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【第四次架空大戦】ティル・ナ・ノーグ

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【第四次架空大戦】ティル・ナ・ノーグ

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03 試練を受ける


「なるほどねー」
 あとからやってきた勇者たちのうち小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が話を聞いて頷く。
「美羽さん、どうするんですか……?」
 グラディウスを後ろに控えさせながら、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)の問に美羽はきっぱりと答える。
「もちろん飲むわよ!」
「わ、私も飲みます!」
 それに釣られるかのように、未来が言う。
「未来!」
 鈿女が止める。
「無茶な事は言わないの。ハーティオンのいない今、貴方が泉の水を飲んだところで無駄に命を散らすだけよ。どう戦うのかは……皆が自分で決める事なのよ」
「でも……でも!! ハーティオンさんはいないけど! もういなけど! ハーティオンさんの分も戦うから! 止めないでも鈿女さん! 誰も飲まなくても!あたしが!あたしが……!!」
 未来のその叫びを聞いて、ラブが悲しそうな表情をする。
(そっか、ハーティオン……死んじゃったんだ……)
「で、どうするの?」
 ラブの問に、フレイが答える。
「当然飲む!」
 直情熱血ではフレイ・アスク(ふれい・あすく)は美羽以上。当然のごとく飲む選択しかなかった。それを見てアポロン・サン(あぽろん・さん)がベアトリーチェと一緒に不安そうな表情をしているが、美羽とフレイは気にしていないようだった。

(…………)
 それを遠くから眺めている中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は忌々しそうに舌打ちした。
(やはり、勇者の力など人類に持たせるべきではなかったのでしょうか……いえ、そもそも、勇者の力などこの世にあってはならなかったのかもしれませんわね……)
(ドレス、あなたもそう思いますか……)
 綾瀬の纏う漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が主に賛同の念を送る。
 そして、鴉に変身した魔王 ベリアル(まおう・べりある)が、不吉な鳴き声を上げる。妖精郷ティル・ナ・ノーグに相応しくない、黒い力がそこには満ちていた。

「面白いわ……私もも水を飲みます!」
 はっきりとそう告げたのは香 ローザ(じえん・ろーざ)。クロガネと同じ存在である香(ジエン)と同化した元エースパイロット、ローザリア・フォルクング。
「ローザ様……」
 その従者であるシェラ・リファール(しぇら・りふぁーる)もベアトリーチェやアポロンと同様に不安そうに見つめている。

「あんた……香?」
 ラブはローザを見て、すぐにその正体に気がついた。
「ちがう……なんか混じってるわね、あなた、何者?」
 それに対してローザは語る。
 敵に捕まった際、香と融合したことを――
「そう……なの……まあいいわ。ひとつ言っておくと、この水を飲むとあんたの中の香が分離する可能性がある。その結果、あんたがその実験の中で何か命にかかわるダメージを受けていたとしたら、助からないかもしれないわ。それでもいいの?」
「分離するまでに、かかる時間は?」
「普通なら、人の時間で十月はかかるわ。でも、勇者の力を使い過ぎたら、それはどんどん短くなる――そう覚えておくといいわ」
 その言葉に、ローザは覚悟を決めたようだった。
「飲みます――」
 そう、確かに告げた。

「あたしも飲むわよ」
 ジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)はそういったあと、機関銃のように言葉を発し続けた。
「こんな世界もういやよ! この世界から脱出するためなら、試練だろうとなんだろうと受けてやるわ――」
 それから、ずっと激しいスタンピードした牛の群れのように言葉が次々と飛び出てくるので、ラブは辟易して一つの魔法をかけた。
「沈黙の魔法――少し黙ってて♪ 事情は、今ハーティオンから聞いて知ってるけどね……」
 そう、ジヴァの母親たるイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が、前回の戦いで死んだ。そして、ジヴァは元からこの世界が現実ではないことを知っている。だからこそ、現実に戻ればまたイーリャに会えると確信しているのだ。


「やっと静かになった……もちろん、飲むぜ」
 猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)は、半身を失って意思が消え失せたように静かなセイファー・コントラクト(こんとらくと・せいふぁー)を気遣いながら、決意を秘めた言葉を紡ぐ。
 それは、一人の男としての言葉。少年は、物言わぬようになった彼女を見て、なんとしてでも元に戻してやろうと、そう決めたのだ。

「よし、それじゃあ飲みなさい!」
 ラブのその言葉に、勇者たちは泉の水を、一口飲んだ――

 ――そして彼らは光りに包まれた――