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リアクション
「なっ――契約者達だ! マリア様を筆頭に契約者達が!」
「リーダーだ、リーダーに連絡しろっ!」
自然いっぱいのテーマパークことグリーパークの入園口で思わぬ来客達にグランツ教の狂信者、テロリスト達は慌てていた。
その目先にやってきていた来客達は、マリア・ラヴェルと協力してくれることになった協力者達だった。
「マリア様、我々は説明したとおりです。理解していただけませんでしたか?」
「人質を取ることが英断とは思えません。今ならまだ間に合います、やめてください」
少し低めのトーンでゆっくりとマリアは、入園口に居たテロリストの1人へ話す。
テロリストは、首を縦に振ることは無かった。
「……ごめんなさい!」
「まっ――りあさ……ま」
どこか辛辣な、残念そうな表情を浮かべながらマリアは、持っていた木の棒で男の腹部へと強く突いた。
男は音も無くその場に崩れ落ちた。
「マリアは統一国家神様への裏切りだっ!!」
口々にテロリストは叫ぶと、マリア達に対して警戒を強めたのだった。
「どうするんだ、マリアさん」
「うーん……このまま突進しましょうか」
皇 彼方(はなぶさ・かなた)の問いに、マリアはグリーンパークの奥を見た。
そちらには数人のテロリスト達がいまかと待ち構えている。
「待ってください」
「えっ」
マリアの背後から、叶 白竜(よう・ぱいろん)の落ち着いた声が飛んできた。
「今、突入されると人質に被害が出るかもしれません。説得が難しいとなると、自爆してくる危険もありますからね」
「なら、どうすれば……」
「機を待つのです」
困惑するマリアをよそに、白竜は籠手型HC弐式を取り出した。
すると、待ってましたと言わないばかりのタイミングで通信の音が鳴り響いた。
モニターにはゴシック体の文字が並ぶ。
あらかじめ斥候(せっこう)に出ていた黒崎 天音(くろさき・あまね)は、自然と一体になるかのように【クイーンアイシャ】と書かれた薔薇に身を潜めて居た。
白い花でありながら見方により赤、青と変わるため、迷彩服のように姿を消すのにはちょうど良い者となっていた。
「あー、こちら、A班。定期連絡、定期連絡」
茂みの向こう側、通路のほうからテロリストらしき男性の声が聞こえてきた。
天音はばれないように身を通路へと向け、耳を澄ませた。
「異常なし。ちなみに監視カメラの方は?」
『ああ、ばっちりだ。マリア様達は入園口で――おい、真っ暗になったぞ!?』
通信口の向こうから、テロリストの仲間達が慌てているのがわかる。
同時ににブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が静かに天音の元に戻ってきた。
その片手には、縦1メートルくらいはある大きなニッパーを持ち歩いていた。
「な……なんだそのでっかいものは」
「線を切ろうと思ってたらだな、この工具しかみつからんかった」
そう言って、ブルーズは大きなペンチを地面に投げ込んだ。
首尾はと聞くブルーズに、天音はうまくいっていることを伝えた。
「リーダーの発信元は最奥地の事務所からだ」
「『監視カメラ無効化完了、入園口から第1エリアまでテロリスト、30人あまり。うち人質は2カ所にとらわれている』ですか……」
白竜はゴシック体の文字を読み上げると、静かに腕を組み考え込んだ。
頭の中で、白竜はテロリスト達が取り得る行動を模索し、次の行動の判断を決めたのだった。
「ニキータと羅儀、人質救出作戦を許可。ただし、各自地雷や罠には気を付けること。入り口付近にはトラップが多数みられるとの情報がありました」
的確な指示と情報をほかの契約者達にも白竜は伝えていく。
「監視カメラや通信妨害に関しては我々がどうにかしておきましたので、問題ないでしょう」
「全員突入!!」
白竜はテレパシーと口頭で叫ぶと、マリア達は一斉に入園口へと向かった。
ニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)と世 羅儀(せい・らぎ)の2人は今かとその時を待っていた。
