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興行開始

――興行当日。観客席はプロレスリングハードコア最後の興行という事を聞きつけた観客により埋め尽くされていた。
 それはリングから最も近いリングサイド席も例外ではない。その観客の中に、黒いローブで顔まで覆われた怪しげな人物――ソウルアベレイターの阿部プロデューサーは座っていた。
「いやぁ間近で見るというのも楽しみですねぇ」
 顔は伺えないが、声の調子からして子供の様に興奮している様子が取れる。
「ここまで間近だと見えない所も多そう」
 阿部Pの隣では天野 空がリングを眺めつつ呟いた。
「確かに試合全体を眺めるならば少し離れた所がいいでしょう。しかし間近な分、迫力はこちらの方が断然上ですよ」
「ところで、プロデューサーのお仕事はしないでいいの?」
「最初は実況でもやろうと思いましたが、部下に任せました。一観客として見たいと思いましてね」
 そのように語る阿部Pに、空は「ふーん」と答えるとリングから目を離し、阿部Pからもらったチラシに目を向ける。
 それは今回の興行のチラシで、対戦カードが書いてあった。

◎ハードコアルール
・第一試合 ノーマルリング

マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)
VS
佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)
with
佐野 悠里(さの・ゆうり)

・第二試合 特殊リング(ノーキャンバスリング)

パンツマシン国頭 武尊(くにがみ・たける)
VS
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
with
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)

・第三試合 蛍光灯リング

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
VS
マスク・ド・ペンギン鬼龍 黒羽(きりゅう・こくう)

・第四試合 蛍光灯リング

綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)
with
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)
VS
エル

◎棺桶マッチ
・第五試合

ビリー・ミラー弁天屋 菊(べんてんや・きく)
VS
忍者超人 オクトパスマン(にんじゃちょうじん・おくとぱすまん)

・第六試合

ジャガーマスクラルフ モートン(らるふ・もーとん)
VS
鳴神 裁(なるかみ・さい)
with
メフォスト・フィレス(めふぉすと・ふぃれす)

・第七試合

レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)
VS
朝霧 垂(あさぎり・しづり)

・第八試合

ブラック・ジャガー神崎 荒神(かんざき・こうじん)
with
アルベール・ハールマン(あるべーる・はーるまん)
VS
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
with
コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)

・第九試合

ルカルカ・ルー(るかるか・るー)
with
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)
VS
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)
with
コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)

◎第十試合 HCタッグ王座決定戦※ラダーマッチルール

涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)ミリィ・フォレスト(みりぃ・ふぉれすと)
VS
婆羅門ボーイズ
典韋 オ來(てんい・おらい)レイラ・ソフィヤ・ノジッツァ(れいらそふぃや・のじっつぁ)
with
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)
VS
ノーライフ・クィーンヒルダ・ノーライフ(ひるだ・のーらいふ))&将軍JG・O熊大熊 丈二(おおぐま・じょうじ)
VS
天野 翼和 泉空


「随分と同じ形式の試合やるんだね」
 空が蛍光灯リングと棺桶マッチの欄を指さす。
「ええ、募集をかけた所結構集中しましてね」
「纏めてはやらなかったの?」
「確かにバトルロイヤル形式とかにもできたのでしょうが、出場する選手がコントラクターの皆さんですからねぇ。いっそ全部シングルにしてしまえと。同じルールですが演ずる役者がいいので、きっといい物になると思いますよ」
 そんな事を話していると、会場が暗くなる。
 待ちかねていた観客から、歓声が湧きあがった。