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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同日 戦闘終了後 迅竜 格納庫
 
 迅竜の格納庫には戦いを終えて戻ってきた機体が揃っていた。
 最初から迅竜に乗艦していた機体はもちろん、天御柱学院イコン部隊からも多くの機体が着艦している。
「蓮華さん、蓮華さん……蓮華さんってば!」
 鷹皇から降り立った松本 可奈(まつもと・かな)に幾度か呼びかけられ、盾竜から降りた蓮華は振り返った。
「お疲れ様。はい、疲れた時にはこれが良いよ」
 可奈は蓮華に紙コップを差し出す。
「ありがとう。さっそくいただくわ」
 紙コップを受け取ると、蓮華は一気に飲み干す。
「うん。ごちそうさま。やっぱり疲れた後に飲む冷えたミネラルウォーターは格別ね」
 微笑んで紙コップを返す蓮華。
 それを受け取ると、可奈も微笑みを返す。
「そう。なら良かったわ。また用意しとくわね」
 蓮華はブリッジに向かおうとしているようだ。
 きっと、盾竜の件で団長への感謝の言葉を伝えるべく、通信機を使わせてもらいに行くのだろう。
 だが、その背中を見ながら可奈が浮かべているのは、曖昧な微笑みだった。
 ――そう、何かひっかかるものを感じている時のような。
 その時、サルベージされたファスキナートルの整備を手伝う為に格納庫へと入って来た立花 宗茂(たちばな・むねしげ)が、ちょうど格納庫を出ようとしていた蓮華に一礼する。
「これはこれは、あの盾竜の乗り手にあられる御仁ですな。先程の戦いぶり、実に見事」
 それに敬礼する蓮華。
「ありがとう。あなたの仲間たちが搭乗するファスキナートルの戦いも素晴らしいものだったわ。現行機で“フリューゲル”と互角の空戦を繰り広げるとは流石の一言ね」
「お褒めの言葉、感謝致す。しかして、その機体も今は水浸し。早急に洗い流し、故障個所を修理してやらねば内部まで錆びて、せっかくの機体も台無しになってしまうわけですからな。私は海風や磯の匂いは決して嫌いではないのですがな、大切な機体が錆びるかもしれないとなると、中々に複雑ですな」
「海風や磯の匂い?」
「うむ。今回は海水に濡れた機体がとかく多かったせいか、それらが運び込まれたこの格納庫もその匂いが満ちておりましてな。まさに磯のようですな」
 すると蓮華は心の底から驚いたような顔で周囲を見回す。
「そう……? まあ、確かに、水没したり水飛沫を浴びたりした機体ばかりなのだから、あなたの言う通りなのかもしれないけど」
 ここで会話がひと段落すると、蓮華はもう一度宗茂に答礼する。
 そして、蓮華は今度こそ格納庫を出てブリッジへと歩いていった。
 一部始終を見ていた可奈は、事後処理を終えて盾竜から出てきたスティンガーを見つけると、小走りに駆け寄った。
「スティンガーさん!」
「どうした……?」
 可奈の様子から何かただならぬものを感じたスティンガーは、努めて冷静に問いかける。
「今、蓮華さんに飲み物を渡したんだけど……」
 そう言って紙コップを見せる可奈。
「中身はいつもの特製コーヒーだったのに、蓮華さん……全部飲んだ後に冷たいミネラルウォーターだ、って……。こんなのおかしいよ……疲れた時用に特別濃くしておいたのに……それに、これ……ホットコーヒーの入ってた紙コップなんだよ……」
 それを聞き、スティンガーはただ愕然とするしかなかった。
「蓮華……あいつまさか……」