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正体不明の魔術師との対決準備?

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正体不明の魔術師との対決準備?

リアクション

 遺跡内部。

「あの二人と一緒に来たはずが、いつの間にか消えていますね」
 月詠 司(つくよみ・つかさ)は一緒に来た双子がいつの間にか消えている事に気付いた。
「歩き回っているうちにどこかで合流出来るって、それよりお宝探し開始よ。あの二人に負けないような物を見つけるのよ」
 シオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)は面白い物を拾ってくるだろう双子に負けない物を見つけたいと楽しむ事にはりきっていた。
「……お宝ですか」
 司は少しだけ渋い顔をした。またシオンによって何かに巻き込まれるのではと思っていたり。
「そうよ。お宝を手に入れてワタシは満足、ツカサも遺跡を探索出来て満足、でしょ?」
 シオンはここに向かう際に司の説得に使った言葉を繰り返した。
「それはそうですが」
 遺跡発掘や探索が趣味である司はうなずく事しか出来なかった。
「装置は真面目なヒト達に任せてワタシ達は消えたロズフェル兄弟を見つけて無茶しないように監視して……噂をすれば何とやら」
 シオンはここでローズ達と遊び終わった双子が歩いているのを発見し、駆け寄った。ちなみに監視というのは名目で真の目的は一緒に騒ぐ事である。
「二人共、どこに行っていたの? 何か面白い物あった?」
 シオンは何やら楽しそうな双子の様子から見て取り訊ねた。
「あったぞ。効果が高そうな素材」
「あとは訳が分からない薬」
 ヒスミは素材をキスミは謎の薬を手にシオンに自慢。
「薬ねぇ。それ見せて」
 薬に興味を引かれたシオン。
「確かに分からない物だけど飲む物じゃないみたいね。それなら……」
 『博識』を持つシオンは正体は分からないものの経口物ではないと判断は出来た。それだけ分かれば十分。後は実際に試して効果を確かめるだけ。
「えい♪」
 シオンは近くで白骨化した研究者を調査している司に薬を振りかけた。
「ちょ、シオンくん!?」
 驚く司。その姿は徐々に消え、姿形影さえも見えなくなった。
「おわっ、消えたぞ」
「どこにもいねぇ」
 双子は驚き、周囲をきょろきょろと見回した。
「ツカサ?」
 シオンも周囲に呼びかける。
 少しして
「……ふぅ」
 ため息を吐きながら司が姿を現した。
「ツカサ、どこに行ってたの?」
「分かりません。薬をかけられた時、身体や意識が分解された感じがしました。それ以外は何にも……」
 訊ねるシオンに司は首を傾げながら答えた。
「へぇ、すげぇ薬なんだな」
「作り方、調べてみないとな。それでそっちは何か見つけたか?」
 双子は凄い薬に関心する。そしてキスミはシオンに訊ねた。
「……そうねぇ、この箱なんかどう? とても面白い匂いがする」
 『トレジャーセンス』を持つシオンは周囲からお宝の匂いを嗅ぎ付けた末、転がる中ぐらいの怪しげな箱を発見し、拾った。
「面白い匂いはするな」
「明らかに怪しいけど、ただの箱だよな?」
 双子はじっとシオンの手にある箱をまじまじと見つめる。すっかりシオンと意気投合している。
「しかもたっぷりと物が入っている音がして気になるのよ。ツカサ、ちょっと読み取るとかして中身確認してみてよ」
 シオンは箱を振るも何も音がしない。そのためますます中身が気になり、司に確認を頼む。
「……分かりました。貸して下さい」
 『考古学』を持つ司は外観を見てかなり手を加えられた物だと確認してから箱に触れ、『サイコメトリ』を使った。
「これは開けない方がいいですよ。中に魔法実験に使用された獣の骨が入っているようです。開けると骨から獣が具現化し魔法実験で植え付けられた恨みから開けた人を襲うみたいです。他にも何か入れているみたいですけど、そこまでは読み取れませんでした」
 司は箱の中に入っている罠につて話した。
「……恨みが罠となって開ける者をはめて中に入っている物を守っているという事ね……となればやる事は一つ。開けるだけよ」
 箱について知るなりシオンはますます愉快そうな顔に。絶対に中身を確認する気満々である。
「だよな」
「開けられるか?」
 シオンと同じく中身がとても気になる双子。
「……鍵が掛かってる」
 シオンは普通に箱を開けようとするがピクリとも動かない。
「マジかよ」
「鍵、ぶっ壊せねぇか?」
 ここで諦めたくない双子はシオンに何とか出来ないかと訴える。何とかしたいのはシオンも山々であるがどうにもいかない。

