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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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【第六話】超能力の可能性、超能力の危険性

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 同時刻 ヴァイシャリー 某所

『鼬、生きていてくれたのか……良かった!』
 剣竜のコクピットで紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は信じられないものを見たといった様子で声を上げた。
 今、彼の目の前にいるのは、前回の戦場で大破したと思われていた“ドンナー”bis。
 きっと、パイロットも“鼬”だろう。
 
『紫月唯斗、その機体、やはりあなたでしたか』
 返ってくる声は間違いなく“鼬”のものだ。

『鼬、生きていてくれたのか……良かった!』
 喜びの声を上げる唯斗。
 それを微笑ましげに聞いているのは、サブシートのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)だ。
『ふむ、なんというか。剣竜のサブシートも慣れたのぅ。ま、唯斗も復調したようだし。妾達にまた力を貸して貰うぞ』
 
 すると突然機体が動く。
 剣竜が“ドンナー”bisに対して土下座をしたのだ。
 
『あの時はすまなかった! 俺の未熟故に接近に気付かず、咄嗟に護る事も出来なかった。もう、あんな事は、させない』
『あれはあなたの本意ではないと?』
『ああ。そうだ』

 しばしの沈黙の後、“鼬”は言う。
『なら、そうなのでしょう』
 了承した様子の“鼬”に向け、エクスは告げた。

『さて、前回の教訓だ。もう、横槍は入れさせぬ。索敵は念入りにさせてもらう――そこに隠れておる者よ、出てくるがいい! さもなくば――』
 
 エクスからの呼びかけに応じて出てきたのは、ジェファルコン
 更にコクピットハッチが開き、中からリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)と彼女の頭に乗ってウィッグのように振舞っているシーサイド ムーン(しーさいど・むーん)も出てくる。
「部下には命の投げ捨てを強要しておきながら自身はのうのうと生き延び帰還し、伏兵とは比較にならない背後からの同士討ちを戦法として実行しておきながら、その上で一体どの口が武人だの誇りだのという言葉を恥知らずにも吐いているの?」
 それだけ言うと、リカインとムーンはコクピットに戻る。
 ジェファルコンは背を向けると、機外スピーカーで付け加える。
『……後は戦うべき人に任せて帰ります。また騙まし討ちをするなんて思われたくないし一応迅竜クルーとしてやるべきことがあるので』
 
 本当にそれだけ言うと、去っていくジェファルコン。
 もしかすると、前回の戦いで重傷を負い、それでも無茶して飛び出さないようにまたたび 明日風(またたび・あすか)に監視されているシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が心配で戻ったのかもしれない。
 
 それを見送ったエクスはほっと一安心すると、胸中に呟いた。
(しかし、唯斗も三船達も強化案に気付いとるのかの? 鼬を倒す為の装備になっておる事に。死んだと思っておった相手に対抗する案を練る。本能か何かでわかっておったのやもしれんな)
 
『では、いくぞ。“鼬”――』
『ええ。始めましょう。紫月唯斗――』
 三機の“ヴェレ”を手で制し、静観に徹させる“ドンナー”bis。
 
 そして二機は刃を交えた。
 幾合にも渡る打ち合いの末。
 結果は全くの互角。
 
 しばし間合いの読み合いが続いた後、不意に“ドンナー”bisは刃を引いた。
『何のつもりだ?』
『僕としてもあなたとの決着はつけたい。しかし、今はそれよりも優先すべきことがあるのです――』
 
 どこかへと去っていく“ドンナー”bis。
『待て!』
 それを追おうとする剣竜だが、今まで静観に徹していた“ヴェレ”が三機とも割り込んだ。
 障壁を全力で展開するとともに、三機が同時に自爆装置を作動。
 凄まじい爆発を起こす。
 
 咄嗟に剣竜を脱出させたおかげで、機体は爆発のダメージに巻き込まれることなく無事だ。
 だが、その間に“ドンナー”bisは撤退を完了していたのだった。