「合図がきたわ! 監視カメラも通信も大丈夫だそうよ」
「行きましょう!」
羅儀とニキータはそれぞれ武器を構えると、すぐ近くの従業員休憩所へと向かった。
普段は誰も入ることのない休憩所だが、ここは現在テロリスト達が10人ほど人質をとって立てこもっているのだった。
「おい、どうなってんだ!? 内線がつながらないぞ!」
「ぐっ……リーダーに直接連絡に行ってこい!」
ブルーズによって内線を切られることではテロリスト達は騒ぎ立てて居た。
しばらく待つと、1人のテロリストが慌てて飛び出してきた。
「今です」
「おま――」
羅儀の声と共にニキータはテロリストへ襲いかかると、背中から直接サンダークラップを与える。
テロリストは静かにその場に崩れ混んでしまった。
「さて、どうしましょう?」
「連絡手段もないみたいだから、突入しても大丈夫そうよ?」
羅儀とニキータは互いを見合うと、軽く頷くとドアの前に静かに近づいた。
「3・2・1……」
羅儀がドアノブに手をかけ、勢いよく開く。
「な、異端者だっ!!」
5人のテロリスト達が一斉にドアへと視線を向けると手に持っていた銃を素早く振り向ける。
激しい乾いた音と共に鉛の塊がまばらに2人を襲いかかる。
音が鳴り止むころには、発砲煙が部屋中を包み込み2人の姿は見えなくなっていた。
「ぐあああっ」
「どうした!?」
悲鳴が煙の中から上がる。
何も見えない状況も重なり、テロリストは次第に恐怖感にあおられていく。
部屋の出口を目指すが、背中に電撃が走りその場に崩れ混んでしまった。
「ふう……これで全部よ」
「そうですね」
羅儀はそう言うと、休憩室のドアを開ける。すると、煙は吸い込まれるように外へと出て行った。
すると、鉛の塊をすべて受け止めた『小熊のミーシャ』が立ち尽くしていた。
2人はこれによって、鉛の弾をうまく避けていたのだった。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます!!」
羅儀は、素早く人質に巻き付けられた縄をほどいていく。
のこり3人となった頃。強い物音と駆け走る足跡が部屋中に響いた。
「うわああああああああっ」
「しまった、逃げたわよっ!」
「人数を数え漏れていましたか……」
ニキータは慌てて声を上げ追いかける。
それを羅儀も慌てて追いかける。最悪の事態も考え、手元に機晶スナイパーライフルを抱えた。
が、2人が外に出ると地面にテロリストは倒れていた。
「ふう……危ないところだったね」
テロリストのそばには天音が立っていた。
たまたま様子を見た天音が出くわし、手刀で気絶させたのだった。
「さっ、早く人質を避難させましょ」
引き続き、ニキータ達はは人質を引き連れて入園口へと向かっていったのだった。
「そろったな、エーリカ、アルビダ」
エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)とアルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)はレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)の前に集まっていた。
「ジェラートもったいなかったなぁ〜」
「緊急時(エマージェンシー)だぞ?」
指を口元にあてて、残念そうにうなだれるレノアにエーリカはぴしゃりと言った。
それをみてアルビダが「そんなことをしている場合か」と、ジト目で2人を見た。
「コホン……アルビダは――」
エーリカはアルビダとレノアに作戦を告げる。
その後エーリカはそばに居た上社 唯識(かみやしろ・ゆしき)と戒 緋布斗(かい・ひふと)を見た。
「さて、両名はどうする?」
「正面の入り口からタイミングを見て、突入します。テロリスト達が逃げてくる可能性もあるので」
「ああ、そうだな。頼んだぞ」
唯識とアルビダは作戦を確認すると、各自分かれていった。
「お茶くらい出せないのかっ!?」
紅茶を所望したところテロリストに断られた、リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)は啖呵を切った。
