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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同時刻 迅竜 コンピュータルーム
 
「イコン以外の敵からも迅竜を物理的に守る。それが俺達の役目だ。だから安心して電子戦に専念してくれ」
 今日はいつもと違い、ブリッジではなくコンピュータルームに詰めているダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)に、クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)は言った。
 迅竜の砲術担当であるクローラは前回の教訓を活かし、コンピュータルームにも砲座を設置し、親衛隊員を各砲座に配備していた。
 更には相棒であるセリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)の連れてきた飛装兵たちも直接各砲座に座らせている。
 これにより合計六人の従者が一基ずつ二連機砲を担当する計算になる。
 クローラとセリオスは残りの火器を担当し、それによって前回よりも弾幕を厚くする作戦だ。
 ちなみに、副砲と主砲は艦橋の火器担当官――カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が担うことになっている。
 そして、ダリルは迅竜のメインコンピュータに四機のコンピュータを並列接続し、その前に座っていた。
 今回、ダリルはブリッジクルーとして通信や操舵を担当せず、得意とする電子戦に専念するのだ。
「このためもあり操縦を代わって貰った。感謝しないとな」
 気を電気信号に変えて飛ばし、眼前にある四機、そしてそれと接続された迅竜のメイン・コンピュータとリンクするダリル。
 ――『電脳支配』。
 自身のみが持つ固有の能力を発動したダリルは、思考を機械言語とし迅竜のコンピューターとリンクすることが可能となる。
 メイン・コンピュータとリンクしたダリルは人間には不可能な操作速度で、電信戦が可能となるのだ。
 ダリルがリンクするのを待っていたかのように、新たな通信が入る。
玖純 飛都(くすみ・ひさと)よりコンピュータルームへ』
「こちらコンピュータルーム。クローラ・テレスコピウム。どうした?」
『大規模な電子戦を行うと聞いて、オレたちも協力させてもらおうと思ってな』
 飛都はそこで一拍置くと、些か早口で語り始める。
『敵は量産型までそろってあれだけの動きをしていたことからして、オートパイロットシステムと似た働きをするシステムを乗せている可能性が高い。倫理上のタブーから封印されている生体ユニットかもしれん』
「なるほど。続けてくれ」
 クローラが頷くと、飛都は更に語る。
『仮にそうだとしたら、向こうがハッキングを仕掛けてきた時が好機だ。そこに以前鏖殺寺院を名乗る奴が使った、生体電流を操る方法――医学分野で研究が進んでいるとある方法でカウンターを試みる。操るまでは無理でも妨害はできるかもしれない』
 飛都に続いて彼のパートナーたる矢代 月視(やしろ・つくみ)も会話に参加する。
『――『生胞司電』からヒントを得たやり方でのカウンターですか。ハッキングしてくるということは向こうからこちらにつながりをつけることでもありますから可能ですね。確かに上手くいけば電子専用機体のみならず、それを使ってヴルカーンタイプにも影響を与えられるかもしれません』
 聞き入っているクローラに向けて、月視はこうも付け加えた。
『火砲型なら多くの情報を必要とし、外部と繋がる点も多く、しかもガネットに乗っていますから。同系統の機体なら同じ情報系統でしょうしね。少なくとも、こちらかも電子戦攻撃をしかければ、それだけ相手は対応に割かなければならない手間が増えるということ――最悪、効果がなかったとしても、相手の邪魔をすることぐらいはできるでしょう』
 説明を聞き終えたクローラはダリルに目線で確認を取る。
 目線での問いかけに対し、ダリルは即座に深く大きく頷いた。
「了解だ。その方法で電子戦攻撃を頼む」
 飛都たちが通信を終えると、しばしの静寂がコンピュータルームに戻る。
 静寂の中、ゆっくりと口を開くダリル。
「行くぞ。ウィザード級同士の勝負だ――」
 静かながら凄まじい闘志の感じられる声で呟くダリル。
 呼応するように四機コンピュータのディスプレイが煌々と輝き、その背後にある巨大なメイン・コンピュータが唸り声、あるいは地響きのような稼働音を立てる。
 こうして、傍目には静寂そのものでありながら、その実、凄まじく激しい戦い――ウィザード級ハッカー同士による世紀の大勝負が始まったのだった。