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木蔭のお茶とガーデニング

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木蔭のお茶とガーデニング

リアクション

 泉 小夜子(いずみ・さよこ)泉 美緒(いずみ・みお)の二人は、オープンカフェでも隅の方の、アイアン製の華奢な席についていた。
 遠くにガーデニングに興じる契約者の姿を眺めながら、喧騒を遠くに聞きながら、薄いピンク色をしたハーブティーと、お茶菓子を少しずつ口に運んでいた。
「……そういえば美緒。温室に植える植物は何か持ってきました?」
「小夜子は?」
「私は植えるものが思い付きませんでしたの……」
 もっと気になることがあったから……ということは今は言わず、けれど正直に応えると、美緒は素直に頷いた。
「わたくしはナデシコを植えようと思いますの。わたくしや小夜子の故郷でもある日本の、秋の七草ですもの」
「二人であとで植えに行きましょうか
「はい」
 にっこりと微笑む美緒は相変わらずお姫様のように無邪気だった。
 けれどその無邪気さに、本当の用件――お茶会したいのではなく――逆に恥ずかしくなってしまう小夜子であって。
「まあその……、……美緒。実らせの秋だから、というわけではありませんけど……」
 スキンシップでもこんなに恥ずかしくはならないのに。
 小夜子は、自然と声を潜めて美緒にだけ聞こえるように言った。
「私と美緒との間に子供が欲しくありません?」
「……えっ?」
 文字通り目を真ん丸にする美緒に、小夜子は自分が恥ずかしさのあまり余計なことを言わないように気を付けながら、前もって考えていた言葉を使う。
「アナスタシアさんから聞いた話ですけど、そういう……魔法的な方法がパラミタにはあるそうですわ。
 もし美緒がよければ……卒業後にやってみたいのですけど……。同性同士だけど私と美緒との間に子供が欲しいから……。駄目かしら?」
 以前から考えていたことではある。
 進路相談会で子孫を残す方法がないか、とアナスタシアに訊ねたのはそういう気持ちが少なからずあったからだった。
 養子を貰ったり、他の方法もあるけれど……二人の子供を作る方法があるなら試してみたい。
 美緒は目を真ん丸にしてから、ぱあっと顔を真っ赤にして、そして俯くと小さく頷いた。
「ええ、……小夜子がそうしたいのでしたら……」
「……良かったわ。魔法的なものですから、そういうのはやはりイルミンスールで調べた方が良いでしょうね。
 二人で時間が空いたとき、調べに行きましょうか」
「は……はい。魔法そのものでなくても……何か手がかりが見つかるかもしれませんわね」
 美緒は薄らと頬を染めたまま答えた。
「その時は……どちらがお母さんになるのでしょうか。……そういったことも、考えておきませんと……」
 もし子どもできたら、どんなふうに暮らしていきたいのか。
 美緒は恥じらいながら、そんなことをぽつりぽつりと小夜子に問いかけるのだった。





「いつも頑張ってるからな」
 金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)はそんなことを言って、つい最近、四つ子のお母さんになった金元 ななな(かねもと・ななな)を連れ出した。
 それを言ったらシャウラも四つ子のお父さんで、彼自身も子育てを頑張ってるわけだが……、手伝うにしてもどうしても、母であるなななに負担が大きいのは否めない。
 そこで。
 シャウラは、今日は友人に子供たちを見て貰って、なななにゆったりして貰おうという計画を立てた。
 家は……買っておいた庭付き一戸建てのおかげで、騒音をあまり気にせずに済むのは有難い(ローンは頑張る)。
 早産で生まれたばかりの四つ子を家に置いて、いわゆる床上げ前(しかも彼女はまだ10代だ)に出かけることに、なななは思うところもあったようだが、契約者だけあってか、それともなななの身体が丈夫なのか……短時間だけということで了承してくれた。
「何か植えたいものは何か植えたいものはあるかい? 秋だと何がいいんだ?」
「優曇華!」
「……それは、無理……かなぁ。いつ花が咲くんだ」
「じゃあ、コスモス。ゼーさん頑張って!」
 なななは、未だに旧姓由来のゼーさん、という愛称で彼を呼ぶ。可愛いからいいか……と、応援して拳を振り上げるなななを、コスモスの苗を植えながら、愛しく思ってしまうシャウラだった。
 なななは体に負担をかけたくないと、応援に徹するつもりらしい。
「記念植樹みたいだな」
 最後にちょっとだけなななが如雨露から水をかけて、完成。


 それから二人は、オープンカフェでお茶をした。その頃は団長たちは資料館の中にいて、会わなかったのは彼にとっては幸いだっただろう。
 なんといっても……。
「そうなんだよ、もう可愛くてさー。あ、でも、嫁にはやらんの」
 ハーブティーを頼んだシャウラは、容器になってその辺の人に可愛い子供たちの写真画像を見せたのである。お茶効果とはいえ団長にうっかりやってしまおうものなら……。
「ちょっとゼーさん、やめようよ、恥ずかしいよもう」
 それでもなななは恥ずかしがって、見知らぬ人たちに自慢しまくる親馬鹿の夫を制止して、そこでやっとシャウラは前を見てくれた。
「あ、ああ。……それより、この子たちの名前なんだけどさ。色々考えたんだけど……」
 実は子どもたちの名前はまだ決まっていなかった。
「なになに?」
「陸・海・空と宙(そら)とか。ひかり・こだま・のぞみ・かがやきとか……なんかピンと来なくてさ」
 シャウラはなななに期待に満ちた目を向けた。いつも突拍子もない発想をするなななのこと、素晴らしい名前を考えてくれるだろう。
 うーん、となななは首をひねり、しばらくその姿勢で考え込むこと、数分……。
「健二(けんじ)、浩(ひろし)、輝(ひかる)、かおり!」
 突然叫んだなななの名前に、シャウラは一瞬、キョトンとなった。
 いや、本音を言えばななながユニーク名前を考えて来るんじゃないか、と思ったのだ。それが、普通の日本人の名前だったからである。
「……宇宙刑事名……は?」
「えぇっと、宇宙刑事ソード、宇宙刑事ワールド、宇宙刑事シャイニング、宇宙刑事キューティー……な、感じ?」
 子どもに関してはなななは割と真面目だったようだ。
 しかしなななが大好きなシャウラはとにかく感動してしまって、
「流石だ!」
 と手を掴むと、
「帰りに早速役所に名前を登録しようぜ!」
 と、春爛漫な雰囲気の満面の笑顔を咲かせて、二人で帰路につくのだった。