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村と温泉と音楽と

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村と温泉と音楽と

リアクション


プロローグ

「それでは瑛菜さん。温泉施設作りが六日後ですので、その施設のアイディアを三日後に、休養地と音楽の関係についてを五日後に、契約者の方たちに聞く場を設けますね」
 ひとまずの相談を終えて、ミナホ・リリィ(みなほ・りりぃ)熾月 瑛菜(しづき・えいな)に今後の日程を伝えます。
「了解。それまではこの村でゆっくりしておこうかな」
「少し前よりはいいけど瑛菜おねーちゃん相変わらず動きまわってるもんねー」
 こういう機会に休んどかないとと瑛菜のパートナーであるアテナ・リネア(あてな・りねあ)は言います。
「宿の方はいつもの部屋をとってありますので。ゆっくりしていてください」
「ありがとミナホ。あんたはこの後はどうするんだ?」
「ええと……ユニコーン――ラセン・シュトラールさんの所に行こうかと」
 微妙に気恥ずかしそうな感じでミナホは言う。
「ああ、そういえばミナホちゃんってばラセンちゃんに嫌われてるって話だったね」
「き、嫌われてるわけじゃないと思います……よ? ちょっと苦手意識を持たれているだけで……」
 アテナのからかいにミナホはそう返す。
「どっちにしろ仲良くしたいのに避けられてるのは一緒だよね」
「うぐっ……」
 図星なのかアテナの言葉にミナホはうなだれる。
「けど……ユニコーンか。確かあたしが倒れた時に世話になったんだったよね。礼を言っててくれない? そのうち自分でも会いに行くけど」
「別に大丈夫ですけど、それなら一緒に行きませんか?」
「んー……今はいいや。礼に行くのにいきなり行くのも何だし。……ミナホと一緒に行くと警戒されそうだし」
「あの……? 流石の私も泣きますよ?」
「ま、冗談はさておき。行くならさっさと行ったほうがいいんじゃないか? 仕事、そんなに暇じゃないんだろ?」
「うぅ……流されましたけど……瑛菜さんの言う通りなんでもう行きます」
 とぼとぼとミナホはウエルカムホームを出て行く。

「ミナホちゃん基本的に真面目だけど結構ノリがいいよね」
「ノリがいいというか子供っぽいというか……あれであたしより年上ってのが謎だ」
 ミナホがいなくなった後。瑛菜とアテナはこの村の村長のことをそう評する。
「ところで瑛菜おねーちゃん。ミナホちゃんさっき、村から出たことがないって言ってたけどさ」
「ああ、それが?」
「アテナたちのホームまで来たことあったよね?」
 瑛菜とアテナは別にこの村を拠点にしているわけじゃない。当然この村の外にある。
「一番最初、あたしらがミナホと会った時だね」
 ストリートミュージシャンとしての瑛菜を求めてミナホが瑛菜のもとを訪れてからそれなりの月日は経っていた。
「……どういうこと?」
「さぁね。気になるなら本人に聞けばいいじゃん」
「うぅ……瑛菜おねーちゃんが冷たい……」
「どう答えればいいんだよ……」
 甘えん坊のパートナーを宥めるのに瑛菜は少し苦労した。