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リアクション
「どきどき」
木々があふれる遊歩道の中、赤嶺 深優(あかみね・みゆ)は、鬼に見つからないか期待と緊張に心を弾ませていたのだった。
しかし、その横で手をつないでいるアレクサンダー・ブレイロック(あれくさんだー・ぶれいろっく)はそれどころではなかった。
アレクサンダーには緊張感などよりも、いつ襲われるかわからない恐怖感に襲われていた。
「どこかに子供が隠れてるはずだ探せ!!」
「きたです」
「逃げるよっ、深優ちゃん!」
木々の向こう側からテロリスト達の声が聞こえてくる。
アレクサンダーは深優の手を取り、さらに木々の奥へと走った。
「!」
「誰!」
木々の奥には煉瓦で作られたコンロや、木製のテーブルが並んでいた。
その中央にそびえる直径5メートルはありそうな大きな木、その周りにロープで手を縛られた子供達が座らされていた。
「ねえ、アレク。なんでみんなろーぷに、ぐるぐるまきにされているのです?」
「……鬼に捕まってしまうと、こうなっちゃうんだよ」
アレクサンダーは少し声を震わせながら言った。
テロリストのことなどのことを伏せ、鬼ごっこだとアレクサンダーは深優に教えていたのだった。
「お願い! このロープは外して!」
人質にとらわれていた、少女が涙を目元に浮かべながら懇願する。
「どうしよう……」
アレクサンダーは深優と人質にとらわれた少女達の顔を見比べた。
深優のお兄さんとして深優を守るべきだが、ここで少女達をこのままにしておいて良いのか。
「アレク、このひとたちたすけないと……おににたべられちゃうよ」
「うん! みんなのロープをほどくよ!」
深優の言葉に思わずアレクは笑みを浮かべて言った。
2人は急いでロープをほどいていく、「イナンナの加護」と「禁猟区」を使い、周りを警戒しながら。
ほどき終わった頃、アレクは何人かがここに近づいてきてることを察知し叫んだ。
「鬼がもうすぐ来るから、にげるよっ!!」
「わわ〜、おにだ〜」
深優はそう言うとホワイトアウトを使って、吹雪を吹かせたのだった。
「こっちで方向はあってるんだよな!?」
「そのはずですわ……」
猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)の問いかけにウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)は弱々しく答えた。
すでに歩き続けて1時間。人質を見つけるどころか、吹雪に巻き込まれ視界を奪われていた。
だが、その吹雪も一時の物で数分待っていると晴れ間が見えた。
しかも見えたのは晴れ間だけじゃなかった。
「おとーさん! 居たよ、奴らだ!」
勇平達の後ろから猪川 庵(いかわ・いおり)が叫んだ。
勇平とウイシア、エネスト・セイリッド(えねすと・せいりっど)が同時にそちらへ振り向く。
すると、そこには12人くらいの子供達が30人くらいのテロリスト達に追い詰められていた。
「ウイシア、イプシロン零型を頼む」
勇平はイプシロン
「ま、まった! 勇平殿、ここは拙者を使ってくださらないか!」
「勇平君は私を選んだのです。あなたはおとなしく、その辺で穴でも掘ってると良いですわ」
「ぬぬ……ウイシア殿のほうこそその辺で――」
顔を少し赤くし、慌てた様子でエネストは勇平に頼み込む。
そんなエネストに対しウイシアは、軽くあしらうように言った。
「あー、わかったわかった! エネストを使うからウイシアと庵は後ろから援護を頼む」
「納得いきませんわ……」
どこかうれしそうにするエネストを恨めしそうに見ながら、ウイシアは落胆の表情を浮かべたのだった。
「よーし、それじゃあはじめよかっ!」
庵は銃を構えるとテロリスト達に向けて、何発も連続で発射した。
その弾は、直撃はせずすべて地面に当たるが、テロリスト達の意識を引くには十分だった。
「ちっ、契約者達か!?」
テロリスト達は襲いかかる庵の弾幕に対応するように銃や剣をそれぞれ構えた。
構えた瞬間、勇平は間合いを詰め剣の姿となったエネストを素早く振るい、テロリスト達の武器を次々に切り捨てて行く。
同時に、エネストの引いた矢もテロリスト達の武器を無効化していく。
「ちっ、こっち来るな!! こいつらがどうなっても良いのか!」
「アレク!!」
深優は不安そうな表情で叫んだ。
アレクサンダーは、筋肉質な男に首元をつかまれ動けなくなっていた。
「ウイシ――」
「うちの子になにしてんだっ!!」
「へっ?」
勇平が慌てて、ウイシアに助けを求めようとしたとき、怒濤の声が響き渡った。
「がっ――」
男は短い悲鳴とともに崩れ落ちてしまった。
その後ろには居合い刀を手に持った、赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)が立っていた。
「パパだ〜っ!」
深優がうれしそうに霜月のもとに駆けつける。
その後ろではアレクサンダーがどこかほっと安堵した表情を浮かべる。
「親子……か?」
「みたいでござるな」
勇平とエネストはあっけにとられたように話した。
その隙を狙いテロリストが銃を構えてきているが、その場に崩れ落ちた。
「ぼさっと見てる場合じゃないよ、おとーさん!」
「そうですわ!」
庵とウイシアが、勇平と霜月に近づかないように弾幕を張る。
勇平と霜月は顔を見合わせると、再びテロリスト達に対峙するのだった。
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