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失われた絆 第2部 ~ゴアドー島の記憶喪失者たち~

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失われた絆 第2部 ~ゴアドー島の記憶喪失者たち~

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■開幕:最初の分岐点


 
 ゴアドー島にあるシャンバラ教導団の駐屯施設、その会議部屋では行方不明者の捜索および白骨事件の調査・解決を行うために集められた面々が揃っていた。
「現状で判明していることを伝える」
 長曽禰に促されてトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)がホワイトボードの前に立つ。彼は確認のとれた行方不明者の氏名、年齢、性別を言い、次いで発見された白骨のおおよその年齢と一致する部分が多いことを伝えた。
「――以上の理由から発見されている白骨は行方不明者のものであると考えられます。また残された遺留品をサイコメトリで調べた結果、同一犯による犯行なのが分かっています」
「犯人の顔は割れているのか?」
 夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が挙手し質問をする。
 トマスは首を横に振った。
「どれも犯行時での情報しか得られておらず、後ろ姿のみ確認ができました」
 彼は続けて容疑者の身長、年齢、服装などの特徴を上げていく。
 その内容から老人が犯人である、という見解だ。
「老人、か」
 月摘 怜奈(るとう・れな)が訝しんで眉根をひそめた。
「月摘。気になることでもあるか?」
「以前、長曽禰中佐には私が警視庁に勤めてた事はお話したかと思いますが、当時いたのが捜査一課……殺人事件を取り扱う部署です」
 彼女は経験からの考えを述べるつもりなのだろう。
 こくん、と長曽禰は頷いた。
 月摘はホワイトボードの前に進み出る。
「これだけ広範囲に現場を分けている理由は人目を避けるためでしょう」
「ワタシも見解に同意します。人目を避ける理由は犯行を続ける予定だからでしょう」
 ブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)の言葉に月摘は「はい」と答えた。
「捜査の方針としては容疑者らしき老人に関して聞き込み、またこれ以上犯行を行わせないように巡回警備、まだ発見されていない行方不明者の捜索をするべきだと考えます」
「それでいいだろう。他に誰かあるか?」
 スッと手を上げたのは草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)だ。
「それはそれとして……オリュンポスとかいう連中が何かしているらしいのじゃが……どうするかの?」
「オリュンポスかあ……」
 長曽禰が頭を掻いた。
 トマスが口を開く。
「駐屯している教導団員にも限りがあります。正直なところ無視したいところだけど……こほん。無視したいところですが、そういうわけにもいかないでしょう。捜査の進展具合を見ながら判断しても良いかと。実際に何かすると決まったわけでもありません」
 どうでしょうか、と長曽禰に視線を送る。
 顎を撫でながら苦笑すると長曽禰は口を開いた。
「そうだな。捜査を優先して皆には行動してもらおう。巡回警備の任にあたる者はオリュンポスの存在を頭に入れておいてくれ。何か問題があればすぐに連絡すること。以上、解散!」
 会議が終わり、各々が班分けを行い部屋を出て行った。
 トマスは部下を連れ立って郊外の使われていない建物の調査へ向かう。
 夜刀神たちは聞き込みのために各々街へと出払った。
「長曽禰……さん。あの子は?」
「ん、ああ。いちごの奴なら隣の部屋にいるよ。さすがに捜査内容を教えるわけにはいかないからな。協力者に面倒を見てもらってる」
「あの子の話していたことが気にかかっていて……」
 月摘の傍に控えていた杉田 玄白(すぎた・げんぱく)が銃型HC弐式を操作しながら告げた。
「怜奈は気にしすぎだとは思うんですが……」
「玄白は情報を――」
「ええ、捜査は怜奈にお任せします。私は情報まとめるだけで精一杯ですよ」
「良いコンビだな」
 それほどでも、と彼女は応えると皆と同じく会議室を後にした。