくパンツーハットを受け取ります。
「あたし知らなかったなー。こうですね? いやー、危うく恥かくところでした。ラブちゃんも早く被らないと」
 パンツーハットをすっぽりと頭に被りながら、夢宮未来がラブ・リトルに言いました。
そんなわけないじゃない
「えっ? ええー!?」
 あっさりとラブ・リトルに否定されて、夢宮未来が声をあげます。
「これ嘘なんですか! お、女の子をだますなんて許せない!」
「そうよ、この変態、あっち行けー!!」
 ラブ・リトルが、Pモヒカン族に咆哮を浴びせました。怯んだところを、夢宮未来がアンボーン・テクニックで吹っ飛ばしました。
 
    ★    ★    ★
 
「む、この悲鳴は……。今行くぞ!」
 ラブ・リトルの咆哮を聞きつけて、コア・ハーティオンがぎくしゃくと声のした方向へとむかいました。
 さっきから吹っ飛ばされるは、お湯に浸かるわで少し身体の調子が悪いです。
「大丈夫か!」
 駆けつけたコア・ハーティオンでしたが、すでにPモヒカン族は退治されていた後でした。
「あ、ハーティオンさん、大丈夫です」
 夢宮未来が、コア・ハーティオンの方を振り返って言いました。その姿を見て、コア・ハーティオンががっくりと両手をついてうなだれます。すでに、夢宮未来は林檎マークのパンツを被っています。きっと、もうP級四天王林檎パンツ番長とかになってしまっているのでしょう。
「未来が……、未来が変態になってしまった……」
「ええっ、これは違います。違うんです!」
 あわてて、夢宮未来が被っていたパンツーハットをかなぐり捨てます。
「あーん、信じてください。立ちあがってくださいよお」
 必死に訴えますが、コア・ハーティオンはうなだれた姿勢のままです。
「こ、これは……」
 コア・ハーティオンの様子を見たラブ・リトルが唸りました。
「う、動けん……」
「錆びてるわね。油ささないと……」
 唸るコア・ハーティオンに、やっぱり自分がいないとダメだとラブ・リトルが小さく溜め息をつきました。