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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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【祓魔師】イルミンスールの祭典

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第21章 イルミンスールの祭典 Story13


 一方、封魔術の要であるエリアにも、ボコールたちがたどり着こうとしていた。
「北都、ヒトじゃねぇのうろついてるみたいだぞ」
「え…!?」
「なんだか地理に詳しくないやつらみたいだ。今のうち進めよう」
 ソーマのアークソウルにかかったものの、その辺を行ったり来たりと彷徨っているようだ。
「次の工程は?」
「クローリスの花の花粉を大唱石に与えて、アークソウルの大地の気、ニクシーの水流…。哀切の章の祓魔の気の順に繰り返して、最終工程としてホーリーソウルを用いるんだよ」
「裁きの章の雨は必要でしょうか?」
 スペルブックの力が必要なら、魔の能力を弱める術も用いるのかと思い聞いてみる。
「それはカフェのほうから供給されててね。こっちはでは昨日の工程までだよ、リオンくん」
「なるほど、分かりました」
「リオン、僕は扉のほうで見張りでもしてるよ」
「はい、北都!最終駆動が楽しみですね」
 いつでも唱えられるように本を開き、リオンはうきうきと出番を待つ。
「ラスコット。花粉とやらは初めて扱うのだけど、ビバーチェに頼むだけでよいんですの?」
「ハンドベルを使ったほうがいくらか楽になるね」
「わたくしは生憎、手持ちにありませんわね。まぁ、なくとも問題ないでしょう。やりますわよ、ノーン」
「うん、おねーちゃん!」
 ノーンはハンドベルを鳴らしてルルディに白い花を咲かせもらう。
 エリシアのほうはビバーチェに頼み、赤い花を床いっぱいに咲かせるように言う。
「これだけあれば、何回かの分はいけるはずですわ」
「ルルディちゃん花粉をちょうだい」
「わたくしもお願いしますわ、ビバーチェ」
 黄色い花粉を散らせ、封魔術の陣の中央に設置された大唱石へと送る。
「もういっちょ頑張るか」
「応援してますね、マスター!」
「今回はあの長い詠唱はいらないのか」
 2日連続異なるワードを覚えるだけでも一苦労だったため、少しは楽だろうかとソーマはほっとした。
 一言間違えるだけでやり直しになってしまう。
「うむ、確かにのぅ。ああゆうのをかまずに言える声優はかなり偉大な存在じゃ♪」
 不慣れな者が長文を唱えれば、途中間違えてやり直しの繰り返しで血反吐を吐きそうな勢いだ。
 これも興味がないとまず辛い作業だったといえるだろう。
 ジュディも辛い2日間を思い出そうとすると、気が遠くなって白くなりそうな感じだ。
「媒体のワードがあれば、そりゃ精神の負担も軽くなるよ」
「そ、そいうものなのかのぅ!?」
「短縮して早く唱えても、相当慣れていなきゃ威力が劣化するからね」
「ううむ。では、地道に…」
「ジュディーーーー!マジ、余計なこといわんでくれっ」
「ん…♪」
 用紙を受け取ったジュディは満面の笑顔で陣に渡し、“ジュディ、おまぁあああああ!!?”と絶叫された。



