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リアクション
朝。
「祭りねぇ。あの双子も面白い事をするわね。これはもう存分に楽しまないと」
祭りと聞いて血を騒がせるセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)はすでに顔見知りの双子が主催するこの祭りを楽しむ気満々である。
「……楽しむのはいいけど程々にしてちょうだい」
セレンフィリティに引きずられる形で参加のセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は元気な相手に呆れの溜息。すでに気苦労の予感がぷんぷんである。
早速、参加とばかりにセレンフィリティは屋台に突撃をかけようとしたが
「セレンお姉ちゃん!」
横から聞き知った声がかかり、足を止めて振り向いた先には
「絵音じゃない……って、みんないるじゃない。どうしたのよ?」
スノハと一緒に絵音がいた。いや、絵音だけでなくあおぞら幼稚園の子供達が勢揃いしていた。引率は誰かの保護者が数人いたので幼稚園の行事でという事では無いのは確か。
「あのね、今日お祭りがあるって聞いたから来たの。でもお父さんとお母さんお仕事で来られなくてちょっとつまんなかったけどセレンお姉ちゃん達に会えて良かった」
絵音はちょっぴり寂しそうに言った。
「あたしもよ。でも両親忙しいのね。まぁ、今日はあたし達が付き合ってあげるから寂しいだろうけど我慢して」
再会を喜ぶセレンフィリティは励まそうと一層明るく言った。
「うん! ありがとう!」
セレンフィリティの優しさに絵音は嬉しそうににっこり。
「……“たち”って私も入っているのね……まぁいいのだけど」
セレアナは自分が含まれている事に気付き、溜息を洩らすも嫌な事ではないのでツッコミは入れなかった。
その時
「あ、ねーちゃん、来たな!」
いつもの挑戦吹っ掛け小僧ウルトが登場。
「えぇ、来たわよ」
セレンフィリティはニンマリ。この少年に会えばどのような展開になるのかもう分かっていると言う顔である。
「ねーちゃん、勝負だ!」
「子供だからって手加減はしないわよ!」
ウルトの叩き付ける挑戦状にセレンフィリティはいつものように受け取りノリノリである。
「……はぁ(何でこういう展開になるのかしらね)」
いつもの展開にセレアナは溜息を吐き出した。
「でも楽しそうだよ」
ちょこんとシュウヤがやって来て手近の屋台を攻略している二人を指し示した。
その店では
「へへへ、俺の勝ちだな。やっぱり、ねーちゃん、弱いな」
「ちょっと、手加減しただけよ。今度は本気よ。泣いても知らないわよ!」
いつもの如くウルトに負けて負けず嫌いに火をつけているセレンフィリティ。
その姿に
「……確かに楽しそうね(22歳の大人として幼稚園児相手に負けず嫌いを発揮するのはどうよ、という気がしないでもないけど)」
セレアナはシュウヤの言うように楽しそうなは認めつつも大人としての振る舞いを考えると溜息しか出ない。
その間も
「次はあっちに行こうぜ」
「今度は負けないわよ」
結局全敗したセレンフィリティはウルトが指し示す店を闘志に燃える目でにらむなり駆けて行った。
後ろを歩きながら
「……(ま、逆に言えば相手が子供だろうと手を抜かない……きちんと向き合っているという事だし。悪くないのかも……天真爛漫に振舞えるあの天衣無縫さ加減は私には出来ないわね」
セレアナは自分には出来ない振る舞いをするセレンフィリティの姿に羨ましく思った。
「……セレアナお姉ちゃんはセレアナお姉ちゃんで素敵だよ」
セレアナが何を考えているのか察したのかシュウヤはセレアナを見上げて笑みを浮かべた。何やかんやとあれどセレアナを気に入っているのは変わらないらしい。
「……ありがとう」
セレアナは嬉しそうに言った。
「私達も楽しみましょうか。折角の祭りだから」
セレアナはいつの間にか取り残されている事に気付き
「そうしよう!」
シュウヤと共に騒ぎまくるセレンフィリティ達に加わった。
散々騒ぎ、屋台攻略をするもののセレンフィリティはウルトと勝負をしまくるも負けが続いていた。昼時となり昼食を食べ終えてからまた遊び回った。
昼。
「今度はこれよ!」
「よし、来い、ねーちゃん」
昼になってもセレンフィリティとウルトは勝負をしていた。
その時
「セレンお姉ちゃん、あれ、セレンお姉ちゃんにそっくり!」
絵音が不思議そうに通りを歩く三人組を示した。
「あら、そっくりね……って、あれって、まさか、セレアナ!」
絵音の示した先を見てセレンフィリティは、本当だと最初感心していたがすぐに正体に見当がつくなり別の子供達の相手をするセレアナを手招き。
「……セレン、どうしたの……あれは、間違い無く平行世界の私達ね」
セレアナが気付くと同時に
「やっほー、元気にしてた?」
セレンフィリティは手を振りながら陽気に声をかけた。
すると
「えぇ、おかげさまで」
「そちらも元気そうだな」
淑やかに元名家の令嬢セレンフィリティと青年セレアナが親しげに応えた。
続いて
「久しぶりね」
セレアナも駆けつけた。
ここで
「あれ、その子、もしかして二人の娘さん?」
