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リアクション
明日は休日。キッチンで作った料理を長谷川 真琴(はせがわ・まこと)は上機嫌でリビングへと運ぶ。
「あれ、今日はリビングで食べんのか?」
「ええ。リビングで映画を見ながらゆっくりと飲もうと思って」
真田 恵美(さなだ・めぐみ)に、真琴は小さく微笑み返した。
「明日は学校もお休みだから、久しぶりにのんびりしましょう」
教官である真琴にとって、普段の夜は忙しい時間帯だ。
生徒の課題の添削、翌日の授業やカリキュラムの準備に追われ、なかなか手間をかけて料理をする時間がない。
ある日はパスタとサラダ。ある日は、休日に衣つけまで済ませて冷凍しておいたコロッケやフライを揚げて。
だからこそ、休日の前日は手間のかかるものを作り、それを肴にお酒を嗜むのだ。
「今日は、このお酒にしましょう」
肉じゃがに煮魚と並んだリビングテーブルに、真琴は涼しげなガラスの酒器と猪口を持ってきた。
冷酒。それも、とっておきの逸品。美味しい日本酒を、食事の後に楽しむのだ。
「「頂きます」」
映画を流して、両手を合わせる。恵美はさっそく、肉じゃがに手を伸ばした。
「……やっぱり、真琴が作る肉じゃがは旨いよなぁ」
ホクホクのじゃがいもを味わいながら、恵美が呟いた。
「そう? 良かったわ」
「うん、ジャガイモが崩れずにきちんと味が染みてるし。肉も固すぎないくらいで火が通ってる」
真琴も自分で作った肉じゃがを食べてみる。
「これだけの腕があるなら小料理屋をやっても売れると思うんだよなぁ」
「小料理屋、か」
「オレとしてはそんな真琴も見てみたいけど、……やっぱり整備教官としての真琴のほうが輝いてる気はするなぁ」
何気ない時間。美味しい手作り料理。
真琴と恵美は、休日前のひと時の休息を実感しながら、映画を眺めている。
流れているのは、アメリカの映画。真琴の選んだ映画だ。
「やっぱり、こういう時間は大切ですね。気持ちもスカっとしますし」
隣に素敵な恋人がいればいうことはなかったのですが、と呟きながら、真琴は煮魚に手を伸ばした。
「それにしてもさ、真琴の映画セレクションを見てて思うんだけど、真琴ってああいうマッチョというかプロレスラーが好みなのか?」
恵美は映画に視線を向けたまま、真琴に訊ねた。何故か、いつも真琴のチョイスする映画には、アメリカのプロレスラーが出演していた。
「あ〜、でもオレはああいう男って感じなのがタイプかな」
プロレスラーの出演者を見ながら、恵美も煮魚に手を伸ばす。
「……あ〜あ、私も素敵な恋愛をしたいなぁ」
誰にもとなく呟いて、真琴は猪口を手にした。すっきりとした冷酒を味わいながら、真琴と恵美はゆったりとした休息を楽しんだのだった。
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