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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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    ★    ★    ★
 
「なんだか、騒がしいなあ」
 洗い場へとやってきた緋桜ケイが、バタバタと走り回るPモヒカン族たちを見て、ちょっと迷惑そうな顔をしました。
「まあ、絡んでこなけりゃ、ほっとくかあ」
 そうつぶやくと、緋桜ケイは洗い場でしっかりとかけ湯をしました。
 いきなり冷たい身体で湯船に入るのは身体によくありません。最低でも、手桶に五杯ほどのかけ湯をしてしっかりと身体を温めるべきです。それと、身体の汚れを流して、湯船に持ち込まないという意味もあります。
さてと、入るかな♪
 やっとお湯に浸かれると、緋桜ケイが笑顔で大風呂に近づきました。中央付近には、お湯の噴水がありますが、末端の方は湯煙でその全体像が分からないほど広い大浴槽です。いったい何人の人がどの辺に入っているのかも見当がつきません。それにしても、ちょっと噴水が以前と違う形をしているような気がします。記憶違いでしょうか?
あら、だめよ〜ケイ。年頃の女の子が恥ずかしいことしてちゃ。ちゃんと上も隠しなさい」
「えっ!?」
 湯船に浸かっていた赤いビキニの宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)にそう言われて、緋桜ケイがピタリと止まりました。
いや、別に上は……
 答えつつ、ちょっと恥ずかしくなって手ぶらをしつつ顔を赤らめます。
「いくらナイチチだからといって、むきだしじゃ、今暴れているPモヒカン族たちと大差ないわよ」
 何かの上に座っているのか、上半身をお湯の中から出した宇都宮祥子があらためて言いました。
「いや、今さら……」
 男だしという言葉を、緋桜ケイが言いかけました。
「何を言ってるのよ。このパラミタでは、見かけがすべてよ。中身は関係ないの」
 なおも、宇都宮祥子が力説しました。
「ははは、まあ、そうかもね」
 なんだか説明するのもおっくうになって、緋桜ケイは別の湯船を探しに行きました。
 
    ★    ★    ★
 
「ですから、お風呂に入るには、正しい作法が必要となるんですよ」
「これはまた御丁寧に」
 正座したP級四天王おパンツ礼儀作法番長に丁寧に説明されて、大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)たちがうんうんとうなずいていました。
 正座する大洞剛太郎を中心に、左右に正座したコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)がちょっと怪訝そうな顔をしながらもP級四天王の話を聞いていました。
「うむ、そうでありますな。日本男児としては、風呂にパンツを穿いて入るなど、不自然きわまりないとは思っておりました」
「そうでしょう、そうでしょう」
 大洞剛太郎の言葉に、P級四天王がしきりにうなずきます。
 とはいえ、コーディリア・ブラウンとしては、いかにも胡散臭いと思っています。男性用水着を着た大洞剛太郎にちょっと見てもらいたいなと、フリルやリボンのたくさんついた可愛い水着を着てきたのに、なんでそれを脱がなければならないのでしょうか。裸で露天風呂に入るなんて、おかしすぎます。
 鮎川望美に至っては、完全にP級四天王を疑っていました。それは、温泉レポーターとしては、裸の混浴というのがあるとは知っていますが、イルミンスールの大浴場は、いちおう水着着用推奨だったはずです。鮎川望美だって水着を着ています。なおかつ、頭にパンツを被るだなどという風習は、世界中のどこでも聞いたことがありません。やはり、パラミタ特有の文化なのでしょうか。
「とりあえず、さすがにここで脱ぐのはまずいでありますから、失礼して……」
 大洞剛太郎が、大風呂の湯船の中に入って、男性用水着を脱ぎました。
「郷に入っては郷に従えでありますよ」
 うながされて、仕方なくコーディリア・ブラウンも湯船の中でパンツを脱ぎます。頬染めてお湯の中でごそごそする姿が、ちょっと色っぽいです。
「すばらしいです。では、次にそれを頭に被ってください。これこそが、正式なお作法となります」
「うむ、こうでありますか」
 たいして逡巡することもなく、あっさりと大洞剛太郎がパンツを頭に被りました。
 大洞剛太郎がいたって真面目なので、仕方なくコーディリア・ブラウンもつきあいます。フリルのたくさんついたピンクのパンツは、確かにちょっと変わった帽子のようです。でも、これを羞恥プレイと言わなくてなんと言うのでしょうか。さっきまで穿いていたパンツなんですから。
 ねえと、コーディリア・ブラウンが鮎川望美の方を見ました。けれども、鮎川望美は真っ赤な顔で何やらもぞもぞしています。
「や、やっぱり無理! 勘弁してー」
 そう言って、脱いだパンツをその場に投げ捨てると、鮎川望美はダッシュでジャブジャブと湯を撥ね飛ばしながら逃げていきました。
「ああっ、望美様、見捨てないで……」
 コーディリア・ブラウンが思わず手をのばしましたが、鮎川望美は遠くの方へと行ってしまいました。思わず追いかけようかと思いましたが、大洞剛太郎の眼前で立ちあがりかけて、あわててまた湯船の中に飛び込みました。危なく、下を穿いてないのを忘れるところでした。
『――み、見られたかな』
 真っ赤になって、コーディリア・ブラウンが大洞剛太郎の方をチラリと見ました。逃げて行った鮎川望美は、どうやってお湯から出る気でしょうか。
「ところで、洗い場で身体を洗う際、頭はどうやって洗うのでありますか?」
 大洞剛太郎は、真面目にP級四天王に質問していたので、二人の行動にはあまり気づいていませんでした。
「パンツは身体の一部ですから、当然一緒に洗います。片時も外してはいけません」
 P級四天王の熱心な説明に、大洞剛太郎はうんうんとうなずくのでした。
「すばらしい。これからは、あなたをP級四天王パンツしきたり番長と呼ぶことにしましょう。そちらのあなたは、P級四天王パンティーハット番長です。特別に、先ほど逃げていってしまった方にも、P級四天王生脱ぎ番長の称号をさしあげましょう」
 鮎川望美のおいていったパンツをモヒカンに被せて、P級四天王が言いました。