人質が20人ほどとらわれたゲストハウス。しかし、こちらは少し状況が違っていた。
まず、人質がゲストハウスということもあり、ヴュルテンベルク連邦共和帝国の軍人・貴族などが集まっていたこと。
「ええい、うるさいっ。人質は人質らしくしてろ!」
「つまらんっ! どこぞの程度の低い政治家レベルの考えでテロなど起こすなっ、このバカヤロウ!」
なにより、先ほどから1人だけ、反抗的な人質が居たのだった。
数人のテロリスト達はリブロによってしばし説教をされていた。
「ぐぬぬ……言わせておけばこの女!」
テロリストの1人が縛られたリブロへ向かって警棒で殴りかかろうとした途端、勢いよく扉が開かれた。
「そこまでだ観念して武器を捨てろ!!」
エーリカの声が響き渡る。その手には銃が構えられていた。
「ちっ、内線がつながらなくなったのはこのためか!!」
10……20……25人のテロリスト達が、2階から、各部屋から鉄パイプや銃をもって部屋から出てきた。
あっという間にエーリカは囲まれる形となってしまった。
「……やはり隠れていたか」
エーリカが一息つぶやくと、突然2階の方から激しい爆音が鳴り響いた。
テロリストたちは一瞬そちらへと気を取られてしまう。
だが、その一瞬が命取りとなった。
「今だっ!!」
エーリカが叫ぶと。2階からはアルビダ。そして正面入り口からは唯識と緋布斗が突入してくる。
「うおおおお―――うわあああああああっ化け物になった!?」
正面出口から出るため緋布斗へと突っ込もうとしていたテロリスト達は慌てて、足取りを翻した。
緋布斗の鬼神力によって、普通の人間が角を生やし鬼のような姿になるのを目の当たりにして驚いたためだ。
しかし、逃げた先には唯識が待ち伏せており、テロリスト達へ子守歌をかけていく。
結果、唯識の前の前には数人のテロリストが冷たい床で眠ることとなった。
それでも、眠らず逃げ惑うテロリストに関しては――
「逃がしません!!」
緋布斗が、たまたまた持ち歩いていた「パラミタ植物図鑑」を逃げるテロリストの後頭部へと勢いよく振り下ろしていった。
重さ10キロはある大辞典であるため、その効果は抜群だった。
「よっし! これで全員片付いたな!」
「早く、私の縄をほどくのだ」
腰に手を当てて、満足げに誇っているアルビダにリブロは自分の縄をほどくように促す。
「ひぃいいっ」
「リブロ様と高官達を人質にとったその罪、粛清に値する!!」
一方でレノアは、徹底的に逃げ惑うテロリスト達を処分していた。
「さて、これですべて片付きましたな」
「いえ、脱出もどうやら困難だという話を聞いています」
服についたほこりをはたきながら言うリブロに、唯識は言った。
唯識が言うには外には地雷が設置している危険性があるとのことだった。
その情報は白竜から得た情報だったか、人質だったリブロはもちろん、もともとこの園内に居たエーリカ達には知り得なかった情報だった。
「それなら大丈夫だよっ!!」
突然明るい声で入ってきたのはエーリカだった。
「地雷ごと道を焼却してみたよ!」
「え?」
慌てて唯識達は外を見た。思わずその光景に唖然とした。
先ほどまで緑にあふれていたはずの風景が、入園口まで何もなくなっていた。
木々は燃え尽きて炭となって横たわっていたのだった。
「これは……いったい?」
「あらかじめ上空から偵察していたのでありますが、ワイヤートラップを見つけたため焼却してみたんだよ」
「……規模がおかしい」
焼却したというエーリカの言葉に緋布斗が思わずつぶやいた。
それもそのはず。燃やしたと言うよりはまるで爆弾を落としたような跡地に見えたからだ。
それほどまでに、広く焼却されているようだった。
「さあ脱出だ」
驚いている唯識達をよそに、リブロが先になって入園口へ向かって言った。
それに続いて、ゲストハウスにいた高官たちも脱出していく。
むろんその道に危険はすでに無くなっていた。
「……賠償金とか大丈夫なんでしょうか」
その後、ヴュルテンベルク連邦共和帝国にグリーンパークより損害賠償を求められ、問題になったりしたとかそれはまた別の話である。
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