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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

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賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
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リアクション

「……では団子とお茶で花見を始めましょうか。御姉様にはお酒を用意していますので。どうぞ」
 シートとテントを用意した後、冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は誘った泉 美緒(いずみ・みお)崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)にそれぞれ楽しめる物を用意したりと二人の間で小夜子は甲斐甲斐しく動いていた。
「ありがとう。しかし用意がいいわね」
 亜璃珠はお酌をする小夜子に礼を言った。
「誘った者ですから、用意は完璧ですよ。美緒、団子の味はどうですか。お茶は熱いですから気を付けて飲んで下さいね」
 小夜子は亜璃珠のお酌をしながら団子を食べる美緒にお茶を注ぐ。
「……はい。あの、お団子とても美味しいですわ。今夜はこんな美しい桜の下でお花見が出来て嬉しいですわ。お誘いありがとうございます」
 美緒は熱いお茶をそろりと受け取りながら嬉しそうに感想を言葉にする。
「どういたしまして。美緒が喜んでくれて私も嬉しいです」
 小夜子は恋人が喜ぶ姿を見られてもう満足そのもの。

 つまらないのはただ一人。
「…………はぁ、デートのついでみたいで面白くありませんわね。それなら……」
 不満を小さく口にする亜璃珠だ。妹のように可愛がっている女の子二人に囲まれて嬉しいのだが、少々物足りない。そこで亜璃珠は面白い事を閃いた。
「御姉様、どうしました?」
 つまらなさそうにしている亜璃珠に気付いた小夜子が訊ねた。
「……何でも無いわ。小夜子、あそこで美味しそうな物を販売しているから買って来て頂戴。お願いですわ」
 亜璃珠はまず小夜子を追い払うために亜璃珠は移動販売をしているマーガレットと元相の方を指さした。
「それは構いませんけど。美緒にも何か買って来ますね」
 小夜子はすくっと立ち上がり、買い物に行った。

 小夜子が行った事を確認してから亜璃珠はそそっと美緒にくっつき、
「……美緒、小夜子とは上手くいっているのかしら。今日、誘ったのはあの子だし。いつも何かとあなたを引っ張ってくれてるんじゃないかしら?」
 小夜子との案配を訊ね始める。このために小夜子を追い払ったのだ。
「はい。いつも優しいですわ。でも少し意地悪です」
 美緒は幸せそうに答えるも少しだけ困った表情になった。なぜなら恋活祭でされた意地悪を思い出したから。
「……それはね自分のして欲しい事をしているのよ。私、あの子と付き合いが長いから分かるの。あの子は美緒に意地悪されたいと」
 亜璃珠は妖艶に笑みながら声量を落として御姉様らしい応援を開始する。
「……あの、どういう事ですか?」
 さっぱり分からない美緒は首を傾げながら聞き返す。
「本来小夜子はかなりMっ気強……いえ、主導権を握られたがるタイプなのよ。大体は自分がされたいと思ってることをしようとする子なの、だからたまには美緒の方から攻めっ気を出してあげた方が楽しくなるわ。小夜子にもお花見を楽しんで貰いたいでしょう? ちょうどテントもある事だし、すぐに実践よ」
 亜璃珠は自分の知っている小夜子の事を話しながら素敵展開へと導こうとする。
「……はい。でもどうすれば……」
 天然の美緒は亜璃珠がどのような類の事を言っているのか分からないでいた。ただ、小夜子を楽しませる事があるのならしたいというぐらいの気持ちで。
「ふふふ、そのために私がいるのよ。まずは弱いところからよ。あの子は胸が弱いからそこから攻めてそのまま押し倒し……」
 あれこれと言葉にするには恥ずかしい事ばかりを説明する亜璃珠。
「……あ、あの」
 さすがの美緒もどのような類の話をしているのか分かったらしく顔を真っ赤にしてうつむいた。

 そこに買い物から戻って来た小夜子が乱入。
「御姉様、美緒に何を吹き込んでいるんですか!?」
 小夜子は美緒と亜璃珠の間に割り込み、ぎゅっと美緒に抱き付いて亜璃珠から守る。美緒の様子から亜璃珠がどのような類の話をしているか小夜子にはすぐに分かった。
「可愛い妹達が素敵なお花見を過ごせるようにお手伝いをしていたところよ。美緒ったら照れて本当にかわいい子よ」
 亜璃珠は肩をすくめながらさらりと言ってのけ、うつむき加減の美緒に笑む。
「美緒の分もありますよ。大丈夫ですか? 御姉様に何を吹き込まれたんですか」
 小夜子は美緒を解放し、買って来たクレープ、マーガレットスペシャルを美緒に渡しながら吹き込まれた事を聞き出そうとした。
「…………あの」
 美緒はクレープを受け取り、もじもじと亜璃珠から聞いた事を話した。
「……御姉様、美緒に少々刺激的な話はしないで下さい」
 話を聞いた小夜子はきっと亜璃珠をにらんだ。
「あら、事実でしょう。何か間違っていたらかしら」
 亜璃珠は小夜子のにらみもさらりと流してしまう。ドSなためか自分の言葉でどんなににらまれても気にならない。
「いえ、それは事実ですけど、ですけども……」
 小夜子は亜璃珠の切り返しにごにょごにょと言葉を濁らしてしまう。亜璃珠は間違った話は何もしていない。そこが辛い。間違っていればそれなりに反論する術があるのだが。
「……それなら実践すればどうかしら。必要ならお手伝いもするわよ」
 亜璃珠はちらりと美緒の方を見ながら言った。何もかも可愛い小夜子と美緒のためだ。
「……もう、御姉様」
 小夜子は声を上げて亜璃珠のこれ以上の発言を遮断する。胸の内では美緒が良ければしたいですよと思っていたり。
「それなら私は適当に楽しんでくるわ。買って来てくれたお菓子と一緒にね」
 亜璃珠は肩をすくめた後、酒と小夜子が調達して来た創作和菓子を持ってふらりと退散してしまった。自分は消えるから好きなようにやってと言わんばかりに。

 亜璃珠が行ってしまってすぐ
「……あの……わたくし、小夜子にもお花見を楽しんで貰いたくてだから……」
 うつむき加減の美緒は顔を真っ赤にして蚊が鳴くように囁く。恥ずかしくてたまらないが、小夜子が喜ぶならばと何とも可愛いいじらしさ。
「実践なんて無理なんかしなくていいですから。こうして美緒と過ごせるだけで十分です。照れている可愛い美緒も見れた事ですし」
 小夜子はうつむいている美緒を愛おしそうに見つめた後、気に懸けてくれたお礼とばかりに美緒の頬に口付けをした。
 その際、
「では、帰ってからお願いしますね?」
 耳元で囁いた。当然美緒は戸惑い顔を赤くしたままだった。

 小夜子と美緒を二人っきりにした亜璃珠は
「……はぁ、本当に風流な事ね」
 ベンチで創作和菓子と酒を楽しみながら夜光桜を楽しんでいた。