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【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

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第3章 迷路の先に潜む

「そんな直線的な攻撃では当たりませんよ?」
 古城を囲む迷路のような城壁を進む中原 鞆絵(なかはら・ともえ)
 彼女は長期戦を予想して、体力を温存する戦い方をしていた。
 向かってきた≪アンデットナイト≫の攻撃を受け流しつつ、一撃を食わせて相手の体制を崩し制する。
「ふぅ……結構大変ですね」
 激しく動きまわっているわけではないが、絶え間ない敵の攻撃に少しずつ疲れは蓄積していく。
 すると、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が≪アンデットナイト≫を蹴散らしつつ、近づいてきた。
「あまり無理しちゃだめですよ。ここはお互いに助け合いながら戦いましょう」
「お気遣いありがとうございます。でも、まだまだいけますから!」
 笑顔でガッツポーズをとる鞆絵に、ルーシェリアも笑顔で返すしかなかった。
「えっと……リカインさん、そちらはどうですか?」
 ルーシェリアが背後の城壁を振り返ると、怒号のような声が聞えてくる。
「てやぁぁぁぁ!」
 マスコットキャラとして自称タヌキ(どう見てもア〇イ〇マ)になったリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が、気合を込めた一撃を叩きこむ。
 轟音と共に城壁に亀裂が入る。
「もうちょいっ!」
 リカインは飛び上がり、肉球のついた拳(前足)で城壁を思いっきり殴りつけた。
 すると、ようやく壁に人が通れる程度の穴が開く。
「これで先に――」
 通りぬけると、そこには敵が待ち構えていた。
 さっさと終わらせて、元の姿に戻りたいだけなのに……一向に終点は見えないままだ。
 カチンと来たリカインは一番近い敵を殴り飛ばす。
「邪魔する奴は殴り飛ばすわよ!」
「既に殴ってますよね」
 背後から追いかけてきたルーシェリアのツッコミが入った。
「いいから、さっさとぶっ壊して次進むわよ」
 ルーシェリアの横を駆け抜けたセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が【ホワイトアウト】を放つ。
 スキルで強化された猛吹雪は、地獄の業火をも消し去る勢いで≪アンデットナイト≫を氷漬けにしていく。
 その隙に先に進む生徒達。
「ふぁあ〜……睡眠時間が足らないわ」
 禁書 『フォークナー文書』(きんしょ・ふぉーくなーぶんしょ)は欠伸をかきながら、追い掛ける。
「なんで魔法少女だけ弱体化されないのか……この霧作った奴の好みかしら?  だとしたら、とんだ変態ね……セシルはどう思う?」
「今はそんなこと気にしなくていいのよ。犯人をブッ飛ばせば休めますから」 
「了解、今日は魔法少女として……つーか、魔法少女って歳でもないんだけど……」
 そう言いながらも、禁書 『フォークナー文書』は新たに向かってきた≪アンデットナイト≫の目の前を【シューティングスター☆彡】で塞ぐ。
「援護は任せて、私はこのまま壁破壊続行ね!」
 生徒達が頑張ってくれている間に、リカインは再び壁破壊に移る。
 渾身の力で何度も殴りつけ――ふと、すぐ横でふよふよしているケセラン・パサラン(けせらん・ぱさらん)の存在に気づいた。
「……」
「……」
 動きを止めてケセランを見つめるリカイン。
 その表情が徐々に青ざめていく。
 そして――
「うぎゃあああ! そんな目で私をみないでぇぇぇ!!」
「毛むくじゃらのどこに目があるんですか!?」
 またしてもツッコミを入れるルーシェリア。
 リカインは何やら嫌な記憶を蘇らしたようで、いきなり事が切れたように無言になっ地面に倒れてしまう。
「ちょ……鞆絵さん、リカインさんをお願いします!」
「かしこまりました」
 ルーシェリア白目を剥いているリカインを鞆絵に任せ、力を集中させた炎を纏う二本の剣で壁を破壊する。
「皆さん、行きますよ!」
 再び、壁を抜け、走り出した生徒達。
「起きてくださーい」
「い、一生、タヌ……」
 鞆絵に頬を叩かれたリカインは、何やらうわ言を口にしていた。