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【大罪転入生】物語の始まり

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【大罪転入生】物語の始まり

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 宵一、ザカコ、ヨルディアが先陣に立ち、ぺロ子達の道を切り開く。
「ふっ! すぃ! そいやっさ!!」
 細い丸太を巧みに操り、迫りくる蛮族。
「しかし、なんでまた丸太なんだ……?」
 それを見切りかわしていく宵一。
「ふんすっ!」
 その横から思いっきり跳躍してきた別の蛮族。手には成人男性の身長ほどはあるであろう丸太。
「そういうのもいるのか……!」
 突き立てるように落下してくる蛮族を跳躍して回避する。
「俺様はなぁ、お前のようなひょうひょうとしているのが大嫌いだ! 肉を食え! 肉を!」
 そして、なぜか怒られる。
「バーサク状態だと、怒りっぽくなるのか。いや、憤怒の化身のせいでもあるか。まぁ、どちらにしてもやることは一つ!」
 終焉剣アブソリュートを地面に突き立てる。すると、剣を中心に地面が凍りつきはじめる。
「くそっ! あいつやりやがって……!」
 蛮族達の足も凍り付いてその場に拘束される。宵一はその間に魂の迅龍に跨り空へ。
「てっとり早く怒りを鎮めるには……これだ!」
 ホワイトアウトを発動。地上に拘束されている蛮族達に吹雪が襲う!
「なんじゃこりゃぁぁ!!」
「……あれ、俺は一体……って、さぶっ!」
 体温低下と共に頭に上っていた血も冷めたのか、正気に戻る蛮族がちらほらと現れた。
「よし、これで――」
「一件落着? そう思っているのはテメェだけだぁ!!」
「っ!?」
 宵一を襲う横からの強い衝撃。その拍子に魂の迅龍から叩き落される。
「宵一さん!?」
「くそっ……!」
 宵一は瞬時に空中で体勢を立て直し、無事に着地する。
「大丈夫ですか!?」
 ザカコが敵を蹴散らし、宵一の元へ。
「あ、あぁ。だが、何が起きた……?」
「蛮族が跳躍したんですよ」
 指さす方向には先ほど宵一を叩き落したらしい蛮族の姿。
「結構な高さがあったはずだが……」
「それはですね……」
「空を飛びやがって……! 俺はそういうやつが……!」
 先ほどの蛮族が宵一達を視認すると、助走。そして、手にしていた長い丸太を地面に突き立てる。
「大嫌いなんだよぉ!!」
 そして、それをバネに跳躍。思いっきり飛んできた。
「なるほど……。棒高跳びの要領で飛んできたのか……」
「うらぁぁぁぁ!!」
 飛んできた蛮族……だが、その途中で突如現れた巨大な手に掴まれた。
「ふふふ、イケナイ子ですわね」
「すまない。ヨルディア。助かった」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
 巨大な手を召喚したのはヨルディア。巨大な手――女神の左手が掴んだ蛮族の精神力と生命力をズタズタに削ぎ落としていく。
「てめぇ! 何しやがる!」
 ヨルディアに蛮族達が殺到する。
「何って、お仕置きですわ。ふふふ……」
 不敵に笑うヨルディア。だが、蛮族達の足が止まる。
「な、なんだよ……こいつ……!」
 ヨルディアのアボミネーション。そのおぞましい気配に怖気づき始める。蛮族達。
「はっ! その程度知ったこと――」
「イケナイ子はどうなるか……分かっていますわよね?」
 怖気づかず突撃しようとした蛮族は女神の左手による巨大な手に掴まれる。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!」
「さぁ、次はどなたかしら……?」
「こ、こんなやつに、付き合ってられるか……!」
「逃げられると思っているのかしら?」
「ひっ!?」
 魔王の目で蛮族には逃げる事さえ許されない。
「ふふ……」
 さらに、そんな蛮族達に追い打ちをかけるように死霊の囁きを聞かせ、恐怖のどん底へと叩き落す。
「た、助けてくれぇぇーー!!」
「怖いよぉ! かあちゃーん!!」
 その恐怖のあまり怒りなど忘れたかのように悲鳴を上げる蛮族達。
「くそったれが……!」
「何か……言いましたか?」
「ぎゃあぁぁ!!」
 その恐怖に打ち勝って突撃しても巨大な手で精神力と生命力を削ぎ落とされる。逃げようにも魔王の目で逃げられず、その耳元で常に死霊にささやかれているような恐怖を与えられ続ける。その様子はまさに地獄絵図だった。
「……これはとても直視できるような光景ではありませんね」
「……魔王襲来。とでも言っておくべきか……」
 繰り広げられている様子を傍観するザカコと宵一。
「ですが、これで先への道は開けましたね」
「そうだな。二人に護衛を任せっきりにしてしまったが、大丈夫だろうか……?」

