シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

そして、蒼空のフロンティアへ

リアクション公開中!

そして、蒼空のフロンティアへ
そして、蒼空のフロンティアへ そして、蒼空のフロンティアへ

リアクション



私塾へ



「まったくもって、なんで俺まで一緒についていかなくちゃならないんですら?」
 険しい獣道を、草を掻き分けて進みながら、キネコ・マネーが、大神 御嶽(おおがみ・うたき)にぶつくさと文句を言い続けました。
「まあ、そう言わないでくださいよ。別に、嫌だったら、イルミンスールに残っていてくれてもよかったんですから」
 それこそ、なんでついてきたのかと、大神御嶽が訊ねました。
「冗談ではないですら。誰が、あんな凶暴女のいる場所に一人で残れって言うんですら? それよりは、御主人についていった方が、万倍も安全ですら」
 きっぱりと、キネコ・マネーが言いました。
「何ですって!」
「ひ、ひえーっ!!」
 頭上から聞きたくない声が聞こえてきて、キネコ・マネーが縮みあがりました。
「どうしてここに!?」
 驚く大神御嶽の前に、守護天使の翼を広げたアリアス・ジェイリル(ありあす・じぇいりる)にかかえられた天城 紗理華(あまぎ・さりか)が降りてきました。
「どうしてって、あなたが黙って行っちゃったからに決まっているじゃない!」
 天城紗理華が言いました。もの凄く怒っています。
「いや、葦原島の散楽の翁塾に行くと決めたのは、私ですし、紗理華には……」
「関係あるに決まってるじゃない!」
 大神御嶽の言葉を途中でぶった切って、天城紗理華がビシッと言い切りました。
「だって、君は、ルーンを極めるんじゃなかったのかい?」
「何を片手落ちのことを。ふふん、見なさい、この衣装を!」
 そう言って、天城紗理華が、自分の着ている巫女服を見せびらかすようにクルリと一回転しました。
「西と東の魔術を制してこそ、完璧な魔法使いになれるのよ! それに、陰陽師には巫女さんがつきものなんでしょ?」
 自信満々で天城紗理華が決めつけましたが、方便なのは誰の目にも明らかです。
「で、私にどうしろと……」
「面倒をみなさい」
「へっ!?」
 堂々と言われて、大神御嶽がどうしていいか困り果てます。
「それはまた、面倒な……」
「だから、私の面倒をみればいいのよ。ああ、もうじれったい、さっさと二人で弟子入りするわよ。出発!」
 そう言うと、天城紗理華は大神御嶽を引っぱって歩き始めました。
「嫌ですらー。帰るですらー!」
「諦めてついてきなさい。あなた、それでもパートナーでしょ」
 ジタバタあがくキネコ・マネーを肩に引っ担いだアリアス・ジェイリルが、二人の後について歩いていきました。

    ★    ★    ★

「ようこそいらっしゃいました。いつぞやはお世話になりました。さあ、どうぞこちらへ」
 山奥の館に辿り着くと、そこで、コウジン・メレが出迎えてくれました。
「よく参られた。ここで、存分に見聞を深めてほしい」
「はい、よろしくお願いいたします」
 散楽の翁に引きあわされた大神御嶽と天城紗理華が、深く頭を下げました。
「それでは、宿舎に御案内いたします」
 リクゴウ・カリオペが、大神御嶽たちを館の奥へと案内していきました。
「それで、封印はどうなっていましたか?」
 散楽の翁が訊ねました。
「コウジン・メレ様の封印されていた祠は完全に破壊され、新たに作り直されておりました。現在は、なんの力もないただの祠です」
 パラミタ内海沿岸の洞窟奥にある祠を調べてきたテンコ・タレイアが報告しました。うむと、散楽の翁が、うなずきます。
「客寄せパンダ像の封印されていた祠は、完全に封印が風化し、現在は朽ちて何も残ってはおりません」
 浮遊島の廃村を調べてきたタイオン・ムネメが報告します。
「鷽の島は、完全に所在が分からなくなっております。おそらくは、気流の変わった彷徨える島と同じ流れに乗ったものかと」
 今度は、ヴィマーナに乗って雲海を調べに行っていたタイモ・クレイオが報告しました。
「ストゥ伯爵の行方は、未だつかめてはおりません。ただ、静かにどこかに身を潜めているものと思われます」
「それに関しては、まだ注意を怠らぬ方がよかろうな」
 テンク・ウラニアの報告に関しては、散楽の翁が指示を継続させました。
「アルディミアク・ミトゥナとアラザルク・ミトゥナに関しては、地球へと赴いたようです」
「もう、あれらは、自由にしてもよかろう」
 アマオト・アオイの言葉に、散楽の翁が判断します。監視していたと言うよりは、以降のメンテナンスが二人に必要かどうかについての判断のようです。
「それで、これからどうするおつもりですか?」
 アマオト・アオイが、散楽の翁に訊ねました。
「さすがに、そろそろ、次代の散楽の翁を育ててもよいころだと思うのだが?」
 逆に、散楽の翁が聞き返します。
「それがあの者たちですか?」
「さあ、それは、あの者たち次第」
 期待するように、散楽の翁が言いました。