セレンフィリティは二人の間にいる幼稚園児達と同年代の女の子に気付いた。
「えぇ、セレスティよ。丁度4歳」
「セレス、挨拶は?」
平行世界のセレンフィリティとセレアナはそれぞれ親の顔で娘の名前を教え、挨拶をするように言った。
セレスティは礼儀正しくセレンフィリティに挨拶をした。
途端
「うわーーかわいいーー、挨拶も出来るなんて偉いわねーー」
セレンフィリティは思わずセレスティに頬ずり。褒められたセレスティは恥ずかしそうな顔をするも両親と同じ顔をした二人に驚く様子は無かった。
その事に
「……(同じ顔があるのに驚く様子がないわね)」
セレアナは気付いていたが、この場ではあえて口にはしなかった。
「よーし、セレスも一緒に遊ぼーー」
セレンフィリティはぱっと立ち上がるなりセレスティの手を引いて園児達に混じった。
そして
「この子はセレスティだよ。セレスちゃんって呼んであげてね。平行世界というこことは違う世界に住んでいるあたし達の娘だから優しくしてあげてね!」
セレンフィリティは園児達にセレスティを紹介した。
聞いた子供達は
「いいよーー」
「セレスちゃん、あそぼー」
「へぇ、別の世界のお姉ちゃんかぁ、すごいなぁ」
あっという間に受け入れ、セレスティと共に遊び始めた。
「新しいお友達が加わった所で次は輪投げに挑戦するわよ!」
近くの輪投げ屋を指し示し、園児軍団を率いて向かい、遊びまくったという。
「……平行世界のセレアナお姉ちゃんかぁ。やっぱりこっちのお姉ちゃんの方がいいなぁ」
両世界のセレアナを見比べて驚いてからシュウヤはぽつりとつぶやいていた。
「……(こちらの方がいい、ね)」
その様子をこっそりとセレアナは見ていた。
ともかく遊び回った後はゲーム攻略から買い食いに転じた。
「ん〜、美味しいわねぇ。やっぱり屋台で食べるのはひと味違うわ」
子供達と散々遊び回った事もあってかいつも以上に食欲魔人ぶりを発揮していた。
「……こちらの自分は随分、食べるのね」
元名家の令嬢セレンフィリティは両手に持つ料理をひっきりなしに食べるセレンフィリティの豪快な様子に白黒させていた。
食べ歩き中。
「……ところでどうしてここに?」
セレアナは改めて青年セレアナにこちらに来た経緯を訊ねた。なぜなら自分達は希望を出していなかったから。
「主催者がこちらにいる君達を驚かせたいからと言われて招待されたんだ。丁度、あの時の礼も言いたくて……」
という青年セレアナの答えに
「そうなの。驚かせたいというと……あの二人たまには良い事をするのね」
顔見知りの双子に感謝してから
「大した事なんかしなかったわよ」
さらりと言った。平行世界の夫婦が懐妊を巡っての相談を受けた事を思い出しながら。
「いや、相談に乗ってくれて祝福してくれた。それがとても嬉しかった」
青年セレアナは僅かに笑んだ。
「……そう(そう言えば二人は駆け落ちをしてそれで……)」
セレアナは二人が許されぬ恋の果てに駆け落ちした事を思い出した。なかなか祝福されない状況であると。
「セレスはあなた達に似て可愛い娘ね。私達を驚かなかったというと話したのね(……娘、ね)」
セレアナはセレスティの姿を眺めながら羨望の目を向けた。何せ今の自分達ではもうける事が出来ないから。
「ありがとう。もちろん話した。助けて貰ったのだから。ところでそちらは何か変わった事は?」
青年セレアナは娘を褒められ礼を言ってからこちらの近況を訊ねた。
「……そちらと同じくセレンと結婚したわ。でも……」
セレアナは食べまくるセレンフィリティを見ながら溜息の近況報告。
「相変わらず苦労してるんだね」
青年セレアナの苦笑混じりの励ましに
「まあ、慣れたから」
セレアナもまた苦笑で返した。
ここで
「……そうか。自分は彼女と一緒になりセレスも生まれ本当に幸せだと、選んだ道は間違っていないと思っているが、君はどうだい?」
青年セレアナはいやに真剣な表情で問いかけた。前回は自分達の悩みばかりで聞く機会がなかった大切な事を。
「えぇ、振り回されてばかりだけど幸せよ」
セレアナは僅かに唇の端を歪めた。
一方。
「言うのを忘れたけど、出産おめでとー」
セレンフィリティは豪快に食べながらのんびりと遅くなった出産の祝辞を述べた。
「……その、ありがとう。あの時も……心細かった私の話を聞いてくれた事」
元名家の令嬢セレンフィリティは懐妊で悩む自分を励ましてくれた事も含めて感謝を述べた。柔和に笑むその姿は同じセレンフィリティでも雰囲気が違う。
「いいの、いいの。自分達同士なんだからそんな事で一々礼なんか言わなくても」
呑気なセレンフィリティはさらりと繊細なもう一人の自分の話を流し
「それより、あたしも実はセレアナと結婚したのよ。最高に幸せよ!」
結婚を報告をする。
「……それはおめでとう。幸せそうで嬉しいわ」
今度は元名家の令嬢セレンフィリティが手を叩いて祝福。
そして
「ありがとう。それにしてもあたし達は世界は違うけど選ぶ人は同じね」
「……そうね」
セレンフィリティと元名家の令嬢セレンフィリティはそれぞれ最愛の人を見て互いに顔を合わせてつぶやいた。
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