 その時、頭上から
「自分に任せるでありますよ!」
 高らかに響く吹雪の声。

「こ、この声は!?」
 嫌な記憶を呼び起こす聞き覚えのある声に顔色を変える双子。
「お宝ハンター登場でありますよ!」
 吹雪はさっそうと天井近くの窓から登場し、皆の前に降り立った。
「おいおい、どこから登場してんだよ!」
「面白い登場だな」
 双子は予想外の吹雪の登場にツッコミを入れた。
「面白そうだからと言ってあれは真似しないのよ」
 双子の背後から普通に侵入したコルセアが現れた。
「……今は真似なんかしねぇよ。というか、どうしているんだよ」
「何しに来たんだ」
 双子は今までの事から吹雪達に嫌な顔をする。
「当然、お宝を持ち帰るためでありますよ! 本日は何もしないので安心するであります!」
 吹雪は両手を上げ、双子に危害を加えるつもりは無いと意思表示をする。
「……ついでに護衛とかもするから」
 とコルセアが吹雪の発言に付け加えた。
「……それならいいけど。なぁ、キスミ」
「おう」
 双子はとりあえず、吹雪達の発言を信じる事に。
「その箱を自分に渡すでありますよ!」
 吹雪もまた『トレジャーセンス』でシオンが持つ箱がお宝であると感じ取っていた。
「それじゃ、お願い♪」
 シオンは箱を吹雪に託した。
「解錠完了であります!」
 吹雪は『ピッキング』で見事に鍵を開け、後はふたを開けるだけ。
「お見事♪」
 シオンは吹雪の素晴らしい手際に拍手をして褒め称えてから箱を受け取った。
「それで何が入っているでありますか?」
 みんなが箱を開けたがっている事しか知らない吹雪は肝心な事をここで訊ねた。
「それを今から確かめるの。ツカサ、早速開けてみて♪」
 シオンは出て来る罠と中身を確かめるために箱を司に託そうとする。
「……」
 情報を共有している司は当然託されまいとする。
 しかし、諦めないシオンは司に気付かれないように使役のペンをちらりと出し、双子に見せて合図を送る。シオンの意図を知った双子は了解とばかりに軽く悪戯笑みを浮かべた。
 そして、
「読み取ったのは昔の事だから何にも出ないかもしれねぇぞ」
 シオンから箱を奪い取り、清々しいほどわざとらしい笑顔で箱を押しつけようとするヒスミ。
「頼りにしてるんだ。頼む」
 キスミもわざとらしく顔を歪めながら訴える。
「……そう言われても」
 司は双子の相手で背後に迫るシオンに気付いていない。
「……♪」
 司の背後に近付いたシオンは一回だけ相手を使役させる事が出来る使役のペンで“ヒスミが持つ箱を開ける”と書いた。
 その途端、
「ちょっ、あぁあ」
 司は自分の意思とは関係なく手が動き、箱のふたを開けてしまう。何が起きているのか分からない司。シオンが使役のペンで双子に合図を送ったのはこれを成功させるために陽動をしてくれという事だったのだ。
 開けられた箱から出て来たのは、具現化したおぞましい獣達。
 当然、開けた司を標的として襲い始める。
「おお、何か出て来たぞ!」
「すげぇ!」
 双子は登場した獣達に目を輝かせていた。
「……このままにはしておけないわね」
 コルセアは『グラビティコントロール』で獣達を圧死させて実験台化している司を救って動物の骨を粉々に砕いた。
「……あ、ありがとうございます」
 司はほっと救ってくれたコルセアに礼を言った。