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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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「それで、この後キミはどうするつもりなのかな?」
 北都がこれまでから現在に話題を移した。
「……まだ決めていない。ただ、彼と一つになった事で彼がした事を知った。彼は多くの人を巻き込んで罪を生み出した。どうすれば、この罪を償えるのか……いるべき場所を失った自分が」
 ロズは淡々と抱える悩みを打ち明けた。
「贖罪ってもなぁ。だいたい融合したってだけでお前は魔術師じゃないし、贖罪の相手が直接いるわけでもない。あまり深く考えない方が……」
 シリウスは参ったなといった感じだが何とか力になろうとする。
「事件は確かに起きてはいたが、無事に解決する事も出来た。深く思い悩むほどじゃねぇよ」
 ベルクは軽い調子でシリウスと意見に加勢する。
「……しかし」
 ロズは納得出来ず、言葉を濁す。
「納得できないってなら、探すしかないんじゃないかな? 陳腐な言い方だけど、贖罪の方法を探すこと自体が贖罪……って考え方でさ」
 シリウスは肩をすくめた。
「贖罪を探す事が贖罪、か」
 ロズはシリウスの言葉を口の中で繰り返した。
「そうだ。あまり思い悩んで苦しむ事も無いと思う。ようやく元に戻る事が出来たのだから。自分の闇に苛まれるだけでなく、光にも目を向けるようにしたらどうかな」
 陽一はあえて気楽な調子で言う。
「……」
 考え込むロズ。
「どうしても気になるというのなら、いっそ、当人達に聞いてみては? 先程、話に出ました通りこの世界のお二人も未来体験や事件により互いを失いかけた事があります。貴方を作った人がどう生きてほしいと願ったか近い答えが聞けると思いますよ」
 リーブラがなかなか納得の様子を見せないロズにとある提案をする。
「こちらの世界はキミの世界とは違ってまだ子供だけどそれなりに参考にはなると思うよ」
 北都は少々口元に笑いを含みながら言った。今日も騒いでるだろう双子を脳裏に浮かべて。
「あぁ、考えてみよう」
 ロズはこくりとうなずいた。
「探すのはいいけど、償いたいという気持ちだけで動いてはダメだよ。それこそキミが生まれる原因にもなった事故と同じくなる危険性があるから。それに償う方法は一つじゃないしね。どう動くにしても『償いたい気持ち』が大事だと思うけど」
 北都は忠告を付け足した。
「それでお前には何かしたいとかは無いのか?」
 ベルクが頃合いを見計らって訊ねた。
「償い以外で、今朝、双子に会ったんでしょ。あの双子をどうしたいとか。世界は違うけど関わりはあるからキミにとっては大事じゃないかな」
 北都がベルクの言葉に重ねる。
「……どうと言われても。ただ生きていて欲しいとは思う。二人揃って。ずっと聞いた思い出話やこれまで見た別の世界の二人を見ると強く思う」
 ロズは言葉を選びながら話すのは、双子に生きて欲しいという思い。これまで見た双子の様子と自身が双子の片割れの死を切っ掛けに生み出された事から抱いたもの。
「……生きていて欲しい、か。それならあの双子が道を外さねぇよう教育していくっつーのが一番かもしれねぇな。身内として双子に過ちを起こさせないようにしてこの世界で後悔しないようお前が生を全うするように」
 ベルクは、ロズの出自からロズの答えに込められた思いを読み取っていた。
「ここに残って?」
 予想外の言葉に聞き返すロズ。
「キミがここの双子と一緒にいていもいいと思うならだけどね。償いを探すためと監視という事で」
 ベルクと同じ事を考えていた北都は加勢に入る。
「戻る場所がねぇんなら、それもいいんじゃないか? オレ達、知り合いがいる方が何かといいだろうし」
 シリウスも加わる。
「勿論、ずっとではなくてもいいですわ。貴方が納得する間だけで構いませんので」
 リーブラは予想外の事で戸惑っているだろうロズのフォローに回る。
「ここにいるというのなら精一杯、お力をお貸ししますよ!」
 フレンディスは握り拳を作り力強く言った。
「確かに知っている人がいるのは安心するが、これまで迷惑を掛けてその上……」
 ロズは魅力的な誘いに迷うもまだ心苦しい。ここにいる者達には多くの迷惑を掛けてしまったので。
「今更、そんな事は言うな。お前がいた世界があいつらの見た未来というか平行世界の一つに似ているならこちらでも起きうる可能性は十分にある。お前を生み出した世界を変える事は不可能だが、こちらはまだ間に合う」
 ベルクは何とかロズを説得しようとする。ベルクの未来改変の考えは、過去を変えてもそれは平行世界の一つが生まれるだけで自分達が居る現在は変わらないし変わっても自分達が気づく事はないというものだったり。
「そうさ。過去は変えられないが、未来は変えられる。ここにいてはどうだろうか?」
 陽一はそう言い、ロズに答えを求めた。

 一方。
「……過去は変えられないが、未来は変えられるですか。確かにそうですね」
 フレンディスは未来変動について納得に満ちた声を上げ、ジブリールの顔を見た。
「フレンディスさん?」
 ジブリールは不思議そうに訊ねた。
「ジブリールさん、未来は本当に変えられるんですよ」
 そう言ってフレンディスは未来体験薬の事を話した。ロズの正体は察せなかったが、未来変動については未来体験でベルクと夫婦となり二児の母親となった未来を見た以降、新たな家族、ジブリールを得た事で既に未来変動が行われているため理解出来ていた。
「そんな事があったんだ。未来は変えられる、か(フレンディスさんが話してくれた未来が来て弟と妹が出来たら楽しくて面白いだろうな)」
 ジブリールは嬉しく内心フレンディスが見た未来がくればと願っていた。

 再びロズとの話し合い。
「……ここにしばらくいてもいいかもしれない」
 皆の思いやりのある言葉にロズはここに留まる事を決め、陽一の問いかけに答えた。
「それならここのエリザベート校長にキミの事を言っておくよ(ついでに特殊な生まれと力を持つホムンクルス。分からない事も多いし放置にしない方がいい事も言っておこう)」
 北都が早速手助けに名乗りを上げた。他の危惧を抱きながら。
 そこへ
「色々騒がせておいて償いとか面倒くさい下等生物ですね。でも僕はエロ吸血鬼や生意気ターバンと違い心も広い超優秀なハイテク忍犬。手伝ってやりましょう」
 ポチの助が科学で解決出来ると見て堂々とドヤ顔で登場。
「ポチも手伝ってくれるのですか。頼りになります」
 フレンディスはポチの助の助けを歓迎。
「ご主人様、僕が話を全て報告し、留まる手助けを貰えるようにしますよ」
 『コンピューター』を有するポチの助は獣人化して手早くノートパソコン−POCHI−を弄り、エリザベートへの提出のため会合の記録を作成していく。
「……それなら」
 報告記録作成と聞いて北都がフレンディス達の所へ来た。先程抱いていたロズの出自に対しての危惧も一緒に報告して貰うために。