「…………」
「ちょっと……大丈夫なの?」
 先陣を切って戦う三人とは別にぺロ子とベル子を守る真言とリイム。瞬く間に周囲を蛮族達に囲まれていた。
「お任せください。ぺロ子さん達には指一本触れさせませんよ」
「僕達に任せるでふ」
「そ、そう? というか私はぺロ子などでは……!」
「ごちゃごちゃうるせぇー!!」
 しびれを切らした蛮族の一人が襲いかかってきた。
「危ないでふ!」
 それを瞬時に察知したリイムがお下がりくださいませ旦那様による立ち回りでぺロ子達を守る。
 そして、神狩りの剣で蛮族に威嚇攻撃を行う。
「ちっ! ぬいぐるみみたいなやつがいっちょ前に……!」
「遠慮はいらねぇ! やっちまえ!」
「女の子にも遠慮しないで攻撃するなんて大人気ないにゃー」
「私もいる事をお忘れなく」
 ベル子に向かってきた蛮族を真言がお引き取りくださいませと絶対領域を駆使して蛮族達の攻撃を阻止する。
「そんなこと言いつつもあなたは何もしないんですわね……」
「ここは二人に任せるにゃー」
「ふんっ! えぇい! ちょこまかと!」
 自在に振り回される丸太を素早い動きで翻弄しながら回避するリイム。
「退かないのなら、実力行使でふ!」
 回避に徹していたリイムが転身。お引き取りくださいませによる迎撃。
「ぐふっ!? こ、こんなやつに……」
 ゆっくり崩れ落ちる蛮族。
「致命傷にはなってないでふ。安心するでふよ」
「くそっ! かっこいい事してんじゃねぇ!」
 リイムへと襲いかかろうとした蛮族。だが、その途中で動きが止まる。
「な、なんだ!? 身体が……動かねぇ!」
「させませんよ?」
 真言の手から伸びるのは鋼糸……憂うフィルフィオーナが蛮族を拘束していた。
「こっちががら空きだぜぇ!」
 その間に別の蛮族がぺロ子達を狙う。
「予測済みですよ」
 憂うフィルフィオーナが不規則な軌道を描き、蛮族をあっという間に縛り上げる。
「さぁ、避けきれますか!」
 縦横無尽に飛び交う鋼糸。
「くそったれ!」
 一部の蛮族はその糸の動きを見切り回避や丸太で防御してみせる。
「ぐほっ!」
「僕もいるでふよ」
 だが、そこを狙ったかのようにリイムが攻撃し、蛮族達を沈めていく。
「その程度ではぺロ子さん達には指一本触れられませんよ?」
 あっという間に蛮族の包囲網を粉砕してみせた。

「そっちも終わったか」
 戦闘を終えた宵一達がぺロ子達と合流する。
「そちらも問題なく終わったみたいですね」
「中々に面白い戦闘スタイルでしたね」
「丸太を使って跳躍してくるとは正直思いもしなかった」
「そうですわね。はい、終わりましたわ」
「……お、おれは何を……。なにやらとてつもなく恐ろしい夢を見ていたような」
 ヨルディアが倒れた蛮族達や未だに恐怖で震えている蛮族達にオープンユアハート▽をかけ、精神状態を戻していく。
「気のせいですわ♪」
「あ、あぁ。そうか。それなら良いが……」
「さぁ、ここはあらかた片付きましたわ! さっさと憤怒の化身の元へ進むのですわ!」
「ぺロ子は楽で良いにゃぁ。あちしはそろそろ歩き疲れてきたにゃぁ」
「別に好きでこんなことになっているわけではないですわ! それとぺロ子ではねぇです!」
「でもまぁぺロ子さんの言うとおりです。時間をかけるわけには行きませんし、行きましょうか」
「そうだな」
「だからぺロ子じゃねぇですと何度言ったら分かるですかー!!」
 名前の事で喚くぺロ子をスルーして少しずつ憤怒の化身へと歩みを進める一行であった。 
「人の話を聞きやがれですわーー!!」