リアクション
終章
空に打ち上げられたハデスは、発明品が詠唱していた『ハルマゲドン』が空中で炸裂したことにより、一発の花火となった。
ハデス自身が持っていた『プロフィラクセス』によって事なきを得たため、死者はゼロ。
ハイナ、房姫へのアルコール混入計画は唯斗、睡蓮、ルー、ダリルの四人を中心とした活躍で阻止された。
狙われた本人たちは一体何が起こったのかさっぱり分からなかったようで、犯人たちからの証言を聞くまでずっとぽかんとしていた。
ちなみにハデス一味と突然乱入してきた男たちとの関係は無い。目的とタイミングがたまたま一致しただけ。
「さて、事件も去ったところで、盆踊りの再会としゃれ込むでありんす!」
「ハイナ、気を付けてくださいね。またさっきのような輩が出たら……」
「心配いらないでありんすよ、房姫。なにしろわっちの周りには……」
太鼓のバチを肩に担いで、ハイナは周囲を見回した。
「頼れる契約者たちがおりんすから! というわけで!」
「?」
ずい、とハイナはルーに向かって、バチをもう一組取り出して差し出した。
「ほえ? 私も叩けって?」
ハイナはにいっと笑った。
「いいよ! ハイナと一緒ってのなら!」
ルーはバチを受け取ると、腕をまくって一緒にやぐらへと歩いていった。
再開した盆踊りの音楽。花火はいまだ衰えることなく打ち上がり続けている。
先ほどの騒ぎも徐々に落ち着きつつあり、屋台行列も元の平穏で賑やかな状態に戻っていた。
客の入りは上々。
屋台を出している契約者たちも、ドタバタ騒ぎには少々驚いてはいたものの、直接的な被害はなし。今も汗を流しながら接客と料理に励んでいる。
花火会場でも、美しい花火たちが少年少女たちの心に、光り輝く思い出を深く深く刻み込んでいった。二人きりであったり、仲間内で盛り上がっていたり。
そして盆踊り会場でも、ハデスを含む先ほど騒ぎを起こしていた者たちはシメられ、警備の人たちにどこかへ連れて行かれた。そして盆踊りも元の活気を取り戻し、老若男女が今も活き活きと踊っている。やぐらの上ではハイナが誘ったルーが力いっぱい太鼓をぶっ叩いていた。
そしてそんな祭りを自ら盛り上げるハイナの姿を見て、房姫はふうとため息をひとつ。
楽しそうだ。すごくイキイキしてる。
もちろん、房姫自身も楽しんでいる。普段会わないような人たちと触れ合って、食べ物を食べ、一緒に話して笑いあう。葦原家の当主として忙しい身としては、こんな機会はめったにない。
ただ、いつも元気で、こんな祭りを企画するくらい自由奔放なハイナが羨ましくて、憧れる。
「まあ、でも」
どんどん、どどん。
ハイナとルーが同時に叩く太鼓の音と、空に打ち上がる花火の音が、シンクロしているように聞こえる。
「そんなハイナの姿を一番近くで、一番長い間見られるのは、特権ですわよね」
今度は、どんなことを計画するつもりなんだろうか。
またあんなに元気な姿を見せてくれるのだろうか。
またこんなに、たくさんの人たちが集まって、笑顔になってくれるだろうか。
その時、一曲が終わった。
汗をぬぐうハイナと、目が合った。
房姫はにこっと微笑むと、ハイナに向かってひらひら手を振った。にっ、とハイナは笑うと、強く手を振り返してくれた。
「私は、私にできることであの人を支えましょう」
ハイナ・ウィルソンのパートナー、葦原 房姫は憧れの眼差しで温かく見守り続けた。
その後も、祭りは続く。
花火が終わっても、日をまたいでも。
契約者たちが長い長い祭りでどのような時を過ごし、どう変わっていったのか。
それこそ、彼ら自身が知っている。
というわけで、佐久間豊です。まあ、アレです。予想以上ににぎやかなお祭りで楽しかったです。今回、なかなかの青春物語になったと思います。皆様いかがでした? 書きたいことはいろいろありますが、兎にも角にも皆様のご参加、ありがとうございました。この言葉に尽きますね。皆様がいなかったら私、何もできませんからね。ははは。
今回が初めてという方も、お前のことは前から知ってるぜぇという方も、こんなドタバタシナリオを作るマスターがいたことを、記憶の片隅にでも置いておいていただければ幸いです。佐久間豊の蒼フロ最後のシナリオにご参加、ありがとうございました!