 途中、陣は白くなりかけながらも長文を読破し終え、口から魂が離脱しそうな勢いだった。
 仲間たちと覚悟を決め、読み合わせからしてみる。
「最初オレ逝こうか。いや違う、いく…のほうで。はぁ、テンションがおかしくなってきたみたいやな。えっと…芽吹いた大地に、収穫の時がきたり。次、ソーマさん頼んま」
 長文を見ただけで天国逝きそうになったものの、襲撃時のことを考え用紙はもう見ずに唱えてみる。
「種が世を貶め、世を汚し、世に罪を蒔くもならば…刈取り…なんだ?」
「刈取り除くであろう、やね」
「ああぁ…そうだった」
「次、ボクね。……これより二心ないか問う。否とするならば生命の水を枯らし、活力の天は閉じられ…んん〜うにゃぁあ!!」
 いきなり覚えるのは困難だったのか、ちらっと用紙を見て床の上で悶絶する。
「封魔術はね、対象によってそれぞれ言葉が異なるんだよ。サリエルのことを考えれば、覚えやすいと思うよ?」
「うぅ分かった、ラスコットさん。もうワンチャン!…これより二心ないか問う……否とするならば…、生命の水を枯らし、活力の天は閉じられる。されど我…責……責…うぅ、責務だったー!うわぁあん」
「残っている文字が多くないか?まぁいいか、……主の生を断絶させることなく、約束された地への道を残そう。我…、権威をかざすことせず、等しく生ある種として、汝との芽吹きを待つ」
「羽純くんすごーい!」
 長ったらしい言葉を暗記した羽純に歌菜は思わず拍手する。
「言われた通りにしたら覚えたな」
「そ、そんな!?えっと最後は私…。あぁ…すごいなぁもう、……はぁ長い。…ジュディちゃん酷いよ」
 1、2度見ただけじゃ簡単に覚えるのは辛いとため息ばかりでる。
「終焉の地…、それは都は種の帰るべき…場所……だったよね。えっと、…等しく、我も帰る約束の地そのものでもあり。もし……もし…もしもし、今晩はって違うーっ!はうぅ忘れちゃったー…」
 歌菜は床に突っ伏し、しくしくと涙を流す。
「いや、歌菜も頑張ったほうだろ」
「だって羽純くんみたいに言えてないもの。おかしいよ、羽純くん。絶対、羽純くんはおかしい!」
「そうや!あんなの1、2度見て覚えるなんて、変すぎてチートやぁあ。オレはおもいっきり短文しか言ってないしっ」
「酷い言われようだな…」
 褒めてほしいわけではないが、読み合わせの部分のみ言えただけで変人扱いされてしまった。
「俺はもし…から言えばいいか。もし…、違えれば、…我の悲しみの涙は、業火となり…。後はなんだったか…あぁそうだ、その種との…別離となるで……で…」
「マスター?」
「今日はあれだ、…日が悪い」
 ベルクは最後の言葉に詰まり、どんよりと沈む。
「これさ、同時に全部言うんやったけ?」
「え、当たり前でしょ?」
 ヘルプミーという顔をする陣の希望をあっさりと砕く。
「あのなぁ、おっさ…うぅ酷いあんまりや」
 あまりの仕打ちに陣は膝を抱えて俯いた。
 結局、暗記しきるまで10分以上かかってしまった。
 正しく言い切った詠唱は…。

 “…芽吹いた大地に、収穫の時がきたり。
  種が世を貶め、世を汚し、世に罪を蒔くもならば…刈取り除くであろう。
  恵みの種と偽り、芽吹こうとする種が悔い改めようとするか。
  ……これより二心ないか問う。
  否とするならば生命の水を枯らし、活力の天は閉じられる。
  されど我、責務負うべき所あり。
  主の生を断絶させることなく、約束された地への道を残そう。
  我、権威をかざすことせず、等しく生ある種として、汝との芽吹きを待つ。
  終焉の地、それは都は種の帰るべき場所。
  等しく、我も帰る約束の地そのものでもあり。
  もし、違えれば、我の悲しみの涙は業火となり…。
  その種との別離となるであろう。”

  ……であり、長々と詠唱を終えた彼を含む、リーズ、ソーマ、羽純、歌菜、ベルクは、やっと息が吸えた。
「うわぁん…長いよー」
「もうどうにでもしくれ」
「ソーマ。これくらいで疲れては、この先大変ですよ!」
「はっ!?やってみればわかるんだって!」
 えっへんという態度をとられ、度々こんなものふられたら息切れどころじゃすまないだろ!などと怒鳴った。
「うわー…私今のままじゃ辛いわ」
 こんなもの短時間で覚えろと要求されたら泣き沈みそうと愛が息をつく。
「手習いじゃなくても、いくら学んでも相当やばいぞ、愛」
「でもまだ、短いほうだと思うよ」
「白衣の人がなんか言ってるけどもう聞こえない、聞こえないからな!」
「わたくしもすぐ覚えましたよ?次から参加しますわ」
「医学系は宇宙人クラスだろがっ」
 当然のように言うミリィに対して、そもそも何かが違うと言う。
「えー…ソーマも覚えるの早いと思うよ?何も見ないで20分もかけずに言えるようになる人って、そんなにいないんじゃないかな」
 常人より遥かにすごいと北都がソーマを褒める。
 数回見ただけでは瞼を閉ざした瞬間、覚えている人はほとんどいなさそうなレベルだ。
 仮にちょっと見て覚えたとしたらそれはもう、ソーマの言う通り脳みそが宇宙人クラスの領域だろう。
「たぶん次からのほうがねぇ…」
「先生……」
「ん、何かな北都くん」
「リオンたちは魔道具だけで挑んだほうがいいと思うよ」
 ラスコットが言いかけた言葉に心がぽっきり逝ったわけでなく、覚えるよりも詠唱なしで進められるならそっちが速いということだった。